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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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炎帝の実力

相変わらずアクションシーンを文字で表現する事は難しいです。


伝わっていればいいのですが……。

「ほぉ……レオンの奴そう来たか」


ケヴィンは口端を上げ、ニヤリと笑う。


デュランのみならず、レオンすらオールガイアランキングトップの実力を持っている人物であると言う事実。


その上、彼はあの槍聖を超えたと言われている紅蓮の翼。


ランキングだけで言えば、先日見たデュラン……つまり剣聖よりも強いとされるのだ。


今最も興味が沸いている相手であるのは間違いない。


彼が如何にこの事件を解決するか、どれ程の実力を持っているのか、ゆっくり眺めさせて貰おう。


ケヴィンはそう思考すると隠蔽魔法の類をキープしながら、風魔法を操り自分の身体を浮かせ、レオンの……もとい炎帝の後を上空から追いかけた。


炎帝は船の先頭に続く通路の横壁に身を隠し、死角から覗き込む様に状況を伺っている。


人の配置によって、どの順番で倒して行くかを決めているのだろう。


俺なら全員氷漬けにするが、さて……奴は一体どうする?


と笑みを止めずにケヴィンは状況を見つめる。


すると、炎帝の身体が一瞬にして発光し、瞬きしてしまえば確実に見失ってしまう程の速度でその場から消える。


『転移魔法』を発動したのだ。


炎帝の異能力は『自然魔法』……人間の身体を持っているにも関わらず、二つ目の核であるエルフのマナの核が体内に存在している。


だからこそ彼は自然魔法を扱えるのだ。


ケヴィンが度々彼に感じていた不思議な匂いの原因が、それである。


人間に感じる筈のない『自然魔法の匂い』……それが度々レオンから発せられていた。


その中で最も強く嗅覚を刺激したのが……『炎の匂い』。


炎帝の位に就く程の人物なら、確かにそう言った匂いがしてもおかしくは無い。


関係無いが先日のケヴィン宅の清掃時、雑草を積み上げたのも魔法の力だったのだろう。


企業秘密とはそう言う事だ。


全て納得が言った。


彼に感じていた数々の疑問点がこれで解決したのだ。


ケヴィンは甲板へ視線を戻す。


炎帝の転移先は分かっている。


ケヴィンは視線をゲノムへと向けた。


彼の目の前に突然と炎帝が現れ、その光景に少しばかり驚いたであろうゲノムは肩が跳ね上がる。


「どわっ!! な、なんだおめぇは!!?」


炎帝はその問いに答えず、無言で彼の腹部を蹴り付けた。


途端にゲノムは浮き上がると共に弾き飛ばされ、後方の壁に強く激突し壁に人型の凹みを作り出す。


「がっ!!」


痛みに悲鳴を上げるゲノム、地面に倒れ込む様に跪き腹部を押さえる。


脂汗を流しながら頭部を地面に擦り付け、必死に痛みに堪えている様子が見える。


ケヴィンから見える生徒一同は、突然目の前に現れた黒ローブの男に目を白黒させている。


一瞬にして起こった状況変化に混乱し、それが徐々に薄れて行った時、一人の生徒が声を上げる。


「あの紋章は……炎帝様……?」


「そ……そうだ間違いない! 炎帝様だ! 炎帝様が助けに来て下さったぞ!!」


それを口火に、生徒達の表情は一変し皆希望に満ちた表情になる。


稀代の英雄が目の前に現れたのだ、恐怖等殆どの者が吹き飛び、歓喜に騒ぐだろう。


それがオールガイアでの常識なのだ。


絶対的強者で有る英雄は、例えどんなに絶望的な状況でも必ず自分達の命を救ってくれる。


彼らにとってはそれが当たり前なのだ。


他人を見下す事しか考えない古い考えを持つ貴族ですら、英雄には尊敬の眼差しを向ける。


これはもう一種の洗脳に近い物である。


「な……にぃ? 炎帝……だとぉ?」


苦しそうに言葉を連ねるゲノム。


その表情は痛みに悶えると言うより、悔しさを描く苦い表情だ。


成功すると思っていたのだろう。


生徒達に手を掛けていない所を見ると、もしかすれば彼らを人質にし親御へ金銭を要求する算段でも付けていたのかも知れない。


どちらにせよ、彼は乗り込んだ船が悪かった。


ここに炎帝が乗り合わせていた事自体が、彼の運の尽きなのだ。


「お、おめぇら何してやがる!! さっさとあいつを叩き潰せぇ!」


狼狽える団員に命令を繰り出すが、一同は炎帝と言う存在に怖じ気付いているのだろう、誰一人刃を向けようとしない。


その状況に歯痒そうな表情を見せるゲノム、しかし次の言動が一歩も動かなかった彼らを強引に戦闘態勢へと移行させる口火となった。


「分かってんのかおめぇら!! ここで捕まったら俺達は終りだぁ! もう美味い飯にも酒にも、女にも有り付けねぇ!! 一生冷たい牢獄で暮らす事になるんだぞ!!?」


事実である。


A級まで辿り着いてしまった賞金首は捕まったが最後、公開処刑は免れない。


その人物に手を貸した者も重罪であり、極刑とまでは行かないが相応の処置を与えられる。


永遠の牢獄暮らしは覚悟しておかなければならない状況である。


やはりそれだけは避けたいのだろう。


未だ恐怖の表情を見せながらも、団員達は皆己の武具を手に取る。


見渡せば、団員たちは皆人間で構成されている。


つまりその場全員が近接戦闘を得意とし、後方支援は無いと考えられる。


「う……うぉおおおおお!!」


一人の男が恐怖をかき消す様に叫びながら、炎帝へと駆け出す。


腰に付けた曲刀を手にし、大きく振りかぶる。


そしてまっすぐに振り下ろされた筈のそれは、炎帝に一切触れる事無く地面へと突き立てられる。


一同には恐らく、炎帝が切り裂かれた様に見えた事だろう。


しかし実際には途轍もない速さで、最小限の動きで男の曲刀を避けただけなのだ。


「へ……?」


間抜け面を見せながら炎帝を見上げた男。


その顔面を炎帝は蹴り上げ、宙に浮いた男の身体を両手で押し出す様に強打した。


数人の男達が、炎帝の掌打によって吹き飛んだ仲間を掴む。


三人がかりで受け止めたにも関わらず、その威力によって身体がズルズルと後ろへ下がる。


やっとの事で勢いを殺し、炎帝の方へ視線を向けた彼らだがその視線の先には既に炎帝が接近しており、真ん中の一人が顔面にとび蹴りを喰らう。


空中に滞在したまま炎帝は体を半回転させ、一人の男の肩に上方から蹴りをめり込ませる。


その足を軸に反対側に飛び跳ねながら回転し、もう一人の男に蹴りを喰らわせる。


倒れ込んだ三人を後にし、正面に迫る二人に向かって前進する。


瞬時に右前方の男の腹部を蹴り、そのまま逆の脚で左前方の男の胸部を蹴り飛ばすと、体を空中で横に倒す。


二人の頭部をそれぞれ両手と両足で掴み、体を回転させる事で二人を横方向に投げ飛ばす。


着地した炎帝の後ろへ隙を攻めようと試みる三人が迫る。


炎帝はそちらを見向きもせず三つの火球を展開。


目にも止まらぬ速さで放たれたその魔法は、彼らへ着弾した瞬間爆風を起こす。


耐えられず後方へと吹き飛んだ男達は、ただのそれだけで気絶へと追いやられた。


炎帝は再び生徒一同の前へ陣取る様に元の位置へ戻ると、そのままゆっくりと辺りを見回した。


瞬時に過半数を戦闘不能にされたゲノム海賊団。


その異常な戦闘力を見せられ、我武者羅に攻め込もうとした団員達は、再び意気消沈してしまう。


圧倒的な実力差。


それを覆せる程の何かを、ゲノム海賊団が持っている筈は無かった。


炎帝を強引にでもやり過ごし生徒達を人質に取れば、どうにかなったのかもしれない。


ゲノム海賊団の構成員にエルフが居れば、後方の生徒へ魔法を発動すると言う展開へ持ち込めたかもしれない。


しかし、例え英雄では無い一般人でも本物の実力を持つ者ならばきっと分かる筈である。


炎帝が立つその場所。


脇道を抜ければすぐにでも生徒達へと辿り付けそうな錯覚へ陥る者もいるだろう。


だが、既に彼らは炎帝の実力を目の当たりにしてしまった。


それから導き出される答えは只一つ……。


あの隙だらけの位置でさえ、炎帝はきっと生徒を守る事が出来るだろう。


その空間全てが……炎帝の間合いなのだろうと言う事だ。


少なくとも、ただただ状況を楽しんでいるケヴィンにはそう見えている。

ケヴィンさんは手伝わないんですかね?

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