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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ケヴィンの心境の変化

次でお話が進みます!


少々お待ちください!

「おう兄ちゃん、腐ってた木造製品は全部取り替えたぜ!」


「あぁ、助かる」


「ご主人、地下の天井の修繕も終わりました、もうそうそう簡単な事で削れたりしませんよ」


「感謝だ」


翌日の休日の日、ケヴィンは早速材木屋と装飾屋に家宅の修繕を依頼していた。


急な依頼であったにも関わらずそれぞれの店は依頼主がケヴィンである事を知ると、早急に対応をしてくれた。


しかも店主直々に馳せ参じると言う大盤振る舞いである。


装飾屋の店主に至っては、鉱物の加工や販売も担っている事から今回の修繕の様に出張サービスを行う事もあるらしい。


確かな技術者のお蔭で、瞬く間に槍聖宅はかつて幼い頃に見た新築同様の輝きを取り戻していく。


業者が出入りする中ケヴィンは正門付近から自宅を見上げていると、後方から何やら機械音が鳴り響いてきた。


軽い砂煙を上げながら、槍聖宅の正門前に止まった大きな荷車。


本来なら馬が引く筈のその荷車には、馬どころか御者すら見当たらない。


ガラス細工の窓から荷車の中を覗けば、円状のハンドルらしきものを握っているデュランの姿が見えた。


これこそが自動車の原理を魔法で再現し、魔道具化させる事に成功した移動用魔道具、『魔動車』。


ガソリンでは無く運転手の『魔力』によって動くシステムを作り出した事によって、ガソリンを燃焼させる事で起こる有害物質の発生を回避する事に成功した、自然に優しい移動用魔道具である。


自動車よりも遥かに早く、更に駆動部に設けられたスプリングやアブソーバによって荒野でも自由自在に走り回る事が出来ると言う。


当たり前にその価値は莫大な物な上、転移魔法陣が世界中に設置されている世の中で、それを手中に収め様とする者はよっぽどの娯楽者か物好きに限られる。


上級冒険者や貴族しか手に入れられる物では無い為に、見た目以上に高価で希少価値の有る物だが、デュランは企業秘密と言いつつ悠然と魔動車を自分の物と証明するかの様に『大袋』から取り出したのである。


大袋の中に詰め込められる物の体積は、持ち主の魔力に比例すると言うのは常識である。


デュランの使用している魔動車は一人乗りや二人乗り用の小さ目な物では無く、乗用車と呼ばれる4~5人無理なく乗れる大型車だ。


それ程の規模を大袋に込めよう物なら、既に『学生レベル』の範疇をとっくに超えている。


その事に関してケヴィンは彼に突っ込んだのだが、取り出したのを目にしたのはケヴィンだけで有り、それをケヴィンが出した事にすればなんの問題も無いと意味の分からない理屈を告げられたので黙って受け止める事にした。


デュランが魔動車を取り出した理由は家具の購入が目的だ。


殆どの家具がダメになっていた槍聖宅の家具を一新する為、デュランがそれらの買い出しをケヴィンから頼まれていたのだ。


車の天井を開く事によって、大きな家具も詰め込める仕組みとなっているその魔動車に、家具を詰め込めるだけ詰め込んで持ってきたデュラン。


それに対し、それこそ大袋に商品を入れて持ち運んだ方が圧倒的に早いのでは無いかと言う意見を入れたのだが、これも風情だとまたもや良くわからない理屈を伝えられた。


実際魔動車の助手席にアドレットが楽しそうに乗っていたのを目にしたので、それはそれで良かったのかも知れないとケヴィンは思った。


ケヴィンは魔動車に積まれた家具を業者に頼んで室内に運び込んで貰い、配置を指示しながらも着々と出来上がって行く自宅をまんざらでも無い表情で見渡している。


「なぁケヴィン」


不意に、大がかりな改装工事をその力自慢で手伝っていたレオンが声を掛けてくる。


首だけを回してそちらを振り向く。


「折角新居が出来上がったんだしさ、パーティでも開かないか?」


「パーティ?」


ケヴィンにとってのパーティとは、王族貴族が社交辞令として行う堅苦しい形式にそって行われる食事会の事が思い浮かぶ。


若い男女が会場の真ん中で下手くそな踊りを見せびらかすあれ。


彼にとっては全く持って何の面白味も感じられない。


「そう! パーティだよパーティ! こんなでっかい地下が有るんだったら、1000人近い同級生達だって余裕で入るだろうしさ! どうせならその子ら皆呼んで美味い食い物や飲み物、後食い物と食い物用意して騒ごうよ! 絶対楽しいよ!!」


どんだけ食い物を重視してんだと突っ込みながらも、やはり彼の言う言葉に面白味を感じられないケヴィンは否定の言葉を返す。


「却下だな。パーティなんてつまらん面倒事は開くだけ無駄だ。それに俺が主催って分かれば同級生全員所か、クラスメイトですら集まらないだろう」


「そんな事ないと思うよ~」


と話に割って入って来たのはアドレットである。


「ケヴィンちゃんさぁ、自分の種族の事気にし過ぎじゃない? 確かに未だに差別が抜けきって無いのは認めるけど、もうあたし達の世代では結構気にしている人の方が少ないんだよ?」


アドレットの言う事は一理ある。


一部の貴族は未だに差別的な行動を取り、先日の様にフロールへやたらとちょっかいを掛ける人物は確かにいる。


しかしその一部以外の者達、特にあの『エドワード』を崇拝する貴族達は、彼自身が差別を否定的に捉えている影響か、ケヴィンを目にしても完全にただの同級生として扱っている節は確かに有る。


「それにね、ケヴィンちゃんって結構人気有るんだよ?」


「初耳だな」


これは正直な感想である。


人気と言う言葉が似合うのは、ここに居るレオンの様に常に周りに誰かが居る人物の事を言うのだろう。


そう言う意味ではエドワードも人気者と言える。


「あたしみたいに外見がちょー好き! って生徒も居れば、ケヴィンちゃんの人間性に関心している人達も結構居るんだよ? あ、あたしは中身も大好きだからね?」


告白紛いのアドレットの発言を半分無視し、彼女の言葉の意味を少し考える。


「……自分がここ最近何をして来たか……他の生徒達の目にはどう映っているのか考えてみれば分かるだろう」


役割を終えたデュラン自身も、その場に姿を見せケヴィンへと声を掛ける。


自分が今までして来た事をケヴィンは思い出す。


ミリアルドを一方的に痛め付け、学園で罵倒し、レオンをクラスメイトの前で叩きのめして、貴族を半殺し状態に仕立て上げた。


「成る程、俺に恐怖心を抱いていると言う事だな」


「……どうしてそうなる」


デュランは額に手を添えて言葉を呟いた。


微妙な変化では有ったが、デュランが呆れた表情をしたのが少し分かった。


「簡単だよぉ、ミリアルド相手に物怖じしない勇気とその正義感、貴族相手に女性生徒を守り抜いて、レオンちゃん相手に腕前を見せつけた。特にミリアルドやその他横暴だった貴族は、ケヴィンちゃんが学園に来てからすっごい大人しく成ってるって聞いてるよ? それだけでも他の生徒からしたら尊敬の目で見られても可笑しくないよ」


「それにさ、俺は良くわかんないけど混血種って種族柄あまり強く成れないって言われてるだろ? それでも才能なんか関係無しに、努力で俺達Aクラスのトップの実力持ってるんだから、それだけでも俺はケヴィンすっげぇ! って思うぞ?」


こいつから言われれば説得力が有る。


レオンの発言に素直にそう思うケヴィン。


単純な事だが、レオンの発言はケヴィンの強さを『才能』では無く『努力』で手に入れた物だと断言している。


その事実に少し嬉しい思いを感じる自分がそこに居た。


「やろうよパーティ! 型っ苦しいの抜きにして、楽しいパーティにしよう!!」


レオンが満面の笑みで提案を押してくる。


「……少なくとも、ここに居るメンバーなら何も言わずとも集まるだろう」


「声を掛けてダメだったらダメでぇ、来てくれる人達だけで盛り上がれば良いじゃん! 友達ってそんなもんじゃないかなぁ?」


「……友達……か」


ケヴィンにはその言葉の意味がイマイチ理解出来て居ない。


友達と言う存在がどう言う物か分からない。


今までそう言った存在が居た事が無かったからだ。


唯一そう言える人物は槍聖だけ。


では何故槍聖の事を『友人』と呼べると思えるのか。


信頼しているから?


信頼とは何だろう、心置きなく接していられる事を言うのだろうか。


ふとケヴィンは周りを見渡す。


あれだけ……十数年間にも及ぶ期間を、限りなく人と接する事を避けて生きて来た人生なのに、気づけばどうだ?


数人の『友人』と呼べる存在が出来ているのでは無いか?


剣聖として共に戦ったデュラン。


剣を交えたレオン。


何故か一方的に愛を語ってくるアドレット。


それだけじゃない、マリアだってメイファだって……名前は知らないが、懇意にさせて貰っている材木屋の店主や装飾屋の店員ですら、知人以上の関係と言えるのではないだろうか。


アルベルトも……それこそ、エドワードでさえも。


名を名乗り、言葉を交わし、お互いの存在を認識し、その人物と接する事が『苦』では無いと感じたら、それは友人と呼んでも良いのでは無いだろうか。


まだその答えは分からない。


だが、確かにケヴィンの中で彼の心境が大きく変化して行っているのも……また事実なのだった。


「考えては見る、無理だったら諦めろよ」


「あぁ! それで良い! 無理なんて事絶対無いけどな!」


「やったぁ!!」


笑顔で喜ぶレオンとアドレットに、いつもと変わらないが何故だか明るい表情に見えるデュランを見つめながら、面倒臭い……だけど悪くは無い、と思うケヴィンであった。



――――……。

日常編もお楽しみいただけます様、精進してまいります。

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