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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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どうやら正体がバレた様である

剣聖の本名を叫んでしまいましたからね。

しかし、実の所彼は言う程剣聖の安否を心配してはいなかった。


爆風に巻き込まれる直前に感じた彼の魔力の高まりと、寸前に振るわれた彼の大剣。


ケヴィンの思い過ごしで無ければ、恐らく彼はあの時『魔封斬』を発動した筈だ。


自爆魔法と言えど、所詮は魔力の関わる魔法である。


『異能力』ですら切り裂いてしまう剣聖の魔封斬ならば、きっとその自爆魔法さえ『自分に降り注ぐ範囲』を切り裂いただろう。


自爆魔法自体を切り裂く事は出来なかったとしても、己へ向かう爆風くらいなら斬れた筈だ。


それを証明する様に、一部の地層がおかしな角度で綺麗に残っているのと、あからさまに大きく溢れている身体強化魔法の魔力が周囲から感じられる。


ケヴィンは後方へと振り向き、一言呟く。


「帰るか」


「……流石にそれは酷いんじゃないのか……?」


声色の変わらない淡々とした音程で、剣聖が姿を見せる。


土埃に見舞われながらも、積み重なった岩石を押しのけながら地面から這い出てくる剣聖。


「何だ、起きてたのかよ」


「……逆に寝ていたのなら起こすべきだろう……」


「良いじゃねぇか、生きてたんだから」


「正直……お前の言葉が無ければ危なかったがな……『ケヴィン』」


フードの奥で顔を顰めるケヴィン。


その表情が意味する事は、「やっちまった」と言う物である。


突然の事に慌てて剣聖の本名を、これまた『地声』で発してしまったケヴィン。


幾ら爆音が鳴り響いていようと、あのデュランがその言葉を聞き逃す筈は無い。


間違いなく剣聖……もといデュランは、Kがケヴィンで有る事を確信しているのだろう。


それを証明する様に、彼は素性を隠す為のその黒いローブのフードを肩に降ろした。


軽く頬が汚れているが、その端正な男らしさは数時間前に出会ったばかりのクラスメイトで間違い無い。


ケヴィンは観念した様に己もフードを脱ぎ、その顔をデュランへと向けた。


「……まさか蒼氷の朱雀がお前だったとはな」


「混血種がこんな力持ってるとは思わなかったってか?」


「……そうでは無い、お前の強さは既に『レオン』との模擬戦で証明されている。……俺の様な存在からこんな事を言っても慰めには成らないかも知れないが……俺は混血種に特別な劣悪を感じた事は一切ない」


「だろうな、お前はそう言う奴だ」


恐らく、レオンもな……と呟くケヴィン。


彼らの自分に対する対応は、混血種だからと言う態度の改めが一切感じられない。


誰にでも同じ様に、特にレオンは一人の友人の様に接してくれている節がみられる。


種族がら、他人の自分に対する態度に敏感なケヴィンだが、だからこそ彼らが自分には全く特別な感情で接していない事が分かるのだ。


「お前らが特別な存在なんだろうと言う事は分かっちゃいたが、まさかこの世界で最高峰の実力者とは少し驚いたな。レオンや……エマの奴も似た様な存在なんだろ?」


『エマ』と言う名を発言する際に、少しだけ表情を歪めたケヴィン。


先日の遭遇時でのやり取りが、彼女に対してあまり良い印象を見いだせなかった事が影響しているのだろう。


知ってか知らずか、デュランはそれを聞いて言葉を連ねる。


「……俺の口からあいつらの事を語る事は出来ない。だが……これは完全な我儘だが、もしお前があいつらの正体に気づいても……それを他言する事は避けて欲しい」


「お前の正体と引換にってか?」


「……それでも構わない」


相変わらず感情の読めないデュランの表情である為に、ケヴィンは彼の真意が掴めないでいる。


「そんなに心配しねぇでも、俺個人がお前らの正体に多少なりとも興味があるだけで、それを知った所で他人と情報共有なんざするつもりはねぇよ。何より面倒くせぇ」


事実、ケヴィンは現状デュランの正体を知ったのだが、それを他言するつもりは一切なかった。


Xランカーの素性をそう簡単に語るべきでは無いと言う共通認識はオールガイア規模で確かに存在するが、そんな暗黙の了解等ケヴィンには関係ない。


だがそれでも彼は自分にとって何の利益も無い行動を取るつもりは無い。


彼が興味有るのは今後デュランが自分との手合せで、その『剣聖』としての力を惜しみなく使ってくれるかどうかと言う点のみである。


「……そうか、なら俺もお前の事について語る事は無い。……俺も元から無かったと言った方が正しいか」


「そこは好きにしろ」


何れバレる事だろうしな、とケヴィンは付け加えるが、デュランはそれでも首を振った。


「お前の実力はこの世界にとって重要な物だ……そう簡単に公開していい物では無い」


「俺にとってそんなちんけな蟠りなんて興味ねぇ事だがな」


自分の正体など、公開されようがされまいがどちらでも良い。


公開された所で何も大人しく過ごす必要等ない上に、誰も自分を束縛する事等出来ないだろうからだ。


強いて言うのであれば、有名に成る事によって巻き起こるしがらみ等が面倒くさいと言う点は確かにあった。


ケヴィンは今、そんな事よりももっと興味をそそる物が目の前にある。


まだそれ程迄長く生きては無いが、この十数年オールガイア中を飛び回り全ての魔物を見たつもりでいたケヴィンが、ただの一度も見た事の無かった今回の魔物。


「……キングドラゴン、って言ったか?」


跡形も無く吹き飛んだ大地に視線を送りながらケヴィンは呟く。


その視線で何を質問しているのか気づいたのか、デュランが口を開いた。


「……あぁ、キングドラゴン。俺の世界で見た古い文献に載っていた生物が……先のドラゴンと同じ見た目をした姿で絵が描かれていた……。龍種の中でも他を寄せ付けぬ程の力を持つ龍……別名王龍。龍の中の龍だと言われている」


「今まで見た事あったか?」


「いや……此方の世界で見た魔物全書では……この生物の名は刻まれていなかった」


ケヴィンと同じく、デュランですら先の魔物を見た事が無いと言う。


つまりはキングドラゴンと言う存在は、完全な『新種』と言う扱いになる。


今までどこに生息してのか、何故この場に突然現れたのか、謎ばかりが増える。


このキングドラゴンも、件の魔物の異常行動と何か関係あるのだろうか。


実際の所、ケヴィンの興味はもっと別の所にある。


この様な魔物が、まだ数多く存在しているのか……と言う事だ。


「そのキングドラゴンに、魔物としての位を付けるとしたらどこに位置する事になる?」


「……間違いなく上級だろう……だが、王龍をただ上級として扱ってしまえば、上級の振り幅が途轍もなく広くなってしまうな……」


「そうだな、今現在の常識で考えられている上級の範囲では収まらない程の強さをこいつは所持していやがった。下手したら英雄の中でも勝てねぇ奴らが出てくるんじゃねぇか?」


「……その可能性は大いにある……」


偶然にも世界最高峰の力を持つ二人がこの場に居合わせたから良かった物の、これが他の英雄であれば結果は大きく変わっていたかもしれない。


ケヴィンの認識する『堕落した英雄』の内の誰かならば、恐らくこのキングドラゴンには勝てなかっただろうと予想する。


ケヴィン自身としては、これ程手応えの有る魔物と遭遇したのは久方振りな為に、他にも居て欲しいと思うぐらいなのだが。


これ程の魔物がまだ数え切れない程生息しているとなると、オールガイアの情勢は再び人類側劣勢へと傾くだろう。


「……もう少し話していたいのだが……すまないがあまり時間が無いようだ」


「あぁ、お前はそう言う『立場』だもんな。今となっては俺もだが」


ギルドメンバーには新種モンスターを発見した場合、ただちにギルドへ報告する義務がある。


デュランは剣聖としての立場も有る為に、この事実を早急にギルドへ持って帰らなければ成らず、ここで長話をしている暇はあまりなかった。


新種の魔物が討伐可能ならば、その遺体を持ち帰る事が推奨される。


しかし……二人はそれが不可能で有る事を分かっている様に、静かにキングドラゴンの遺体『だった』物へと視線を向けていた。


「綺麗さっぱりと消え去っちまったな」


ポツリとケヴィンは呟く。


「……あぁ」


デュランはその言葉に頷きを見せた。


先の自爆魔法によって、キングドラゴンはあれ程の巨体を木端微塵に吹き飛ばしてしまった。


ご丁寧に剣聖の切断した腕や翼も纏めてだ。


その為に遺体確保はとても出来そうに無かったのだ。


「……仕方ない……目撃情報だけでも伝えておこう、少なくとも剣聖としての発言なら……無視される事は無いだろう」


確かに証拠は無いが、彼ほどの立場と実力ならばギルドも確かに一方的に虚言とは決めつける事は無い。


しかしその発言力をもっと確かな物にする為に、ケヴィンは証拠と成りえるだろう『物』に目を付けていた。


不意に左手を翳すケヴィン、その方向はキングドラゴンが存在して『居た』場所だ。


クレーターの中央と言っても良い。


彼が手を翳した方向の地面の一部が、突然と盛り上がる。


地面から何か湧き出る様に出現したそれは、バスケットボール程の大きな光り輝く石であった。


「こいつが有ればそれなりの証明には成るだろ」


その石を手の平に乗せ、人差し指の先で軽く回転させる様に球遊びをするケヴィン。


投げ渡す様にデュランへとそれを放り投げる。


片手でそれを受け取るデュランだが、手に持ったと同時に口を開く。


「……悪いがこれは受け取れない、『討伐報酬』は討伐者へ与えられる物だ……」


「十分お前も討伐者だろ」


「……そうは思えない。今回の俺の戦い方は……かなりの補助過多だったからな」


腕を伸ばし、石を返そうとするデュラン。


しかしケヴィンは受け取る素振りを見せない。


「前衛で戦ってたのはお前で、止めを刺したのもお前だ。それに俺はお前の実力なら奴を単体で討伐出来ると踏んだんだが……過大評価だったか?」


少しだけ笑みを見せて発言するケヴィン、恩を着せようとしている訳では無い、真に彼の実力を認めての発言だ。


「……」


それに対してデュランの返答は無い、ケヴィンの行動は単純にデュランに『楽』をさせただけであり、実際の所デュラン一人での討伐は可能だったと確信している。

最後までお読みいただきありがとうございます。


誤字脱字等有りましたら報告いただければ助かります。


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