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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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剣聖の実力

巨大生物との戦い描写もやはり難しいですね。

ケヴィンと剣聖は、当たり前に打ち合わせをして行動している訳では無い。


クレイウォールの展開等の様に物理攻撃の行使を補助する様に魔法展開しているのは、ケヴィンが普段から巨大生物相手に行っている戦闘方法の一つであるからだ。


その都度万全な状態から剣戟を放てるように工夫し編み出した戦い方である事から、前衛特化の剣聖ならば確実に同じ状態を作り上げれば、同じ様に戦えるだろうと思い彼の周囲に魔法を展開した。


予想通りそれらに対して全て満足のいく反応を見せた剣聖に、ケヴィンは口元を軽く緩ませる。


戦況を組み立てられる技術、状況判断能力、何よりケヴィンの魔法一つ一つに合図無しで反応仕切る反射神経、そしてそれらを実行可能にする身体能力。


やはりこいつとも戦いたい……と言う思いが止められないのだ。


ケヴィンは見た事も無い目の前の巨大生物よりも、剣聖であるデュラン・メギストンに興味をそそられていた。


大地の揺れ等気にも留めないケヴィンは、倒れ込んだキングドラゴンの翼の付け根目掛け、クリムゾンノヴァを発動する。


一瞬にして超高温度に達したその炎魔法に、キングドラゴンはたまらず悲鳴を上げる。


瞬時に魔力を雲散させ、魔力で作り上げた全ての炎を消し去るケヴィン。


全てを魔力で作り上げた魔法だからこそ、魔力操作によって二次災害を起こす事無く消しさる事が出来る。


熱された鱗は僅かながらに強度が落ちただろう。


その翼の根本に、上空から剣聖が大剣を突き立てる。


今まで剣聖の斬撃を全て弾いていたキングドラゴンの鱗は、その一撃を貫通させる事を許してしまう。


翼龍の象徴と成る巨大な翼、その片翼は……剣聖によって本体から切り落とされた。


それだけで周囲に砂埃を発生させる程の質量を持つそれ。


巨体を持ち上げる為に必要な大きさで有り、片方失おう物ならこのキングドラゴンは生涯二度と……空を飛びまわる事は出来ないだろう。


どちらにせよ、生き残る事すら難しいと思われるのだが。


ケヴィンが懸念していた上空への退避。


ただそれは対応が『面倒臭い』と言う理由が多分に有るだけで、『厄介』と言う意味合いは極端に少ない。


剣聖の実力ならば、雲を突き抜ける程の跳躍力を発揮する事も出来るだろう。


ケヴィン自身魔法を上空に展開すれば良いだけなのだが、単純に戦い方の幅が狭まりほんの少しだけ討伐に時間が掛かると言う事実が『面倒』と思っただけなのである。


片翼を失ったキングドラゴンは、その異常事態に反応したのか瞬時に体を跳ね起こす。


巨体が急速に起き上った事によって、辺りに突風が巻き起こる。


剣聖はその場から飛び上がり、再びキングドラゴンの上空へと舞う。


次に剣聖が狙ったのは肩……実際には腕の付け根であろう。


いくら頑丈な装甲を誇るその鱗でも、四肢の付け根や関節はどんな生物も必ず強度が落ちる。


でなければ自由に折り曲げ等が出来ないからだ。


それを証明する様に、剣聖が振るった一撃で鱗の破片が一部飛び散る。


キングドラゴンの肩に、完全に足の着いた状態と成った剣聖の連撃が、キングドラゴンに襲い掛かる。


痛みにもがく様にキングドラゴンは足掻こうとしているが、その行動の殆どをケヴィンは魔法に寄って静止する。


ブレスを吐こうとすれば開けた口に自然魔法を打ち込み、腕で剣聖を振り払おうとすればロックウォールを展開する。


身体を揺さぶった所で、剣聖の体勢は簡単には崩れる事は無いだろう。


「はぁぁぁぁあああ!!」


剣聖の雄叫びと共に振るわれた渾身の一撃で、キングドラゴンの左腕は付け根から切り落とされる。


刃さえ通るのであれば、剣聖の斬撃に耐えうる生物は居ない事が証明された瞬間だ。


「剣聖、避けろ」


立て続けに援護をしていたケヴィンだが、剣聖自身の力でキングドラゴンの討伐は可能だとはっきりと理解した所で、この戦いを終わらせる為の行動を起こす。


作り上げた濃厚な魔力を、敢えて剣聖に察知させる事でその魔法の大きさをアピールするケヴィン。


彼の思惑通り、剣聖はケヴィンをチラりとも見ずに大きく上空へと飛び上がる。


完全に魔法の範囲外まで剣聖が飛び上がった事を確認すると、ケヴィンは溜め込んだ魔力を放出させる。


「ダイヤモンドダスト」


その声量は淡々とし、よもやその気怠そうな口調からそれ程の威力を持つ魔法が繰り出されるとは誰も思わないだろう。


しかし、事実キングドラゴンの巨体はその体の全ての表面を氷漬けにした。


本来ダイヤモンドダストは大量の粉雪を対象にぶつけ続ける事で、心身ともに氷漬けにすると言う作用のある魔法なのだが、ケヴィンのそれは氷山を作り出すと言う結果だけが反映されている様に見える程超速で氷漬けにしている。


だがそれだけではキングドラゴンは絶命しない、このまま暫く放置すれば数日後には絶命するだろうが、ここは確実に討伐する手段を取る。


「クリムゾンノヴァ」


超低温の魔法に続いて、ケヴィンが繰り出したのは超高温の炎魔法。


身動きが取れず、直撃せざるを得ないキングドラゴンにそれが接触した瞬間。


辺りには金属が破壊された様な音が鳴り響く。


超低温の物体が高温度に接触した事によって起こる高温割れが起こったのである。


クリムゾンノヴァの影響を受けたキングドラゴンの前面部は、殆どの鱗が剥げ落ちその柔らかい皮下細胞をむき出しにしていた。


分かっていたのか知らず知らずの内か、上空に飛び上がって居た剣聖はその落下速度を利用し、キングドラゴンの頭上から下腹部までその大きな大剣を力強く振り下ろす。


大き過ぎるキングドラゴンの体躯によって、真っ二つと言う状況には成りえなかったが、それでも約半分に及ぶ範囲に斬撃を見舞う事に成功する。


結果、ゆっくりと、ただゆっくりとキングドラゴンはその巨体を横倒しにし、やがて轟音と共に地面へと倒れ込んだ。


その光景に、一瞬気を抜いたケヴィン。


剣聖も同じ心境だっただろう、彼の身体から身体強化の魔力が下がって行く事を感じる。


しかし、その瞬間ケヴィンは顔を顰める。


「剣聖!! 逃げろ!!」


慌てて叫ぶケヴィン。


その理由は、突然の魔力の高まり。


既に息絶えたと思われたキングドラゴンから、巨大な魔力の膨張を感じたのだ。


それが意味する事象をケヴィンは幾度となく経験した事がある。


そしてそれは、例え剣聖で有ろうと『直撃』してしまっては命の危機に関わる事は間違いない。


剣聖の身体がぶれた様に見えた。


しかしそれはあまりにも一瞬で、ケヴィンの視界から剣聖が消える様に彼は『爆発』に巻き込まれた。


「デュラン!!」


思わず彼の本名を叫んでしまうケヴィン。


魔力付与も忘れ、地声のまま発してしまった事に一ミリも後悔はしない。


彼の名前を呼びつつも、ケヴィンは己の前方に自然属性の全てを合わせた合成魔法でウォール魔法を発動させた。


それは物理、魔法の全てを遮断する『結界魔法』である。


行使した魔力を超える程の威力を受けない限り、その結界魔法を貫通する事は出来ない。


それを行使する程に、今目の前でキングドラゴンが繰り出した『最期の魔法』は、途轍もない威力を誇るのだ。


『自爆魔法』と言われる、己の魔力の核に含まれた魔力を全て解き放つ正真正銘最期の魔法なのだ。


己が絶命する事を悟れる程の知能を持った上級以上の魔物が、極稀に展開するこの自爆魔法。


ケヴィンは依然、まだ今程の経験が無い頃に初めてその魔法に遭遇した時、反射的にロックウォールを展開した。


察知した魔力に危機を覚え、出来るその一瞬に内に込めれるだけの魔力をロックウォールに込めたにも関わらず、それを貫通してケヴィンに重症を負わせる程の威力がそれにはあった。


実際、アトランティス王国の様な巨大な敷地を持つ都市でさえ、そのキングドラゴンが放った自爆魔法を町中で展開されれば、世界地図からアトランティス城下町が全て消える程の規模の爆発が、その場で巻き起こっていたのだ。


爆風の圧力が強すぎる影響で辺りの森林は吹き飛び、火が起こる事も無くただただ砂埃が辺りにまき散らされる。


結界魔法無しでは目も開けられない状況である一帯に、ケヴィンは風魔法を展開し砂埃を一転へと固める。


大きな土団子となったそれを地面へ乱暴に落とすと、開けた視界を見渡す。


己が結界を張って居た位置から後方はほぼ無傷な状態であったが、前方は広範囲に渡り地面が抉り取られていた。


つい先ほどまで平地だった筈の地層は、ケヴィンが断崖絶壁に立っている用にも見える程。


作り上げられた巨大なクレーターは、明らかに地図に書き足すべき程の範囲に広がり、土地の形を変えていた。


「……」


剣聖の安否を確認する。


爆風に巻き込まれた彼の姿がケヴィンが最後に目にした姿である。

デュランって呼んじゃいましたね……

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