Xランクの現状
最強の人物達にも、いざこざは有る様です。
「……現氷帝は、その堕落した英雄を絵に描いた様な人物……いわばそう言った存在達の代表の様な者だ」
成る程と、確かにそう言う存在なのであれば英雄達の中でトップに君臨させる訳にはいかないと言う気持ちも分かる。
「それならそれで……他に氷魔法の得意な英雄に頼む方が早いだろ。わざわざ一般人の俺を巻き込む話じゃねぇ」
「それが出来たのなら……お前を探し求めたり等しない」
「つまりそれが出来ない程には、現氷帝とやらはしっかりとした実力を持っていると言う事だろ。例え堕落していたとしても、その実力がそれに見合っているんなら文句の言い様がねぇ」
氷帝の情報について、ケヴィンも有る程度は把握している。
何故なら、その人物はXランカーの『初期メンバー』だからだ。
アルベルトと竜騎士によって設立されたXランカー。
その時既にアルベルトは相談役としてギルドメンバーを引退していた為に、実際にXランカー設立に立ち会ったギルドメンバーは竜騎士一人となる。
しかし竜騎士は英雄と言えど人間であり、エルフ側の英雄の情報には疎い部分が多少なりとも有った。
その為に彼が声を掛けたのが現氷帝なのだ。
氷帝は竜騎士よりも数年先に英雄として活躍していた人物であり、当時その実力はエルフの中でトップクラスと言われていた。
事実オールガイアランキングにおいて、当初一位であった竜騎士に次いで氷帝は二位の実力を持っていた。
その事実を加味し個人的に交流も有った二人で、Xランカーの選抜を行っていたと聞く。
そしてその当初から現代に至るまでの約15年間、氷帝は一度たりともその位を他の者に明け渡した事は無かった。
若手の英雄が多数現れている現代でも尚、その位置を守り続けている。
堕落した英雄と言えど、しっかり実力を保持し職務を全うしているのなら、それこそケヴィンにとっては文句を言う対象では無い。
ただ『ムカつく』と言うレベルで一応は我慢できると言った所だ。
「……確かに奴は……氷帝を名乗れる程の実力は持っていると言える。だが……それを踏まえても……とても奴の横暴は許せる物では無い」
「勿体ぶらずにその横暴とやらを聞かせろよ、話はそれからだろ?」
ケヴィンの言葉に剣聖は頷く。
「Xランカーはそれぞれが大きな権力を持つ……。それは各国の王に並ぶ程だ……実際に俺達に直接命令権を持っているのは、ギルドマスター以外にはそれぞれが所属している国の王達だけになるからな……」
ある意味で独立国家ともいえるその存在達は、余程の事が無い限り法で裁けない程の権力を持っていると言う事実。
過度では無いかと言う声も確かに有るが、実際に英雄が居なければ人類はとっくの昔に滅亡していると言われている為に、それ程の権力を与える価値は確かに有ると言う発言の方が圧倒的に多かった。
「……奴はその権力を多分に利用し、自国で自分にとって都合の悪い貴族が居れば没落させ……気に入った娘が居れば一家に犯罪者の汚名を着せてでも、犯罪奴隷に仕立て上げ自分の所有物にする……そう言った行為を繰り返している」
「国王はどうした? 自国の王に並ぶ権力を持っていると言えども、実際王からの命令は有耶無耶に出来ないだろ?」
「……敢えて国名は出さないが、あの国の王は氷帝に甘い蜜を吸わされ続け……完全に飼いならされてしまった」
「つまり……その国の王は実際の所氷帝自身と言っても過言ではない訳だな?」
下らねぇ、とケヴィンは呟く。
「……俺達は奴の行動に意見をする事は出来ない。所属国家が同じならまだしも……他国には意見が出来ない上に、Xランカー同士の争いも禁止とされている……」
「だろうな」
ある意味で、Xランカーはそれぞれ所属国の代表の様なものだ。
その人物達が争えば、結果的に国同士の戦争にまで発展する可能性がある。
人々が手を取り合って生きていかなければ成らないその世の中で、その事実はあまりにも愚かだとケヴィンは思う。
「Xランカーを纏める人物は居ねぇのかよ。それぞれが大きな権力を持った者達の集まりつっても組織は組織だ。リーダーは存在して然るべきだろ」
「表上には……ギルドマスターと言う立ち位置の存在が居る。俺達の行動の最終判断を担う存在ではあるが……実際に俺達に意見出来る発言力を持っていない。実力者ではあるのだが……ギルドマスターはただの一般人なんでな……」
使えねぇ。
とケヴィンは発言したくなるが、それを抑えて発言をする。
「だが流石にそれだけの悪行を積み重ねているなら、流石にXランカーから追放する事が出来るんじゃねぇのか?」
「……表だった証拠が掴めていないのが一番の問題だ……。その上Xランクを所持する者からその位を剥奪するにはその他のXランカー『全員』の支持、その他にはその人物を推薦した人物直々の判断が条件となっている……」
ケヴィンはその発言に舌打ちをする。
証拠云々に関しては国王絡みで擁護されている氷帝のそれを見つけるのは難しいと言えよう。
しかし後半に関しては、少なくともその氷帝の肩を持つ人物が一人は居ると言う裏付けに他ならない。
そして挙句の果てには竜騎士の居ない今、氷帝の位を直接取り上げられる人物が存在していない事実が証明されている。
なんとも面倒な規制を作った物だと、ケヴィンは竜騎士を軽く恨む。
「Xランカー法案を改案するには……それこそXランカーで過半数の同意、或いは世界各国の国王、長老達の同意を得る必要が有る。……それらについて、俺達新参者の英雄にはそれを促せる程の権力が無い」
剣聖は、ケヴィンの記憶が正しければ約二年前にXランカー入りをした人物だ。
確かにXランカー内では新参扱いであると言える。
「お前の意見に賛同している奴はいねぇのか?」
「……Xランカーは現在、二つの派閥に分れている……その中で、俺が所属する『刀聖派』は、そのメンバーの全員が若手で構成されている……」
「つまり、古株組は全員もう一つの派閥に席を置いているんだな?」
ゆっくりと頷く剣聖。
「……刀聖派でXランカーに所属して居る期間がもっとも長い人物が……刀聖と拳聖。その二人も未だ5年と言う期間しか経験していない。氷帝派は……その全てのメンバーが最低でも10年、その位を維持している者達だ」
「別にXランカー内の権力が年功序列順って訳でもねぇだろ?」
「あぁ……だが、何れそう成らざるを得ない状況になり得る」
「何故だ?」
「……氷帝派はXランカー会議で度々法案の改正を求めている節がある。Xランカー内にも序列を設け、権力の有り方を決めようとしている……」
「可笑しな話だな? だがその取り決めがいつまでも可決されないって事は、少なくともその刀聖派の人数もXランカー内に半数は居るんだろ?」
「……あぁ、Xランカーの半分。刀聖本人含め7名が刀聖派に所属している」
ケヴィンは首を傾げる。
「あ? そうなるとお前ら刀聖派が改正を宣言すれば、それこそ過半数になるんじゃねぇのか? 槍聖不在の今なら、七人は既に半数以上に成るだろ?」
「……その件に関しても、氷帝は槍聖の意思が判断出来ない以上、賛成の可能性も反対の可能性も有ると言い、それが確認出来るまでは可決には至らないと発言している……」
なんとも言い訳がましい発言だが、確かに一理は有るのだろう。
「だったら氷帝派の奴を一人テメェら側に付けたら良いだけの話じゃねぇのか?」
「……プライドの高い奴らばかりでな……俺達若手の意見等聞こうとしない奴らなんだ」
「なんだそりゃ」
英雄も人の子と言った所か。
よくそんな事でXランカーに入れた物だとケヴィンは思う。
竜騎士の見る目は腐っていたんじゃないかと思える程に。
若い芽を潰そうとする大人って居ますよね。




