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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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剣聖・滅殺の刃

タイトルで登場人物がバレるのは仕方ない事ですよね……

学園の授業が終わってから暫く、ケヴィンはメイファの言った通りギルド支部DOLLSへと赴いた。


彼女曰く今日にはもう査定員が見つかってる筈だと言う言葉を信じ、放課後直行でギルド支部DOLLSへと赴いたのである。


扉の上部に取り付けられたベルを鳴らしながら支部内へ入室を果たすと、ケヴィンを見るなりメイファの表情に緊張が走ったのが分かった。


カウンターへとケヴィンが座り込むと、何を慌てているのかメイファはコーヒーを出すのも忘れて身を乗り出してくる。


「Kさん!! ……大変な事になっちゃいました」


「端折らずに詳しく言え」


ただならぬ慌て様に確かに何か有ったのだろうとケヴィンは感じるが、その理由を知らなければどうしようも無い。


「私、昨日Kさんから言われた通り、直ぐにKさんの査定員の募集を募ったんです。予想通り……いえ、予想以上にそれに対して多数の方から反応が有り、選別に少しだけ難儀していたんです」


彼女が言うに、ケヴィンの様な有望株の査定員は、皆金銭を積んででも担当したいと思われる程らしい。


Bランク以上のギルドメンバーが、Bランク昇格試験の査定員を担った場合、その人物の判断で担当したギルドメンバーのランク昇格の有無が決まる。


その時査定員に求められるのは『正確な判断力』である。


面倒だからと誰も彼もを昇格扱いにし、もし昇格した者がBランクに見合わない実力だった場合、査定員には大きなペナルティが与えられる場合が有る。


逆もまたしかり、確かな実力を持って居るにも関わらずBランク昇格を認めなかった場合にも似た様な状況となる。


しかししっかりと見極めてBランク昇格を認め、その昇格したギルドメンバーがその後確かな実力を発揮すれば、査定員を担った者にも確かな恩恵が与えられるのだ。


ケヴィンの査定依頼をメイファが提出した際に、当たり前に公開されるKとしての依頼遂行履歴。


その履歴を見た者は、誰もがケヴィンが有能だと言う事を理解するはず。


最少の依頼回数で最速のBランク昇格条件の取得。


つまり将来のBランクでの活躍は当たり前に約束されている為、しっかりとした査定を行わなくともBランク昇格を認めるだけで、己の恩恵は決まった様な物なのだ。


これ程の人物を見逃す手は無いと、査定員立候補が募りに募った。


「俺にとっては都合の良い事じゃねぇか。楽して昇格出来るとかそんな解釈はしねぇが、少なくとも妬みで昇格を邪魔される事はねぇ」


「確かにそうとも取れますが、最終的にKさんの査定を担当される事になった方が『とんでもない人』なんですよ!!」


ケヴィンは判断を間違えた。


メイファのこの態度は『緊張』している訳では無い……これはどちらかと言うと、『興奮』だ。


彼女にその様な現象が起こると言う事は、ケヴィンの査定を担当する者がそれなりの位の者。


つまり……。


「……英雄か?」


「はい、オールガイアランキング5位……『剣聖・滅殺の刃』様……その人がKさんの査定担当員です」


「ほぉ……」


ケヴィンは予想通りの展開に納得しつつも、宛がわれた英雄の名に驚きを見せた。


近頃彼は『とある人物達』の影響で、前よりも英雄に興味を抱きつつある。


特に剣聖はその中でも突出して興味の対象となっていた。


竜騎士がXランカーを設立してから現在までで15年の月日が経過している。


その短い歴史の中でも、選抜された初期メンバーはとても有能であったらしく、約十年間一切メンバーの変動が起きなかった。


十年間の間にも数多くの英雄は誕生していたのだが、何れもその初期メンバーを超える逸材は現れなかったのだった。


竜騎士の槍聖としての立場は永久欠番であり、決して明け渡される事の無い約束された位とされている。


しかしそんな不動のXランクが、約五年前に突如その均衡が崩れ去る事となった。


人間側のXランカーに、二人の入れ替えが起きたのである。


当時Xランクであった爪聖と戟聖と入れ替わりに、新たに刀聖と拳聖が誕生した。


圧倒的な武力で当時の現役Xランカーを下した二人は、オールガイアランキングでさえ上りに上り詰め3位と4位の位置へ着いた。


この凄まじい快進撃に世間の英雄への好奇心は激しく搔き立てられたが、更にその数年後……一度に『5人』ものXランカーの入れ替わりが起こると言う異常事態が発生したのだ。


めでたい出来事では有るが、人々の……そして英雄の動揺は大きな物だった。


炎帝、雷帝、光帝、剣聖、弓聖。


弓聖以外の四人は、当時のそれらの位を担っていた者を下し、そのままその位を受け継ぐ形となってXランカー入りを果たす。


弓聖は当時の槌聖を下した事によって新たに誕生した位を担う事と成った。


正に黄金時代の幕開けだと言われていた。


若手英雄がベテラン英雄を制した事により、多分な妬みは起こっていたが、それらを寄せ付けない程に彼らは強かった。


最近知った事だが特に現オールガイアランキング一位の炎帝は、僅か二年でその地位に上りつめたと言う。


その中で何故ケヴィンが剣聖に興味を抱いたのかと言えば、彼のXランカー入りをした時の形が、非常に面白い物だったからだ。


先程述べた現オールガイアランキング一位の炎帝。


実は彼は、当初一番初めにXランカー入りした位は『剣聖』の位置だったと言われている。


何故『炎帝』が人間の位である『炎帝』の位置へ着く事が出来たのか……それは炎帝の持つ『異能力』に大きな理由がある。


炎帝、紅蓮の翼の異能力は『自然魔法』である。


彼は『人間』の体を持ちながらも、『自然魔法』を操れると言う存在だ。


混血種の様に、一つのマナの核に二つの異なる魔力が存在するのでは無く、二つの魔力がそれぞれ別々の二つのマナの核として体内に存在しているのだ。


英雄としての実力を与えられながらも、二つの英雄クラスのマナの核を与えられた炎帝。


当然ケヴィン達混血種と違い、互いの魔力が干渉する事無く人間としての身体強化の力と、エルフとしての自然魔法の力を十分に発揮する事が出来る。


つまり炎帝はその一つの体に英雄二人分の質を持つ魔力を宿していると言って良い状況になるのだ。


混血種の完全上位互換と言っても過言では無い。


ケヴィンからしてみれば文句の一つでも言わなければやってられない存在だろう。


その炎帝は最初に元剣聖、真空の鎌鼬を下した事で誰もがその実力を認めていた。


更にはその状態で炎帝は、元炎帝にも勝負を挑みそれを下した。


炎帝が何故その様な行動をしたかは、こう噂されている。


身体強化技術でも最も得意とする剣術を、そして自然魔法で最も得意とする炎魔法を、当時のXランカー全員に認めさせる事で、誰にも文句を言わせずにXランカー入りする為に見せつけたと。


彼の思惑通り、Xランカー内で彼を認めない者は誰もいなかった様であった。


いや、正しくは認めざるを得ない状況を作り上げたとも言える。


そしてその後剣聖の立場に居た炎帝を打ち破り、真の剣聖入りを果たしたのが現剣聖である。


炎帝は勿論手加減した訳では無いと言う。


炎魔法においても、剣術に置いてもXランカーに就ける程の力を持つ炎帝。


成る程、オールガイアランキング一位を担うだけの力を持ってると言えよう。


だが、『自然魔法』の異能力の影響で二つのマナの核を持ち、英雄クラスの中でも一つ抜きん出た魔力を持つそんな彼でさえ、『剣術』では剣聖に敵わなかったと言う事実。


その展開だけでも、剣聖はケヴィンに興味を沸かせる対象となった。


「それで、試験にはいつに決まったんだ?」


そうと決まれば話は早い、ケヴィンにとってこれ以上の暇つぶしは無い。


今回の昇格試験に、少しだけ楽しみを見出したケヴィンは、すぐにでもその試験に臨みたい気持ちに成る。


「その事なんですけど……」


メイファが皆まで言う前に、ギルド支部の扉が開かれる。


客の来店を知らせるベルが室内に鳴り響き、その人物に視線を送ったであろう他の客達の会話が一斉に止まる。


ゆっくりとした足取りで、しかしその一歩一歩の歩幅が長い事を感じ取り、恐らくだがその人物は長身であるとケヴィンは予想する。


そしてその足音がまっすぐとケヴィンの居るカウンターへと近づいて来ると、ケヴィンの後ろで止まった。


「……お前が『K』か?」


そしてケヴィンは振り向く。


「あんたが……『剣聖』だな?」


黒ローブを全身に羽織り、予想通りの長身の男。


右肩越しに見える彼の獲物は、ほぼ確実に『大剣』である。


50センチ程の持ち手が視界に映り、つば先から見える刃の根本は、こちらも50センチ程の太い幅が見える。


剣先は彼の左足の横からはみ出しており、190は有るだろう彼の長身から見ても、床すれすれな程の刀身を持っていた。


恐らく刃渡り150センチ程。


持ち手と合わせると2メートルもの大きな武器だ。


彼は恐らく、それを軽々と振り回せるのだろう。


ローブに全てが隠れ、彼の肉体がどの様になって居るか予想は付かないが、それでも彼の体格が全てを物語っているとも言える。


ただ、彼には一つだけ問題とも言える部分が存在した。


ケヴィンはこの人物の正体に大いに心当たりが有った。


しかも……ここ最近毎日の様に顔を合わせている相手である。


そしてケヴィンはその言葉を口に出しそうになり、ギリギリ押さえ込み……心の中でこう呟く。


こんな所で何をやっているんだ……『デュラン』……と。

いや本当に何やってんだデュラン。

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