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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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隠された実力

初めてのちゃんとした肉弾戦。


文章での表現はとても難しいです。

ケヴィンは再び剣を構える、簡単に壊れてくれるなよと願いながら、少しばかり力を見せても構わないだろうと己の中でギアを切り替える。


「さて……何処まで着いてこれる?」


レオンに対し、彼には伝わらない声量でそれを呟いたケヴィン。


闘技場の床を凹ませる程の踏込で、レオンへと再び接近したケヴィンは横薙ぎに剣を振るう。


それをレオンに防がれ反撃を受けるが、同じく剣で防ぎ逆方向へと切りつける。


レオンは上半身を仰け反らせてそれを回避するが、瞬間ケヴィンは足払いを掛け、そのまま膝立ち状態で体を回転させつつ鉄剣を逆手に構え、レオンが倒れこんだと同時に彼の正面を捉え、その喉元に剣を突き刺す。


レオンは完全に倒れる前に受け身を繰り出し、それと同時に外側へ腕の力だけで跳ね除けケヴィンの追撃を回避する。


続けて今度はレオンからケヴィンへ飛び掛かり、右腕に持たれた剣を振るう。


ケヴィンがそれを防ぐとレオンは体を時計回りに回転させ、ケヴィンの右側目掛けて剣を振るう。


さらにケヴィンが防ぐと逆回転を繰り出し剣を振り、防がれると更に逆回転をし再び剣を振る。


その往復を数度繰り返した後、回転に回転を重ね遠心力を付けた一撃を此方へと繰り出すが、あからさまなその動きにケヴィンが反応出来ない訳も無くあっさりと回避し、彼はレオンの袈裟懸けにむけて鉄剣を振り払った。


後方に下がる事によって致命打とは成らなかったが、確かな痛みにレオンは顔を歪めている様子。


しかし一切怯む事なく体勢を低くしながら此方へと接近したレオンは、途端に後宙返りを繰り出した。


ケヴィンは目の前で両腕を交差し、顎を狙ったレオンの蹴りを防ぐ。


失敗に見えたレオンのサマーソルトキックだが、ケヴィンの腕を踏みつける様に蹴り飛ばすとレオンは更に上空へと浮き上がり、空中で一度回転すると両足をケヴィンへ突き出してくる。


それすらも防いだケヴィンだが、レオンはさらにその反動を利用し空中で逆回転。


遠心力を利用し上段から剣戟を放つが、ケヴィンの鉄剣によってそれは弾かれ空中で体勢が崩される。


無防備となったレオンへ、ケヴィンはバッティングフォームの様に両手で握った鉄剣で、力強くレオンを強打した。


「がはっ!」


直撃を喰らったレオンは二、三度地面をバウンドした後、瞬時に体勢を立て直し剣を構えこちらを見据える。


青く腫れ上がった左腕を見るに、あの瞬間に急所を防いだ様に見えるレオンに関心しつつも、休息を与える間も無くレオンへ接近するケヴィン。


途端にレオンの表情が『本気』になった様に見えた。


負けず嫌いな性格なのだろうか、空気ががらりと変わる。


「……!?」


が、その瞬間ケヴィンはレオンの魔力が急速な跳ね上がりを見せた事に気付く。


凄まじい速度で体に循環する魔力と、やはり彼から感じる筈の無い『匂い』が同時に鼻に届く。


そして再びケヴィンの警戒網が鳴り響き始めた為、ケヴィン本人もレオンの魔力の高まりに合わせ循環させている魔力総量を上げる。


そうか、まだ強くなるかと思わず不気味な笑みを浮かべ掛けた時だった。


「レオン!!」


デュランの叫び声が闘技場に響き渡る。


「あ……しまった……ごめん、降参する」


激闘の終焉は突然に訪れた。


レオンの降参による試合終了である。


「……」


呆気ない幕切れに声が出ない訳では無い。


久しく感じる事の無かった強い魔力と、それと同時に再び漂ったあの『匂い』。


何故『人間』であるレオンからその匂いがするのか疑問に思うケヴィンだが、ある程度の予測を立てる。


確かに不完全燃焼ではあるが、それでいてもケヴィンは大いに満足していた。


「し……勝者、ケヴィン……」


声が震えているルイス。


この異常事態に気づいているのは恐らく彼だけであろうか。


それを証明するかの様に、辺りの生徒一同から巻き起こるのは拍手喝采。


二人の高レベルの戦闘技術に素直に賞賛を送っている様子。


それが異常なレベルで行われている事と気づいているのかどうかは定かでは無いが、それらを半ば無視しレオンへと握手を差し出したケヴィン。


それを受け取りながらとても気まずそうな表情を見せるレオンに対し、口の端で笑みを浮かべるケヴィン。


まさかこれ程の技術を持った人物が同年代で存在するとは思っても見なかった。


一番期待していなかった人物が、まさかの大穴だった事にケヴィンは喜びを感じる。


もう一つ、この学園での楽しみが増えたと確信したのだ。


デュランとエマの元に戻ったレオンは、二人に謝罪している様に見える。


そしてケヴィンはわざと、デュランの耳に届く様にその言葉を呟いた。


お前らの正体には気づいている。


だからその手の内をさっさと晒せ、そう言う意味を込めて。


「……『英雄』も捨てたもんじゃねぇな」


その言葉に、確かにデュランが此方に視線を向けた事を、ケヴィンは視界の端に捉えたのだった。



――――……。



「どう言う事ですか学園長!!」


放課後の事である、アトランティス学園の学園長室にて、ルイスが声を荒らげながらアルベルトの机を殴打する。


ボブカットで切り添えられた茶色い髪が覆う表情は、女性にも見える程整っているにも関わらず、酷く焦りの表情で歪んでいる。


「どうもこうも無いじゃろうて、何をそんな慌てておる」


「とぼけないで下さい! 私のクラスの『ケヴィン』と『レオン』の事です!! なんなのですかあの二人は!?」


その日行われた模擬戦にて、ルイスが名を出した二人は驚異的な身体能力を見せた。


人間のレオンのみならまだしも、その相手をした者は混血種のケヴィンである。


とても常識の沙汰とはルイスには思えなかったのだ。


「言ったであろう。そなたが受け持つ生徒の中に、特別優れた者がいると。そ奴らを上手い事面倒見てくれと申したではないか」


「確かに仰いましたよ。ですがね!? あれ程迄とは思いもよりませんでしたよ! 正に異端ですよあの二人は!!」


ルイスの脳裏には、途轍もない剣戟を見せる二人の動きが未だ脳裏に焼き付いている。


齢30も過ぎた人生経験の中で、あれ程の剣戟をかつて見た事が無かった。


自分のよく知る『英雄達』でさえ二人の足元にも及ばない、そう思える程の動きだったのだ。


「喜ばしい事であろう。我が名門校に飛び切りの強さを持つ生徒が二人も在籍する。それは誇りでは無いのかね?」


何をそんなに慌てているのだ、と呑気に答えるアルベルト。


二人の温度差は天地の差があった。


「それは常識の範囲内での話です! 私はこの学園の教師をやれている事を誇りに思っております。貴方の様な偉大な方の元で鞭を取れる事を喜ばしく思っている。ですが! 私よりも遥かに強い力を持つ者達に、私が何を教えられると言うのですか!?」


「何も教える物は戦い方だけでは無いであろう。ケヴィンもレオンも、その点に置いては恐らくこれからも自力で取得して行くだろうと私は思っている。私があやつ等にお主から教えて欲しい物はそう言う類では無い」


アルベルトは湯気の立ち込める湯呑から、一口お茶を啜るともう一度口を開く。


「先生と言う物は、『先に生まれた者』と書く。お主が今日まで生きて来た人生経験と言う物は決して無駄な事ばかりでは無かった筈じゃ。若かりし時に身に余る程の強さを手に入れてしまったが故に、彼等は大事な物が必ず抜け落ちてる筈。それを教えてやって欲しいんじゃよ」


「……」


アルベルトの言葉に、ルイスは苦い表情を見せる。


「私はお主ならそれが出来ると思い、Aクラスの担任を任せたのじゃが……期待外れだったかの? 『鬼才の雷神』よ」


ルイス・ジュディーツィオ。


1-Aクラスの担任にしてギルド月下無限天に置ける『Sランク』保持者。


彼は英雄では無く、アルベルトと同じくして一般人にも関わらずSランクまで上り詰めた存在。


まだまだ現役ではあるが、アルベルトの直々のスカウトにより、このアトランティス育成学園で教員を全うする立場となった。


「いえ……ご期待に添える様……頑張らせて頂きます……」


消え入りそうな小さな声である。


彼の心境は複雑な物だろう。


異端過ぎる程の生徒達を持つ事にプレッシャーを感じているのだ。


無理も無い。


自分よりも優れた者が教え子に居ると言う事は、彼らが暴走した際に、それを止める力が自分には無いと言う事にもなる。


「心配するで無い。あの子達はいい子だ……きっとまっすぐ育ってくれるだろう」


「……はい」


悔しさもあるだろう。


英雄ならまだしも、混血種であるケヴィンでさえ、自分の実力をあっさりと超えて行ったのだ。


ルイスの握られる拳は、一体何を思っての行動なのだろうか……。



――――……。

最後までお読みいただきありがとうございます。


誤字脱字等有りましたら報告いただければ助かります。


早速乞食させていただきますが、ブクマ登録等もよろしくお願いいたします!

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