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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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エドワード・カルミン

愚かなミリアルドの弟は果たして……。

「はぁぁぁああ!!」


「せいやぁぁああああ!」


闘技場の中央で剣をぶつけ合う二人の学生。


ケヴィン達一同は、学生服から黒い軍服の様な運動着へと着替え、学園に設けられている闘技場の一室に集まっていた。


その日の午後の授業は模擬戦。


学園生活が始まってから一週間弱、生徒達が皆互いの実力を分かり始めた頃に、実力テストとして模擬戦を行う事となっていた。


しかし当たり前にケヴィンにとっては『退屈』である。


学生レベルの模擬戦等、見るに堪えない。


「ケヴィンちゃん、退屈だから膝枕してぇ。やっぱり腕枕してぇ」


「寝る気満々じゃねぇか」


闘技場の隅で座り込んでるケヴィンの横に、同クラスのアドレットが居座っている。


もう10組以上対戦を終えた中、ケヴィンの出番はまだ無い。


担任であるルイスの選考で対戦表が組まれているが、大抵が同レベルのギルドランクを所持する者同士で組まれている。


ケヴィンは表向きにはギルドランクを所持していないが、入学試験首席の実力、更にはギルドランクBのミリアルドとの決闘で勝利を収めていると言う事実から、相応の実力者と言う扱いを受けている。


ケヴィンは出来る事ならエマやデュランと組みたいと視線をそちらへ向けるが、彼らは実力を『偽って』いる為に、恐らくその機会は無いだろうとほぼ諦めを見せる。


となると自分と対戦する相手になる可能性のある人物は……。


「こんにちは、ケヴィンさん」


「やっほー『エドワード』ぉ」


こいつだ。


「アドレットもこんにちは」


嫌味の無い高貴な雰囲気を見せるエドワード。


その若さでBランクを所持する実力は確かなものであり、やはりクラスの中では頭一つ抜きん出ている。


実力を合わせて戦うと言うのなら、間違いなくこいつだろうとケヴィンは思う。


「こりゃ王太子殿、わざわざ挨拶回りご苦労なこった」


敢えてケヴィンは嫌味な言い方をする。


その言葉によって、エドワードの考えをつかみ取ろうとしたのだ。


苦笑いを見せるエドワードは、ケヴィンの横にゆっくりと腰かける。


「君のその態度は仕方ないよね、僕と君の間には確かな蟠りがあるのは否めない。……先日は僕の愚兄が本当に失礼をした」


「ほぉ、わざわざその謝罪に来たのか、てっきり仇討に来たのかと思ったんだがな」


「まさか、あれは兄の自業自得だよ。フィリス家にも多大な迷惑を掛けたしね」


やはりこいつは兄貴とは違うようだ。


ケヴィンは再度ミリアルドとの違いを認識する。


「あの事件で懲りてくれれば良かった物の……昨日の食堂での騒ぎは僕の耳にも届いているよ。全くどうして……何か良い方法があれば良いんだろうけど、父上が根を上げるのも頷ける」


「だが自分の息子だ、しっかり手綱を握ってくれなければ、国民に被害が及ぶぞ」


「その通りだよ、僕も……その為に動かないといけないと思っている所さ」


ケヴィンは目を見開く、その言葉はつまり。


「お前は、王位を継ぐ気があるのか?」


「僕はこの国の第二王子さ。それなりに国の未来の事も考えて生きてきた。その結果……とてもじゃないけど、今の兄上にはこの国を任せる事は出来ない」


成る程、国民達が一様にエドワードを王へと押し上げんとしている意味がケヴィンには理解出来た。


こうして隣に座れば、彼からは確かなカリスマ性を感じるのだ。


「だけどその為には、僕には明らかに力が足りない」


「そんな事無いよぉ、あたしのお父さんもしっかりとフォローするつもりだし」


「王子に対して随分と馴れ馴れしいが、フルーズ家としてそれは大丈夫なのか?」


貴族と言えば、一般市民よりも遥かに王族に対し礼儀が必要となるだろう。


決して一般市民に礼儀が要らないと言う訳では無いが、相応の礼儀作法を学んでいるだろう事から、余計に態度に煩いのでは無いかと思う所があった。


「アドレットは僕の派閥の筆頭貴族なんだ、彼女の父親は本当にいい仕事をしてくれている」


言葉は足りてないが、要するにアドレットと彼は古い仲であり、砕けた関係性をお互いに築いていると言う事だろう。


位の高い貴族であればある程に、黒い噂は絶えない物だ。


その中でもフルーズ家は全うな政治を行う清く正しい貴族と評判である事はケヴィンも把握している。


しかしフルーズ家は上流貴族の中ではまだまだ下の方だ。


上流貴族の中でも三大貴族と呼ばれる内の二つの貴族家が、ミリアルド派に着いていると言われている。


裏でどれだけあくどい事をしていても、それが表に出ない限り法の裁きを与える事は出来ない。


どれだけ堕落した貴族でも、確かな権力を持つそれらを無視してエドワードを王位に挙げる事はとても難しく、それがエドワードの悩みの種なのだ。


「僕が本腰を入れて立ち上がる時には、是非とも君の力を借りたいと思って声を掛けたんだよ、ケヴィン」


「俺はただの混血種だぞ。権力も何もねぇ」


「かもしれないね。だけど何故か君には惹かれる物が有る。僕は昔から人を見る目だけは有ると思ってるんだ」


それは確かに大きく間違えては無いかも知れない。


しかし今のケヴィンには確かな権力が無いのもまた事実である。


「こんな微力で良いならいくらでも貸してやるよ」


「その言葉、ありがたく頂戴するよ」


少なくとも好感度は悪く無い。


人に頼られる事に意味をあまり深く考えていないケヴィンだが、本当に自分の力が必要になったら動いてやっても良い。


そう思える程の魅力が、確かにエドワードには有った。


「次、エドワード・カルミン対アルセウス・ジャスホープ。両者前へ」


直前の試合が終了したらしく、続いてエドワードが模擬戦へと呼ばれる。


「……僕の対戦相手は貴方かと思っていたんですが、まぁそうなると宿敵との戦いの様な形に成ってしまうので、避けられて良かったと言う事にしときましょうか」


「あぁ、楽しみはとっとけって言う事だ」


闘技場中央へ向かうエドワードの背中を追いかけながら、自分の予想が外れた事に首を傾げるケヴィン。


Bランク所持者はエドワードしかいない為、ケヴィンの対戦相手は残るCランク保持者から選ばれる事となる。


ふと隣へ視線を映すケヴィン。


目が合った瞬間、瞳を閉じてキス顔になるアドレットへと声を掛ける。


「俺の対戦相手はお前か?」


「あたしもう対戦終わったよぉ!!? ケヴィンちゃん見てなかったなんてひどぉい!!」


ポカポカと痛くも無いパンチを喰らいながらも、だとすれば自分の対戦相手は誰だと視線を泳がす。


残っているのは……3人だ。


先程諦めたばかりの好敵手、エマとデュラン……そして残りのレオンを合わせて三人。


三分の二で自分が求める強者と手合せする事が出来る。


ケヴィンはニヤリと笑みを零す。


デュランもエマも、恐らくはその実力を隠そうとするだろう。


しかし、ケヴィンはそうなっても無理やりに実力を出さざるを得ない手段を使おうと考えていた。


決して一般人では避ける事の出来ない攻撃で、教師の静止が間に合わない速さで襲い掛かる。


そうすれば、彼らはそれに対応せざるを得ない。


それこそ、有り得ない力で。


ケヴィンは訪れた僅かなチャンスに、笑みを堪えきれなかった。

別にケヴィンは戦闘狂と言う訳では……無いとも言えませんね

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