アトランティス魔導騎士育成学園4
ずっと寝てるキャラは強い説もありますよね?
無い?
彼が自己紹介を終え、席に戻ろうする。
そこへすれ違うエルフの女性生徒……ケヴィンにとっての大本命の登場だ。
今度は、女性達と打って変わって男子生徒が息を飲む。
彼女の振りまく美貌は、見る者を確実に魅了する。
それ程の美しさを兼ね備えているにも関わらず、その表情は先のデュランの様に無表情だ。
この世に希望なんて無い、そんなケヴィンにも似た様な目の色をしながらも彼女は口を開く。
「エマ・ローゼンクランツ。得意属性は風、ギルドランクは『C』よ。よろしく」
淡々とした自己紹介。
必要最低限の事しか喋らないのは皆と一緒なのだが、それ以上に『自分には構うな』と言う雰囲気がひしひしと伝わってくる。
折角の美しさが台無しになる程に。
「Cランクねぇ……」
これは独り言である。
デュランも然りだが、エマに至っては確実の己のランクを隠しているだろう。
本当のランクがどれ程の物かは定かでは無いが、素性を隠していると言う事は、それなりであるのは間違いない。
わざと言葉にして呟いたのは、三つ隣に座る『デュラン』の反応を伺う為。
他の者には聞こえない様に、極僅かな小さな呟きをしてみせるが、案の定彼の耳にはそれが届いた様だ。
視線の端で彼がこちらの方を向いている様が見える。
それに対しケヴィンは彼の事に気づいていないふりをする。
あくまで自分の標的はエマであり、その他の存在には気づいていない。
そうアピールする事によって、デュラン自身の化けの皮も剥いでやる心づもりでいるのだ。
エマが席へと戻ってくる、次の自己紹介は……こいつだ。
「んぁ? お! 俺だ!! 次俺! 俺俺ッ!!」
なんともやかましい奴が起きたもんだ。
ケヴィンはそう感想を漏らす。
入学式中、ずっと立ったままで寝ていたその男子生徒は、教室でも自分の自己紹介まで眠りこけていた。
それにしてもなんとタイミングの良い目覚めだろうか。
「俺の名はレオン・エルツィオーネ!! 得武器は剣! ギルドランクはC!! 好物はカツ丼! 後! あとあとあと!!!」
大興奮である。
何故寝起きでテンションをあれ程まで高められるのかが不思議で堪らないが、ケヴィンはどうしてか、彼を見ていると口角が上がってくる様な気分になり顔を顰めた。
「レオン君、自己紹介は簡潔で良いです」
「……ちぇっ」
長引きそうだったレオンの自己紹介をルイスは丸め込み、彼は一瞬拗ねた様な表情を見せその後直ぐに満面の笑みを皆に向ける。
「皆! これから宜しくな!!」
その屈託のない笑顔と持前の明るさに、男女共に心惹かれた者は多い筈だ。
彼が席へ戻ってくるのを視界に収め、ケヴィンも席を立ちあがる。
「次、宜しくな!!」
何を宜しくなのか分からないがレオンはケヴィンとすれ違う時、そう呟いた。
「ん?」
ふと、彼とすれ違いざまにとある違和感を感じる。
混血種と言う種族は、人間やエルフよりも魔力が劣ると言う事以外では、部分的に人間やエルフ以上の身体的能力を発揮する場合がある。
特に『五感』はもの凄く敏感であり、視力も聴力も、そして嗅覚も他の種族より優れている。
勿論身体強化を施した人間のそれには結局勝てないのだが、それでもケヴィンに至っては純血よりも遥かに高い水準で強化を行っている為に、異常発達と言っても良い五感を携えている。
そしてその中の嗅覚が、レオンから感じる筈の無い『匂い』を感じた。
振り向くと共にレオンの背中に視線を向けるが、彼は何事も無く着席すると直ぐに隣のエマに語りかけていた。
何かの勘違いかと思い軽く首を傾げながらも、ケヴィンは再び教卓を目指し足を運んだ。
教卓から教室を見渡すと、クラスメイトの視線は皆ケヴィンへ注がれている。
ここにいるクラスメイトは、恐らくその殆どがケヴィンの事を知っているだろう。
特に、王族関係の方向でだ。
「ケヴィン・ベンティスカ。得意武器は剣、そして得意属性は氷。見ての通り混血種で、ギルドランクは無い」
瞬間、クラス中がざわつく。
「あれが王族殺しの混血種……」
「ミリアルド殿下より強い混血種って本当に居るのか?」
「ギルドランクにしたらどれ程の物なのだろうか……」
思えば、比較的嫌悪感を持たれている感じはしない。
それどころか皆興味津々と言った感じだ。
よもや混血種がここまで受け入れられよう等と、ケヴィンは思いもしていなかった。
だからこそ面倒くさい……故に、保険を掛けて置く。
「混血種を差別しないでくれなんて都合の良い事は言わねぇ、だがせめて俺の邪魔はするな。テメェらが俺に危害を加えないなら俺からも何もしないが、何かちょっかい掛けてくるなら力づくで叩き潰す……以上だ」
これは半分脅迫に近い。
俺に話しかけてくれるなよと言う意思表示をケヴィンは行ったのである。
だがしかし……席へ戻る途中、あのエドワードはケヴィンに笑いかけ、席に戻る寸前に大胆にもレオンは大声でケヴィンに話しかけて来る始末である。
「お前凄いな!! この教室で一番強そうだ!」
と、レオンの言葉である。
彼の言葉に疑問を浮かべるケヴィン。
強そうだとは一体どう言う事だろうか。
先の発言の影響だろうか、いいやそんな事は無い。
そもそも混血種に対して『強そうだ』等と馬鹿しか言わない。
こいつが根っからの馬鹿なのか、それともやはり馬鹿なのか。
体格で言うのならデュランの方が明らかに強そうであり、表立った実力で言えばあのエドワードの方が強そうな筈である。
自分よりも体格が小さく、それでいて混血種のケヴィンに、そんな言葉を投げかける意味が分からなかった。
「他の人とは身のこなしが違うもんな! いつかお前の剣術を見れる事を楽しみにしとくよ! 宜しくな!」
そう言ってレオンは右手を差し出してくる。
成る程とケヴィンは納得する。
何も強さは表立った功績や、見た目だけで判断する事では無い。
普段からの行動や身のこなし方一つで分かる事だって多々ある。
それをこの一瞬で見抜いたレオンに心の中で賞賛を送りながら、珍しくケヴィンはその右手を受け取り、それに答えた。
「あぁ……宜しく」
――――……。
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