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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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再現・パーフェクトミラー

……まぁ、これだけ最強の英雄達とその理由を並べて居ても、この議論は実際に全く意味のない物となっている事に殆どの者は気づいていない。


正確に言えば、刀聖一派の面々『以外』は誰も知りえない事だ。


それはそうだ、誰が信じるだろうか。


まさか真の最強は、異能力も持たず、英雄ですら無く、劣悪種と呼ばれている混血種等と。


自分から見ても、『ケヴィン・ベンティスカ』は壊れている。


今では『蒼氷の朱雀』と呼ばれているが、彼の実力は正に桁違いだ。


正直に言うが、仮にこのルーチェが『全力を出せる状態』にて戦った場合でも、彼に勝てるビジョンが見えない。


彼の存在を、実力を知っている者達からすれば、この英雄界最強議論なんて鼻で笑ってしまう事だろう。


だからこそ自分はこの議論においては、大抵ケヴィンの事を考えずに思考を行っている。


彼を候補の中に入れてしまえば、思考する間もなく彼が最強だと答えが出てしまうからだ。


全く自分達が英雄と名乗る事さえもおこがましく感じてしまう程だ。


あくまで『英雄の中で』の最強候補だ。


数多くの英雄を挙げてきたが、やはりそのどれもが竜騎士を含めた『刀聖一派』からその候補が上がってくる事だろう。


それ程に少数精鋭の刀聖一派の実力は折り紙付きなのだから。


だからこそこの議論に終わりは無いとも言える。


状況によって、相性によって、それぞれの長所短所と言う物は確実に出てくるのだから。


しかし自分は今ここで、敢えて最強の英雄の名を挙げようと思う。


あくまで『条件付き』と言う大前提があるのが玉に瑕だが……実際にそれを目にしてもらえれば納得が行く筈だ。


自分が一押しする英雄は、槍聖でも、刀聖でも、炎帝でも……ましてや自分でも無く……『弓聖・反撃の女神』だ。


彼女の異能力である『再現』……。


この再現は、相手の扱う自然魔法や、異能力でさえも一度だけ完全にコピーする事が出来る異能力だ。


発動条件は相手の技を『一目する』と言う単調な物であるが、その異能力の特徴状、同じ技を発動するにしても必ず『後出し』になると言うデメリットも存在する。


だが、その様なデメリット等霞んでしまう程にこの異能力は強力な物である。


相手が膨大な魔力を消費して、時間を掛けて構築した強大な自然魔法を、ただの一瞬で全く同じ物を『僅かな魔力』で使用出来るのだ。


それこそ……あの『絶対切断』もだ。


その上この異能力、実はあまり知られていないが、相手の『動き』さえも再現出来るのだ。


例えば弓聖が全速力のケヴィンの動きを目にしたとしよう。


本来なら弓聖のスピードではそのケヴィンの動きに追いつける筈が無い。


だが、そのケヴィンの動きを異能力で再現した場合、弓聖はケヴィンと全く同じスピードで動く事が可能なのだ。


ただそう言った場合、確かに弓聖は『僅かな魔力』で対象の再現をする事が可能なのだが、その対象の威力が大きければ大きい程、込められた技術が優れていれば優れている程に比例して、消費する魔力は上がっていく。


知れたものではあるのだが、ケヴィンの全速力を仮に弓聖が再現しようとすれば、もしかしたら全魔力を注ぐ事にはなるのかもしれない。


仮定の話であり、実際にどれだけ魔力消費が起こるかどうかは分からないが、それでもケヴィンの本気を一瞬でも再現出来るのなら、全魔力を消費と言う程度のデメリット等なんのリスクにもならないだろう。


……『目にする事が出来れば』……の話だが。


実際、ケヴィンは弓聖に対してこの異能力の最大の弱点である『一目もさせない』と言った方法で勝利を収めたと聞いた。


その際に自分は、彼等から受けた魔法からの復帰に時間を掛けてしまっていた為に、その状況を確認する事は出来なかった。


その上その場から一歩も動かないと言った戦い方を見せ、身体の動きさえも再現させない様に立ち回ったらしい。


いつ何処で彼はこの再現の詳細な能力を知ったのかは分からないが、これ以上今ここで『愛しのあの人』の話をしても無駄と言う物だ。


規格外の存在では無く、今回は規格内の存在が対象だ。


確かに現状『オーロ』と『アルジェント』の二人は、常識では少し考えられない力を見せている。


普段の自分達であれば決して敵わない存在だっただろう。


しかし今……『この状態』になった弓聖で有れば……負ける事は有り得ないのだ。


弓聖は現在、虚ろな表情で弓を射続けている。


恐らく……いや確実に彼女は現在『気を失っている』状態だ。


その状態で弓聖はオーロとアルジェント二人を相手に『互角以上』に渡り合っている。


今現在、オーロ達は高速で弓を射続ける弓聖に対して防戦一方の状況に追い込まれている。


当然だろう。


彼らに降り注ぐ矢の数は尋常では無い。


ただでさえ弓聖が次々に放つ矢は、旧時代に有ったマシンガンと言う武器に匹敵する程の連射力と言われているにも関わらず、その射手が一人では無く『四人』にもなってしまえが防ぎ切れる筈が無いだろう。


オーロ達は現状『四人の弓聖』に完全に囲まれている状態だ。


転移魔法を扱う暇さえ与えられないまま、弓を防ぐ事に尽力している。


そして一瞬のミスによりオーロが死する。


その瞬間にまるで死んでいなかったと思える程の一瞬でアルジェントが二重身を発動してオーロが復活する。


……だが、その行為は今の状況で完全なる『悪手』だ。


オーロ達は少なからず、その異能力行使の鍛錬にだけは力を入れていた様で、はっきり言って素晴らしい程の技術で片割れが死んだ瞬間にその片割れを生み出していた。


それこそ、『通常』の弓聖では反応しきれない程に僅かな間隔で異能力を行使している。


しかし、今の状態……つまりこの『気を失っている』状態の弓聖は、本来では反応しきれなかった異能力の行使でさえ『目にする』事が出来るのだ。


それがどう言う事になるのか……この通り、四人いなっている弓聖から『更に四人の弓聖』が誕生するのだ。


つまり、オーロの異能力である『二重身』を『再現』したのだ。


無我の境地とでも言うのだろうか、あまりにも早いオーロの異能力の行使にも反応した弓聖が、己自身を異能力によって『再現』した。


本来この二重身は、オーロがもう一人の自分を生み出す能力だ。


とても強力な異能力だが、裏を返せばただそれだけの能力の筈だった。


もう一人のオーロを生み出した場合、更に別にもう一人の自分を生み出す事は出来ない。


オーロから生み出されたアルジェントも、もう一人を生み出す事は出来ない。


無限に増殖し続けられるのであれば、とっくの昔にこの世界はオーロと言う存在で埋め尽くされていた筈だ。


『二重身』と言う異能力の名からも分かる通り、オーロは己を二人以上生み出す事は出来ない。


必ず一人である状況でなければ異能力が発動しないと言う制限が存在しているのだ。


だが、弓聖の再現の異能力は見たものを見たまま再現するだけの能力である事から、オーロ達に定められている三人目を生み出す事が出来ないと言う制限を受ける事が無かったのだ。


オーロ、もしくはアルジェントが死んだ時、残された片方がもう一人を二重身で生み出す。


弓聖が目にする現象は、『もう一人のオーロが生み出される』と言う現象だけで有り、それ以上を生み出す事が出来ないと言う『概念』の様な理自体を目にする事が出来ないのだ。


だからこそ、三人目以降を生み出す事が出来ないと言う括りから外れる事が出来た。


オーロ達は……自分達が有利になる為に行使していた二重身の異能力を、行使すればするほど自分の首を苦しめてしまうと言う状況に持ち込まれてしまったのだ。


あくまで『条件付き』ではあるが、最強の異能力と言わんばかりの能力を発動している弓聖の手によって。

ケヴィンは壊れてるんです。

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