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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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蒼氷の朱雀8

やっぱりこうなりますよね。

昨今、ギルドにはとある情報が度々上がってきている。


ギルド的に……いや世界的にも深刻な問題として取り扱わられている情報である。


それは、上級モンスターの異常行動。


突如生息するはずの無い地域に上級モンスターが現れる事象。


安全地帯だった筈の地方で何故か大量のモンスターが発見される。


等と言った謎の発見情報が引切り無しに挙がっていた。


先日Xランカーが一斉討伐を行った魔物達もその異常発生の一部である。


例えるなら刀聖と光帝が担当したとされる緑龍……それが発見された場所は『荒野』であった。


比較的人気の少ない場所だった為に惨事にはならなかったが、本来なら緑龍は『森』や『山』と言った木々の生い茂った地方に生息する生物である。


それらとはかけ離れた荒野や砂漠と言った地表が多い地方には、近づこうとすらしない。


長年の研究でそう言った魔物の生態系はほぼ明らかになっている。


その為、生態系を狂わせる様な異常行動を起こす魔物が現れた際にギルドへと目撃情報が相次ぐ事で、討伐隊を組む形となっていた。


本来ならば上級の魔物はほぼ自らのテリトリーから動かず、その縄張りを荒らす者のみをターゲットとする。


人類に最も大きく被害を与えている魔物は、実は下級が多いと言う実例も出ている事から、上級の魔物が人類に与える影響は意外にも少ないものなのだ。


しかしそう言った俗に言う『温厚』な魔物が、突如安全地帯へとまるで『召喚』された様に現れ、人類へ大きな被害を与え始めた。


そう言った上級モンスターの異常行動にギルドや軍は日々対応に追われ、全世界の魔導騎士団は深刻な人手不足に陥っていた。


ギルドに所属する英雄達は一部こそ慈善活動を行う者が存在するが、その大半が『金銭』を積まれなければ動く事は殆ど無い。


その為、魔導騎士団の手に余る程の凶悪な魔物が現れた際には、国からギルドへXランカーの派遣が依頼される。


しかし最強のXランカーと言えど、その人数はたったの14人。


その他にも『Sランク』に身を置いている英雄達にも任務を与えているのだが……彼ら全員を派遣する為の財力はそう簡単には捻出出来ない。


となれば全英雄が出動と言う状況にはならず、大金を叩いてその上で任務の受諾を了承してくれる英雄しか派遣する事しか出来ないのだ。


英雄の人数は過去最大規模の200人以上と言う数字を記録しているが、それでも実際に動こうとする者達は50人にも満たない程度だ。


たったそれだけの人数で、オールガイア中に突如現れる上級モンスターを討伐しなければならない。


偶発的に、個別に現れるのならまだしも、統率された様に世界中に同時的に現れる為に、その度に英雄はオールガイア中へと拡散されてしまう。


まさに猫の手も借りたい状態である。


ギルド側としては、常に少しでも腕の立つメンバーを求めてり、そう言う人材の選別にも力を入れていた。


そんな状況の中で昨今、度々英雄達並びに魔導騎士団達から、不思議な報告が挙げられる事が多くなった。


なんでも討伐地域に向かった所、討伐対象であった上級モンスターが『氷漬け』で放置されている状態で発見されると言う報告である。


そう、例の『氷山』を作り上げる謎の『エルフ』の存在の報告だ。


名を『蒼氷の朱雀』。


神出鬼没で、誰も姿を見た事のないその存在。


颯爽と現れ凶悪な魔物を瞬時に討伐し、誰にも見つかる事無くその場を去る。


かと思えば気付いた時には別の地方の魔物を瞬く間に討伐して行く。


未だ誰も知らない新たな英雄と思われていたその存在に、人々は恋焦がれ憧れていた。


だからこそ未だ姿すら見られていないその存在に、信頼の意味も込め『蒼氷の朱雀』と言う名で呼び、崇拝していた。


アルベルトは今目の前の少年に、その人物の情報を重ね合わせた。


誰もがエルフだと思い込んでいた蒼氷の朱雀。


現氷帝の地位を脅かす程の氷魔法を放つ人物が、エルフでは無く混血種であった。


そう……このケヴィンこそが謎の氷使い、蒼氷の朱雀、その人であろうとアルベルトは当たりを付けたのだ。


成る程、だからこそ先のミリアルドへ放った氷魔法……それならば合点が行く。


しかしまさか蒼氷の朱雀がこの様な若者だったとは、これだから人生は面白いとアルベルトは思う。


「あんた、エリルの行先は知らねーのか?」


「残念じゃが、私も把握出来ておらぬ。しかし私からしたら、ただの予想でしか無いのじゃが……」


「あいつは死んじゃいねぇ。そうだろう?」


「その通りじゃ」


アルベルト自身、彼が行方不明になってから十数年経った今でも、彼が生きている事を信じ片手間で捜索を続けている。


それ程までに彼の存在は英雄の中でも大きかった。


今でこそ、素晴らしい人材が英雄の中に溢れているが、当時の様な絶対的な英雄感を醸し出すにはまだまだ実力も名声も足りない。


この世界には、彼の変わりを務められる様な人物が必要だ。


そのカリスマ性で英雄達をまとめ上げられる様な……。


そう、言わば絶対的リーダー。


もしくは、リーダーを限りなく押し上げられるサブリーダー。


今のXランカーに足りていないのはその存在だ。


ふとアルベルトはケヴィンを見直す。


この人物なら或いは。


まだまだ年齢は若い、責任感等そう言った感情は恐らく持ち合わせていないだろう。


しかしその絶対的な強さがあれば……そしてそれを最大限に活かせる者達と彼を引き合わせれば……。


アルベルトは頭の中で刀聖一派の面々の顔を思い出しながら、彼と引き合わせる算段を立てる。


「ケヴィン、お主はまだエリルを探すつもりはあるか?」


その為にはまず彼を自分の保護下に置く必要がある。


彼との繋がりを保つ為、アルベルトは一つの案を思いついた。


「当たり前だ、あいつの顔をもう一回みて、ぶん殴ってやらなきゃ気がすまねぇ」


恨みがある訳では無い、ただ感謝の気持ちを伝えるのが苦手なだけだろうとアルベルトは捉える。


「ならば一つだけ彼に近づく方法があると私は睨んでおる」


これはただの口実だ、しかし事実可能性が少しでも有ると言えばここだろう。


「何だ?」


「彼と同じ道を歩む」


「……英雄になるつもりはねぇぞ」


「構わん、そこは気が向いたらで良い。私が言っているのはもっと別の形で彼に近づく道じゃ」


ケヴィンの表情は、正に興味津々と言った物が浮かんでいる。


確実な心理的誘導であるが、こればかりは長年生きていなければ分からない技術だろう。


はっきり言えば、アルベルトにとってエリルへ近づく道と言うのも、Xランカーを……ひいては英雄を丸ごと引っ張って行く者の候補等と言う考えはただの口実である。


それよりも今一番の目的は、ケヴィンにもっと広い世界を見て欲しいと言う事。


戦ってばかりの世の中と言う『小さな物』しか見て来ていない彼に、もっと人生を謳歌して欲しいと言う思いがとても大きい。


何故こんな親心の様な物が彼に湧いたかは分からないが、それでもアルベルトはケヴィンに今を生きて欲しかった。


この広い世界をもっと知って欲しかった。


下らない世の中ではあるが、その答えに辿り着くには、まだまだケヴィンは若すぎるのだ。


だからこそ……アルベルトは彼にこう伝えた。


「エリルの母校……私の学園、『アトランティス魔導騎士育成学園』へ来い」



――――……。

学園物って、そこへ通わせる口実を作るのって結構大変ですよね。


続きをお待ちください。

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