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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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蒼氷の朱雀7

あれ、まだだった。

『アルベルト』はケヴィンの強い否定の言葉に対し、謝罪の言葉を述べようと口を開く。


「いや、これは失礼した。お主の実力があまりにも現実離れをしておっての、もしや英雄の類では無いかと思ったのでな……しかしそうなると……」


アルベルトは長い髭を触りながら考えに耽る。


「俺が種族の限界を超えている事なんて自分でも理解している、それが唯一の誇りだからな。口で言ったって伝わらねぇよ、俺が今までどれだけの事をしてきたかなんて」


目の前の青年の目は力強い意思が籠っているのが分かる。


伊達に100年以上生きて来た訳では無い。


相手の目を見ればその者がどれだけの修羅場を潜ってきたのかアルベルトには分かるつもりだった。


だが彼の目は一体なんなのだ。


目が死んでいる等と簡単な言葉で片付けていい物では無い。


まるでこの世の全てに絶望しているかのような、その上で必死に生き抜く事だけは諦めていない様な。


一体どれだけの経験を積めば、この様な目と成るのだろうか。


アルベルトにとってケヴィンのそれは、今まで一度も見た事の無い物だった。


故に、悲しい。


彼はどう見ても20も超えていない、成人したばかりな程の歳であろう。


その頃の年代等、少年と呼んで何の差支えも無い。


たったそれだけの短い人生しか歩んでいないにも関わらず、そんな目をしなければならない彼の人生を強く悲観した。


人生の楽しみ方等何も分からないだろう。


戦いでしか己を表現出来ないのだろう。


本当の意味での、生きる意味と言う物を見出してないだろう。


それではあまりにも彼が……『可哀想』だ。


「それでも聞かせてはくれまいか? 強さの理由等私らには理解する事が出来ないのは分かった。じゃが、その程度の実力を持っていたとすれば、恐らく表舞台に出てくる事もあったじゃろう。じゃがお主の様な存在は耳にした事が無いのでな、今までお主は……どの様に暮らしてきたんじゃ?」


アルベルトからしたら、彼が秘めている実力は英雄クラスと言っても過言では無いと思っている。


自分が現役であったとしても、勝てる見込みが無い。


只の一試合……相手は彼に比べれば凡人だっただろう人物だが、しかしその時に使われた氷魔法の凄まじい事。


あれ程の魔力を瞬時に構築し、密度の高い魔法を作り上げる技術。


魔法を放出した事すら他へ感じさせない程の隠蔽能力。


行ったのはただの詠唱破棄だけでは無い、その一つの魔法の中には凡そ想像もできない、人類の魔法を超越した何かが確かに宿っているのを感じた。


実際、氷漬けにされたミリアルドの救助をする為に、多大な時間を要した。


氷が全く溶けなかったのだ。


ギルド支部に居たエルフを掻き集め、中でも炎魔法を得意とするエルフの最大威力の魔法でも、表面にうっすらと水滴を滴らせるだけであった。


その上その水滴は蒸発する事無く、エルフ達が魔力切れを起こせば途端にうっすらと溶けていた部分が再び凍り付く程の物。


運良くギルド本部からXランカー会議の為に召集されていた『炎帝』を呼び出して彼の力を借り、やっとの事で解除する事が出来た程である。


それ程のレベルに達している人物が何故表舞台に出て来ていないのか。


アルベルトは英雄クラスの人物を全て把握している。


英雄の素性を知る者は数少なく、英雄達の出身国であるそれぞれの国の王、ギルド月下無限天本部のギルドマスター、そして引退したギルドメンバーの中で、過去に多大な貢献を行ったアルベルトの様な現相談役等、ほんの一握りの人物達ばかりだ。


逆に言えば、それらの人物は重要なギルド員の素性を全て知る事が義務付けられている。


彼らが把握する事によってギルドの意向が決まる為に、それはとても大切な事なのである。


そんなアルベルトの認識の中に、ケヴィンは存在しない。


混血種の強者等、この日初めて見たのだ。


「俺達混血種が、昔は虐げられた存在なのは当たり前に知っているだろ?」


ケヴィンの言葉によってアルベルトは眉を顰める。


とても痛々しい過去だ。


自分に権力が無かった為に、遥か昔から続いていた混血廃止令の撤廃が出来ず、とても歯痒い思いをした事があった。


「あの条令が廃止されたのが、今から大体15年前だ。俺はその時『飼われて』いた奴隷商に、デスマウンテンへ捨てられたんだ。俺の事が相当憎かったんだろうな」


「……よく、生きておったの」


「運が良かったんだ。助けられたんだよ……当時の英雄、『竜騎士』にな」


アルベルトは彼の言葉に心底驚いた。


まさかこの少年から、あのエリル・エトワールの影が出てくるとは思わなかったのだ。


いや、そう言う事かとアルベルトは納得する。


「お主が……エリルが保護したと言っていた混血種だったか……」


「なんだジジィ、あいつの事知ってんのか?」


「無論じゃ」


当時の事である。


エリルが17年程前にこの世界に現れた時、彼の世話を焼いたのは他でも無いアルベルト自身であった。


ギルド員の中で、最もエリルと時を過ごしたのはアルベルトと言っても過言では無い。


彼の存在は非常に大きなものだった。


正に『正義』の塊。


確かに癖は強かったが、曲がった事が大っ嫌いで、一度こうと決めた事は何が何でも貫き通す性格をしていた。


そして彼の多大な功績の一つが、混血廃止令の撤廃。


彼の発言一言で、国の……いや世界の上層部の意見がコロリと変わった。


元々一部の、それこそアトランティスやジパングと言った国は混血廃止令に対して反対意見を持っていたのだが、何分大多数の国は賛成の姿勢だったのがいつまでも撤廃にならない原因であった。


それが英雄一人の活躍で変わる等とは全く情けないとも思ったが、それでも世界が良い方向へと流れゆくのなら何も言うまいと当時のアルベルトは思っていた。


アルベルトはその時期にギルドメンバーを引退、と同時にギルド相談役の席に付き、エリルと共に様々なギルド条約の改変に力を入れて行った。


その中の一つがXランクの設立で有り、14人の上位ランカーの選別だ。


現役の英雄達の中から、エリルとアルベルトが直接的に選りすぐりのメンバーを揃える事で、その存在感を世界へ認識させる事に成功した。


彼らが居る事で世界の平和は約束されていると言う意識を持たせるのが目的だ。


そんな当時のエリルから、混血種の子を保護したとアルベルトは聞いた事があった。


ギルドへは報告せずアルベルト本人にのみへの報告であった為、その混血種を何処かしらの施設へ預ける等と言った対処はしなかった。


エリルはその混血種を自らの手で育て上げると語っていたのだ。


気まぐれか何か思惑があっての事か、理由は分からないがアルベルトは特にそれを問題視しなかった。


そしてその数年後に……エリルは失踪した。


「あ奴の失踪に気づいた時は、既に半年の月日が流れていた。当時の私はそれの調査に忙しく、奴から報告を受けていたお主の存在をすっかり忘れておったのじゃ」


ケヴィンはそれに対し、仕方ないと笑っている。


「私は自ら槍聖宅へ訪れたが、確かな生活感は見られても、既にお主はそこに存在していなかった」


「そりゃそうだ、すれ違いで俺はデスマウンテンに戻ったからな」


「あそこは死地じゃ。今でさえも誰も近づこうとはしないが……成る程、見つからぬ訳じゃな」


誰も近づかない地方である為、そこに人が住んでいたとしても誰もが気づかない。


「今ならあそこは楽園だぞ、誰もこねぇからすげぇ静かだ。ま、魔物が『居なくなった』から実戦訓練は出来なくなったがな」


「……デスマウンテンに魔物が居なくなったじゃと……?」


「あぁ、俺が全部『食った』」


笑いながらとんでも無い発言をするケヴィンに、アルベルトは顎が外れる程に口を開けた。


驚愕なのだ。


エリル失踪から約10数年。


一体どれだけのペースで魔物を狩れば、たったそれだけの年月で……『たった一人』であの魔物の大巣窟を一掃出来ると言うのだ。


アルベルトは認識を誤っていたかも知れない。


英雄クラス等と易々と言っていい物では無い、その中でもかなり上位に組み込めるレベルを彼は所持している。


『オールガイアランキング』……つまりこの世の強者ランキングが大幅に塗り替えられる程に、非現実的な強さを彼は所持している事が予想される。


そしてアルベルトは気づいた。


これ程までの人物が何故表舞台に名前すら上がって来なかったのかと。


否、もう既に表舞台には出て来ているのだ。


そして既に確かな存在感を醸し出しているのだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


次の投稿をお待ちいただきます様、お願い申し上げます。

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