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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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竜騎士の実力

エリルの魔力が、凄まじい速度で全身に回って行くのを目にしたケヴィン。


今までに見た誰よりも早い、正に完璧な身体強化。


魔力の捻出速度は、あのレオンの隠し技を使った状況に近い。


そして彼はレオンが制御出来ていないそれを間違いなく制御しきっている。


炎帝が槍聖を超えた?


とんでもない。


このオールガイアランキング二位の竜騎士こそが……やはり『史上最強の英雄』だ。


勝てるのか?


最強に。


太刀打ち出来るのか?


かつての師に。


出来るかどうか、勝てるかどうかなんて関係無い。


ただただ自分の世界を守る。


自分がやりたい様にやる。


相手が理不尽な力で無理やり黙らせようとしてくるのなら……それに対する此方も理不尽な力をぶつけるだけだ。


ケヴィンは微塵の迷いも無く、全身に身体強化を施した。


突き出される槍を振り払うケヴィン。


このアダマンタイトと言う金属は『不砕』と呼ばれ、決して壊れる事のない金属とされている。


オールガイアには、このアダマンタイトを加工する技術が存在せず、彼の持つその槍はこの世に一つしかないアダマンタイト製の槍と言われている。


その武器に対向する為には、アダマンタイト含め『三大金属』と言われる金属から作られた武器で無ければ、忽ち使い物にならなくなってしまうと言う。


三大金属を使った武器はこの世に三つ。


エリルの持つ槍、アダマンタイト製、神槍グングニル。


シアンの持つ刀、ヒヒイロノカネ製、神刀天叢雲剣、別名草薙の剣。


そして最後がケヴィンの持つ剣、オリハルコン製、聖剣エクスカリバー。


この三つの金属はそれぞれ違った特徴を持つ金属だ。


オリハルコンは元々非常に硬い金属であり、人間が己の武器に行う魔力付与を使わなくても、ある程度はオリハルコン自体の硬度で戦い抜く事が出来る。


しかし、あくまである程度はと言う括りである為に、やはり魔力付与は行った方が確実とも言える。


魔力伝導率は優秀で少量の魔力量でも桁違いに硬度を上げる事が出来る素材が、このオリハルコンだった。


打って変わってヒヒイロノカネは、その金属事態は実はそれ程硬度は高く無い。


とは言った物のそれは他の二つの金属と比べればと言う話であり、ミスリルやガレオ灰鉄と同等以上の硬度は当然持っている。


そんなヒヒイロノカネが何故三大金属と呼ばれているかと言うと、オリハルコンを超える程の圧倒的な魔力伝導率だ。


ヒヒイロノカネは、魔力を込めれば込める程、限界無く硬度が増す。


魔力消費はそれに伴って大きい物となるが、最終的な硬度はオリハルコンよりも上とされている。


元々の硬度がミスリルに近いレベルである事から、もしかしたら三大金属の中で唯一加工が可能な素材なのかもしれないが、そもそもオールガイアにはそのヒヒイロノカネと言う金属は存在していないのだ。


エリル達の居た元の世界、地球と呼ばれる星にはその金属が存在している様だが、その地球でもヒヒイロノカネは非常に価値の高い物である為、現物は滅多にお目に掛かれない物とされていた。


そして最後がアダマンタイト。


この金属は不砕と言う名の元、決して壊れない。


恐らくアダマンタイト以上の硬度を誇る金属が無い為にそう言われる様になったのが、実際にその金属は魔力付与を行わなくとも世界一の硬度を誇っていた。


魔力付与を行わなくとも、と言うのには少々語弊がある。


実際には魔力付与が『必要無い』、しても全く『意味が無い』と言うのが正しい。


魔力付与を行ったとしても最高硬度がそれ以上に硬くなっているか等、誰にも判断が付かないからだ。


アダマンタイトは三大金属の中で唯一魔力付与を行わずに使える為、究極金属と呼ばれているのだ。


そしてその金属の武器を持つ最強の英雄を前にして、ケヴィンはオリハルコンの剣を持っていない状態で抵抗してしまっているのだ。


「なんや、俺が渡した剣は有らへんのかいな」


「あぁ、普段は使う必要がねぇからな。今頃は家で埃被ってる所だ」


「けっ、生意気やなガキンチョが」


エリルは凄まじい速度で槍捌きを見せるが、その刺突をケヴィンは全て回避する。


ケヴィンが回避した先では、槍の先端から飛び出る風圧が、周囲の大木に次々と穴を開けていた。


直撃を受ければ、ケヴィンの体があの様に成っている事だろう。


あくまで身を固める事をしなければの話だが。


だが何方にせよ、こんな速度ではケヴィンにはエリルの槍は当たらない。


連突から横凪を加え始めたエリル。


横方向への回避だけで無く、頭を下げ、仰け反り、足を上げ、側宙するケヴィン。


そして側宙の最中に、ケヴィンはエリルの側頭部を蹴りつけた。


怯んだエリルに追撃し、腹部を蹴り飛ばす。


身体強化でしっかりと腹部を強化された為に、強い反動を感じるケヴィンだが、それでもエリルは威力が防ぎ切れず、腹部を抑えた状況で地面を後方へ滑る。


「この程度な訳ないだろ、エリル」


既に刀聖一派の英雄では、誰一人敵う事ないレベルの実力を見せているエリル。


あの日手合わせした、004と名乗る魔人といい勝負と言った所だろうか。


だが、彼はまだ実力を隠している。


「剣道三倍段っちゅう言葉をしってるか?」


「……真剣を持つ相手に素手で勝つには、三倍の格闘技の段数が居るって話か?」


「それや。俺が武器を持ってんのに、あんたが持ってないのはちぃと不公平やないかと思ってな」


「テメェが持ってんのは槍だろ。刀じゃねぇ」


「同じ事や。今のままやったら俺も本気を出す気にはなれへんねん」


「それなら……これで満足か?」


ケヴィンは左手を正面に翳す。


彼の手の平に一瞬で冷気が集まったかと思えば、次の瞬間氷で作り上げられた長剣が出来上がった。


「へっ……えぇやないか」


エリルは笑みを浮かべると共に、もう一度此方へ踏み込んできた。


今度は突き立てられた槍を、剣で防ぐケヴィン。


エリルは槍を回転させながら、上下左右縦横無尽に槍を薙いで来る。


避けられる物は避け、防げる物は防ぐ。


超人的な速さで攻防を続ける二人。


場所を移しておいて心底良かっただろう。


人通りの有る街中でこの二人が戦えば、彼等が武器を重ねる度、避ける度に発生する衝撃波や真空刃によって下手をすれば死人が出てしまう事となった筈だ。


ケヴィンはエリルの頭部へ剣を振るうと同時に、地面からアースグレイブを発生させる。


ケヴィンの剣を避ける為に前かがみと成って回避するが、その瞬間顔面にアースグレイブの直撃を受けるエリル。


仰け反った彼の顔面へ、剣の軌道方向へ体を回転させて踵落としを叩き込むケヴィン。


地面へと仰向け倒れ込んでいくエリルに、再び剣を振るおうとするが、地面へ片手を着いたエリルにそれを回避される。


ダメージ等無かったかの様に再び槍を突き出すエリル。


横方向に回避しながら、彼の懐へ潜り込んで脇腹に右手を忍ばせるケヴィン。


前のめりとなってがら空きになったエリルの腹部へ、爆発魔法を叩き込む。


直撃を受けたエリルは体を宙に浮かせる。


その瞬間にケヴィンはロックブレイクを横から叩きつけ、エリルを弾き飛ばす。


更に彼が吹き飛んだ先に、容赦無くメテオストリームを叩きつけた。


巨大な岩の一つがエリルに直撃し、地面に押しつぶされるエリルが見えた。


更にその岩に積み重なる様に次々と岩が降下し、大きな岩山が出来上がる。


並の人物ならこれで終わりだろう。


英雄であろうと瀕死状態には追い込めている筈だ。


しかし相手はあの竜騎士。


この程度ではまず倒せていない。


それを証明する様に、積み重なった岩が徐々に振動を始め、弾け飛ぶ様に飛散すると、右手を大きく掲げたエリルが肩で息をしながら立ち上がって居た。


「……下らねぇな。いつまでそんな『ふざけた戦い方』をしている。それとも、俺の予想以上にテメェは弱くなってしまったのか?」


ケヴィンは勿論まだまだ本気は出していない。


相手がそうしていないのだから、此方も出していないまでだ。


仮に彼が既に全力で戦っているのだとすれば、もうこの戦いは決まったも同然の物。


しかしそれはまず有り得ない。


何せ、例え彼が全力で戦っていたとしても、彼はまだあの『龍魂』を使って居ないのだから。

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