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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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エドワード派閥の反撃

いよいよ王位争奪戦本編でしょうか!

ケヴィンは注目の的となる為に、ワザと大きな音を立てながら扉を開いた。


風魔法を利用し、勢いよく開かずとも玉座の間に音がよく響き渡る様に仕向ける。


元々足音も同じ要領で皆に聞こえる様にしていた為、それも相まってやはり玉座の間に集まる全ての人々の視線はこちらに向かっていた。


極力目立たない様に端に寄っていたケヴィン。


先頭の中央を陣取るのは、当たり前に『エドワード』である。


そうなれば全国民、そしてミリアルドと彼率いるミリアルド派閥の貴族達も、皆エドワードの姿を同時に確認する事となる。


「な……なぁにぃっ!!?」


一番最初に驚きの声を上げたのは、何故か中央でポツンと一人だけ立っているミリアルドであった。


凡そ、自分が国王に成れると信じ込み、退位式の進行役でも買って出たのだろう。


彼の驚き等無視し、エドワード一行は行進を始める。


最初から綺麗に整列し、彼の直ぐ後ろをケヴィン、デュラン、レオン、エマの四人が歩き、彼等の後ろをエドワード派閥の貴族が立ち並んでいる。


「エドワード様……?」


「……エドワード様だ……」


「やはり死んだのは嘘だったのだ!! エドワード様は生きておられた!!」


「エドワード殿下万歳!」


「エドワード様!!」


「万歳!」


「万歳!!」


エドワードへの賛美は凄まじいものだった。


国民の声が、玉座の間を揺れ動かさんばかりに鳴り響く。


ミリアルドだけでは無く、ミリアルド派閥達の表情も面白い物だ。


夢でも見ているかの様に、血走った眼でエドワードを凝視している。


当然だろう、死んだと信じていた人物が、目の前に颯爽と現れたのだから。


エドワードの死を発表してから、やはり死んではいませんでしたと言うこの状況。


本来なら避けるべき行為であった。


その様な話本来なら冗談では済まされない事であり、悪戯に国民の感情を刺激する様な行為となる事から『普通』であれば実行しないだろう。


だがそれはあくまで国民達がエドワードの死を漸く『受け入れ始めた』後に行った場合だ。


今この状況では、エドワードの死が嘘であって欲しいと言う思いに駆られる者達ばかりのこのタイミングであれば……人々の感情は全く逆の想いが溢れるのだ。


やはりエドワードは無事であったと、ミリアルドの発言は嘘なのだと。


そう、国王の言葉では無く、ミリアルドの口から発せられた事においても、まんまとこちら側の思うつぼだった訳だ。


会場は拍手喝采。


エドワード達の行進を止める者は誰一人居ない。


あまりもの威圧感にミリアルドが腰を抜かし、後退しながら尻もちを着くほどだった。


そんなミリアルドを後目に、エドワード一行は王の前へと辿り着く。


エドワードが足を止めた時、後続するケヴィン達も同時に足を止める。


鳴り止まない拍手を一瞥したエドワードは、ゆっくりと右手を上げた。


その瞬間、拍手はピタリと鳴り止む。


そしてエドワード達一同は右手を握りしめ、右肘を上げながら右の拳を左胸に添える。


そのまま跪き、国王の前にひれ伏す。


一連の流れを、エドワード派閥一同は皆同時に行った。


一切のばらつき無く、一斉にだ。


こっそり王の表情を覗いたケヴィンの瞳には、満足そうに笑う彼の姿が見えた。


「よい」


王の言葉を聞い一同は立ち上がり、貴族達は貴族席へと向かって行った。


玉座の前には、身を正しながら起立するエドワードと、未だ尻もちを付いているエドワード。


そしてエドワードの指示の元、十歩程下がった位置に、ケヴィン達四人が整列している。


「父上、大事な式に遅れて申し訳ありません。エドワード、只今参りました」


「よい」


国王から許しが得られた後、エドワードはミリアルドへ視線を向ける。


「兄上、いくら王族であろうと玉座の前でその様なみっともない格好は許されません。直ぐに立ち上がりなさい」


「……お……お前なんで……何で生きてるんだ!?」


「……立ち上がれと言っている」


「くっ!!」


再び威圧されたミリアルド。


弟に委縮してしまったのか、体をビクリと震わせてから立ち上がった。


ミリアルドが立ち上がった事を確認した後、エドワードは再び王へ視線を向けた。


「父上、この度の退位式及び戴冠式。何方に王位を譲るかは父上の中では決まっていると思われます。しかし、もう少しばかり、私達兄弟どちらが王位に相応しいか見定める時間を与えては頂けませんか」


「構わぬ、続けるがよい」


「有難く……」


エドワードは綺麗な言葉でさぞそれらしい言葉を並べているが、実際の所父親に対して目の前で『兄弟喧嘩』をするから見守ってくれと言っている様なものである。


それを理解しているだろう国王も即了承をした。


ここからは、父親公認の壮大な兄弟喧嘩が始まるのだ。


「さて兄上、何故僕が『兄上の仕込んだ毒で死んでいないか』、と言う質問でしたね?」


「んなっ! んなっ! んなっ! 何を言っておる!?」


慌てふためくミリアルド。


そんな態度じゃ認めている物だと気付いて居ないのだろう。


「答えは簡単です。我が親友の活躍のお陰で、私は毒から免れる事が出来ました。その親友とは……ここにいるケヴィン・ベンティスカですよ」


「そんな……いや、所で何故そいつらはここに居る!? 神聖な式典の最中だぞ!!」


「彼等は私のボディーガードですよ。兄上が画策して尽く失敗した暗殺への対策です。覚えて無いんですか?」


「ななななな何の事か……ささささささっぱりだ! だとしてもだな!? この場所は貴族以外立ち入る事は許されない! こ奴らの席はあそこの一般人席だろ!?」


何とも色々論点を変えるミリアルド。


狼狽えっぷりが半端じゃない。


「この者達はちゃんと『爵位』を持っておいでですよ? ベンティスカ騎士爵、エルツィオーネ騎士爵、メギストン騎士爵、そしてローゼンクランツ騎士爵です。私が父上に頼み、確かな功績を残した事で爵位を与えて頂きました」


「あがががっ!」


目を見開き、信じられないと言った表情でこちらと父親を交互に見るミリアルド。


父が権限を与えたと言う事が信じられないのだろう。


特に彼の視線はケヴィンに向けられるのだが、ケヴィンは薄ら笑いを見せミリアルドを小馬鹿にする。


ケヴィンは、あれ程嫌っていた爵位をまさか自分が受け取る事になるとは思ってもみなかった。


一世代限りの騎士爵だがそれでも立派な爵位であり、細かく分ければ貴族では無いのだがそれでも一般人より位は上になる。


玉座の間でエドワードを守るには、この様な立場になるしか無かった事もあり、ケヴィンは渋々それを受け入れる事としたのだった。


「さて、もう一度言いますが、兄上の画策は尽く失敗しました。潔くこのまま王位を破棄しては頂けませんか?」


「……何を言っておるのだ! 王位を譲り受けるのは我しか有り得ん! お前こそ次期国王に向かって頓珍漢な事を言うで無い!」


「次期国王? 寝言は寝てから言ってください兄上。私は今、最大限の譲歩をして王位を破棄しろと言ったのです。でなければこの後、私と散々争った後ボロボロに負けて無様に跪く事になるのですよ?」


エドワードは脅している訳では無い。


本気でミリアルドがこのまま潔く王位を辞退すれば、今までの事は水に流しても良いとすら思っている。


勿論その後反逆を阻止する為に色々手段は取る事になるが。


自分がされた事を考えれば相応の罪に問うべきなのだが……エドワードはそれでもミリアルドの事を自分の兄だから許すと言う旨を発言していた。


そこだけは砂糖もびっくりな程に甘い奴だなとケヴィンは思ったのだった。


「ふん、その言葉そのままお前に返してやる。数々の無礼を謝るのは今の内だぞ?」


「……仕方ありませんね。では私も容赦無く兄上と戦わせて貰いますよ」


やってやれエド。


と、ケヴィン達はひとまずエドワードを見守る事にする。


いつでも助け船を出せる状況にした上で、成り行きをエドワードに任せる。


まずはエドワードのお手並み拝見と言った所だろうか。

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