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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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死んだふり作戦

「これだぁ!! でぇぇえええ!? また『ババ』が来た!? 何で俺ばっかり!!」


「ふむ、私は『ジジ』じゃからの、『ババ』は来ない様になっておるんじゃ」


「お前は糞ジジィだろうが」


「もう少し言葉に気を付けたらどうかしらケヴィン? 一応目上の人なのよ?」


「い……一応とな……?」


と、何やらケヴィン宅で皆が『トランプ』と言う玩具を使ったゲームで盛り上がっていた。


先日、エドワード派閥の交流会で起きた事件で、デュランが発案した『死んだふり作戦』を実行して数日が経過した頃、死んだ筈の一同は皆『ケヴィン宅』を隠れ蓑として使っていた。


デュランの作戦の詳細は、エドワードとその友人達が交流会で死んだと言う噂を流すと言う物。


あの会場に居た全員が信頼出来る者達と言い切ったエドワードの言葉を信じ、皆で口裏を合わせて貴族達の間で死んだと言う情報を流して貰った。


勿論ミリアルド派閥に属する者達にもしっかりと伝わる様にだ。


真実を知る者はあの会場に居た者達のみ。


しっかりとした口裏合わせを行い、国王さえも巻き込みその噂を広めた結果、やはりただの馬鹿なのかミリアルドは学園に姿を現す様になったと言う。


その後デュランの作戦通り、件のメイドの家族も無事に解放された。


救い出した家族に話しを聞いた所、監禁されている間はずっと目隠しをされていた為犯人の顔は見ていないと言う。


ここまでくれば犯人は間違いなくミリアルドなのだが、残念な事に監禁されている間はミリアルドの『声』もその家族は聞いていなかった。


証拠はほぼ無いに等しいが、しかし見事に此方の情報に踊らされふらふらと学園に出戻ってきたミリアルドの姿を想像すると、なんとも愚かさを感じるものだ。


彼は二週間にも及ぶ失踪の言い訳を、『古い知人と会っていた』と言う事にしたらしい。


彼に古い知人等存在する訳無く、恐らく何かしら裏の有る存在がミリアルドを匿っていたのだろうと予想する。


そのミリアルドを匿っていた人物象に対し、デュランは『少々悪知恵は働くが詰めが甘い馬鹿』と判断をした。


エドワード死亡の噂を流した次の日にミリアルドが姿を現した事について、大した情報の裏を取らずに自分達の作戦が成功したと信じ込むタイプの自信家だとも語っていた。


しかし少々の悪知恵が働くと言うのは事実で、一切の証拠を掴ませないのは中々の手腕である。


裏社会の人間の可能性が高く、恐らく『英雄』の関与が匂う事件だが、その件についてはデュランとシアンが先導して探って居る状況だった。


エドワード程の人物が死んだともなれば、アトランティス国民や他国の重鎮達が何かしらのアクションを起こすだろうが、そこは国王に相談の元、上手く情報操作しアトランティス国内の貴族のみの間で話を留めて置く事が命令された。


エドワードの若くしての死は、必ず国民へ深い悲しみを負わせる。


世界のリーダーと言っても過言では無い立場にあるアトランティス国としては、その様な凶報をおいそれと他国へ報告する訳にも行かない。


今はエドワードを大切に保全しており、時が来たら盛大な葬式と共に世界へ発表する為、決して外部へ情報を漏らさぬ様にとの指令が国王から下された。


アトランティス国内の貴族は、律儀のその指令を守っている様だ。


勿論国王自体はエドワードが生きていると知っている。


そもそもこの作戦は国王の協力無しでは成功し得ない物なのだから。


エドワードの暗殺を企てたミリアルド派閥に大層腹を立てている様子では有るが、ここでもまた証拠が掴めていない事が悔やまれる。


国王にとって息子達の間で暗殺未遂が起こる等大変辛い状況だが、出来るだけいつもと変わらない立ち振る舞いを心掛けてもらっていた。


「だぁぁぁあ!! また負けたぁ!!」


「お前ババが取られそうな時分かりやす過ぎるんだよ」


「凄く嬉しそうな顔をしているものね」


「逆に他のカード取ろうとすると死にそうな顔をしておるぞえ?」


どうやら、トランプゲームはレオンのぼろ負けの様だ。


エドワードの暗殺が成功したと思っている相手方は、それ以降の干渉をエドワード派閥に行ってこなかった。


メイドの家族も安全が保障されている。


唯一学園長とギルド相談役の立場にあるアルベルトの不在のみが、少々世間の目を引いてしまう状況になっているだろうか。


今の所それ自体もさほど問題にはなって居ない様子ではあるが。


「只今戻りました」


『ババ抜き』と言うゲームをしていた四人の元へ、エドワードが訪れる。


ケヴィンが以前使用していた茶色いロープを着込み、外出していた様だ。


「あぁ、おかえり。エドワード、あんまり頻繁に外出すんなよ? お前が死んでないってバレたら元も子もねぇからな」


「はい、大丈夫ですよ。このケヴィンのローブが有れば誰も僕だって気づきません」


「何か匂いそうだものね。そこまでボロボロだとまさか王子が着ているなんて誰も思わないでしょうね」


「臭くねぇよ。それにボロボロでも実用性があるならそれでいいだろ」


基本的にケヴィン達はケヴィン宅で待機しているのだが、それでもやはりたまには外出している様だ。


その場合にはギルド支部『DOLLS』への転移魔法陣をケヴィン宅に設置し、そこを経由して出入りを行っていた。


ケヴィン宅の地下施設にDOLLS直通の転移魔法陣を作ったのである。


それを利用して何故かエドワードはほぼ毎日外出している。


状況が不利に成らない事なら何をしてもいいが、そんな毎日何をやっているのだろうか。


「それにしてもあのギルド支部DOLLSの……『メイファ』って子だったかしら? やたらと仲がいいのね? ケヴィン」


「まぁ普通のギルド員とギルドメンバーの関係じゃねぇからな」


「ちょっと気になる言い方ね。どういう意味か教えて貰えるかしら?」


何故か、少し怒り気味のエマ。


腕を組みながら徐々にケヴィンとの距離を詰め始める。


「いやだからそう言う事だろ、お前らも心当たりが有るだろうに」


「何よ、男女の関係だとでも言うの?」


「どんな関係だよそりゃ」


ケヴィンは要するに専属ギルド員の事を言っているのだが、エドワードが居る為詳しくは話せないでいた。


ニュアンスで感じ取って欲しいと思うケヴィンだが、何故かエマはあらぬ方向へとそれを取ってしまう。


別段、この際エドワードには自分達が二つ名持ちで有る事を明かしても構わないと思うのだが、もう少し状況が落ち着いてからと言う気持ちが有るのと、やはり国王に即位してから知ると言うのが通例らしく、アルベルトにも口止めされている為言うに言えない状況にあるのだ。

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