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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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決着、そして……

レオンも強かったよね?

「はぁ……はぁ……あーぁ、全然勝てなかったなぁ……」


悔しそうにレオンが呟いた。


「まぁ及第点ならやっても良い、一瞬見失ったのは事実だからな」


ケヴィンはそう言うと、満足そうに笑みを浮かべながら彼から一度手を放す。


「立てるか?」


言いながら今度は彼を立たせようと、レオンに手を差し伸べる。


レオンはうつぶせ状態からケヴィンの手を取ろうとするが、途中で力尽きた様に手が地面へと落ちる。


「……無理っぽい」


「だろうな」


満身創痍と言った状態だ。


外見からは判断出来ないが、彼の体の内部は今頃ズタボロだろう。


ケヴィンはレオンに何も行動させない様に押さえつけただけで、それ以外は彼に対し何もしていない。


では何故レオンは起き上がるのもままならない程のダメージを受けているのか。


それは彼が先程行使していた身体強化の影響が理由だった。


人間が体に込められる魔力量は、その人物の身体能力によって大きく異なる。


こと英雄においては、多大な恩恵を与えられている為に、その限界値は計り知れない物だ。


と言うよりもその計り知れない限界値の影響で、基本的にレオンもデュランもフィーネも、さらにはシアンでさえも己の限界値まで体に魔力を込める事は出来ていない。


マナの核から魔力を抽出する速度を上げない限り、限界まで到達する事が出来ないのだ。


レオン達が身体強化を発動する際に、魔力を込めれる限界値が10だったとしよう。


それに対し、身体強化に対して彼等が一度に出力できる魔力量は8程の量となる。


つまりレオン達の身体強化は、簡単に言えば未だ8割の強さしか出せて居ないと言う状態にあると言う事だ。


これがケヴィンの言う『途中経過』の言葉の裏付けだ。


勿論この魔力の抽出速度も鍛錬する事によって向上させる事が出来る。


ケヴィンの限界値がレオン達のそれと比べ、仮に100だとすれば抽出速度は100を優に超える程に鍛えている。


これは鍛錬の賜物だが、ケヴィン本人からすれば肉体の限界値が抽出速度に追いついて無い事にジレンマを感じているのも事実だ。


ただ己の限界値を超える量を抽出出来るからと言って、限界以上の魔力量を体へ込める事はしない。


そこまでする相手が居ないと言う事もあるが、それ以上に限界以上の魔力行使は体の『崩壊』を招いてしまうからだ。


人間が身体強化を行う際に、自分の体を魔力の器にする。


風船で例えるならば、限界以上に空気をため込めば破裂するだろう。


原理はそれと同じである。


排出口の無い体の中へ限界以上の魔力をため込めば体が崩壊する。


レオンは今正にその状態にあった。


何せ『10の器』に対し『20の魔力』を抽出していたのだから、体が崩壊するのは当然の事だ。


あのまま行使し続けていれば、四肢が弾け飛んでもおかしく無かった筈だ。


しかし何故、魔力の基本抽出速度が8程度しか無いレオンが、一瞬にして20まで抽出する事が出来たのか。


その理由が、先程の彼が醸し出していた光属性の匂いと、体の発光にある。


「大体予想は付いてるが、お前さっき何をした?」


と、ケヴィンはレオンに確認する様に尋ねる。


もう勝負は決まったも同然である為、彼に治癒魔法を施す。


ゆっくりとレオンは立ち上がり、後頭部を掻きながら説明を始める。


「えっと……難しい原理は説明出来無いけど、マナの核に『光属性』を付与してみた」


「はっ、やっぱりな」


ケヴィンが何となく当たりを付けていた予想が当たった。


マナの核自体に光属性の付与。


一見頓珍漢な行為に見えるが、その効果は予想が付く。


レオンが行ったこの行為による恩恵はケヴィン自身その現象を上手く説明出来る訳では無いが、マナの核に光属性を付与した事で魔力の捻出速度の向上に成功したと言う事だ。


先程、フィーネが弓矢を放つ際にエマの魔法から再現した雷属性を付与した。


その結果、正に彼女の矢が雷の速度で飛び交うと言う現象が起きた。


その現象が魔力抽出速度に対し起こったと言えば分かりやすいだろうか。


マナの核から光の速度で魔力が抽出され、それが一瞬にして全身を駆け巡った。


魔力自体に光属性が付与されている為に、レオンの全身が発光した様に見えたのだ。


結果、10の器に対し20の魔力量が注がれた訳だ。


成程、目撃した今となれば原理は分かるが、今まで考えもしなかった行為だ。


「良くそんな出鱈目な方法思いついたな」


「なんか……以前やってみたら出来たんだ……」


全く説得力の無い返答と共に笑顔を見せるレオン。


単細胞を具現化した存在が、その能天気な頭で考えだした結果がこの現象か。


馬鹿と天才はなんとやらとはこの事かとケヴィンは思う。


「デュランは知ってたのか?」


と、此方へと向かって来たデュランへ質問を投げかけるケヴィン。


「あぁ……まだまだ完成度が低いから実践向きでは無いが、……最初に見た時は度肝を抜かれたな……」


「そうね、以前は目の前で一瞬にして消えたかと思ったら、次に現れた瞬間に右腕が弾け飛んだものね」


「何だ? エマも見た事あったのか」


「……それを全くの未完成の状態で、お前との模擬戦の時にレオンが使おうとしたが……流石に状況が状況なんであの時は止めさせて貰ったがな……」


「正解だな、下手すりゃあの時もどっか弾け飛びかねなかったろうな」


マナの核に光属性を付与。


原理としては簡単な物だが、この行為は当然出来る人物は限られる。


人体や物質に直接魔力を付与する事が出来る人間の力と、魔力に属性を持たせる事が出来るエルフの力の両方を持たなければならない。


武器への属性付与と全く同じ原理で有る為、当然この場で出来る存在はケヴィンとレオンの二人に限られた。


試しにケヴィンは自分のマナの核へ光属性を付与させ、抽出する魔力を体の中で巡らせた。


レオンの様に全身の発光では無く、一部一部へ魔力を移動させる事によって、小指から薬指、親指に至るまで順番に魔力を送り込んでみた。


当然順番に発光するのだが、確かにその捻出速度には目を張る物が有った。


今まで感じていた捻出速度の限界速度を、一瞬にして塗り替えてしまったのだから。


元々の一瞬の魔力捻出速度がレオンとケヴィンでは違う為に、向上する速度も差異が出る。


レオンがこの技術で魔力捻出速度を向上したとしても、ケヴィンはそれを素の状態で簡単に越える事が出来るが、そんなケヴィンでもこの技術は確かな効果が有った様だ。

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