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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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フィーネ・アヴニール

ケヴィンは女の子だからと言って手は抜きません

ケヴィンは再びニヤリと笑みを浮かべると。


「いいぜ、お前のタイミングでいい……全力で来い」


その言葉を受け取っただろうフィーネは、一度に数本の矢を放つと共に此方へと駆けだした。


飛んできた矢それぞれに対しストーンバレットを放ち、それらを叩き落とす。


フィーネの足元にアースグレイブを放ち、彼女が上空へと回避した事を確認すると上空からライトニングブラスターを発生させる。


彼女は弓矢を雷に対し放つ事で雷の進路を反らすと、間髪入れず再現でライトニングブラスターを此方に放つ。


ケヴィン頭上にクレイウォールを発生させ雷の直撃を免れると同時に、フィーネの左右へ彼女を挟み込む様にメテオストリームとダイヤモンドダストを発動する。


フィーネは難なくそれぞれに再現で発動した同魔法をぶつけそれらを相殺するが、相殺によって発生した衝撃破に体を押され、ケヴィンの方向へと体が吹き飛ばされる。


ケヴィンは既に展開していたサンダーブレードをそのまま左手で鷲掴みにすると、それを横凪にしフィーネへと振るった。


フィーネはサンダーブレードのダメージを覚悟していたのか、歯を食いしばりながら雷の刃の直撃を受け、感電した事で苦痛の表情を浮かべながらも、此方に幾重の矢を放つと同時にその矢の全てにサンダーブレードの構造を分解して雷属性として一本一本付与していた。


ケヴィンはその行動を一瞥した後、転移魔法を発動する。


対象は自分でも無く、ましてや先程の様に矢でも無く『フィーネ本人』に対してだった。


本来転移魔法は自分自身が転移する為の行使ならば、特に何の苦労も無く転移を行う事が出来る。


あくまで転移魔法が扱えると言う前提の話では有るのだが、しかし対象が自分以外の、それも物体では無く他人だった場合、基本的に相手が今現在置かれて居る状況によって転移魔法を行使する難易度に差異が発生する。


その理由の一つは、他人から転移魔法を掛けられた際に、それを受けた側は『拒否』する事が出来るからである。


でなければ転移魔法を扱える者からすれば、転移魔法を好き勝手に相手に掛ける事が出来、受けた側は意図しない行動を強いられる事となるだろう。


掛けられた転移魔法に対し、干渉してきた魔力を感知しそれを受け入れるか拒否するかで、自分の転移の発動の有無が決まる。


現代人は転移魔法の感知に関しては、ほぼ無意識レベルで反応する事が出来る。


『転移魔法陣』が世界中に設置される程身近な存在で有る為、特にギルドメンバーであれば転移魔法の感知自体は容易な物なのだ。


だからこそ、転移魔法に対して拒否をする感覚も承認する感覚も、ほぼ無意識の内に育まれている。


拒否をすれば転移魔法は発動せず、承認すれば発動者の任意の場所へ転移する事となる。


これが転移魔法に関する基本的な行使方法なのだが、状況によって承認及び拒否の有無を省略し、強制的に相手を転移させる事が可能な場合がある。


それは対象が一種の錯乱状態の様に、正常な判断が出来無い程の精神状態が乱れている時。


例を挙げるとすれば、ジパング大森林で突然上級モンスターに囲まれてしまった生徒達だろう。


レオンに守られていたあの数人の生徒は、承認する事も拒否する事も無くケヴィンに強制転移させられた。


そしてもう一つは瀕死的な状況。


自ら行動出来ない程の重症を負った場合等の状況だ。


こちらの例は、学園の中庭でフロールへ執拗な虐めを行って居た貴族に対し、ケヴィンが切れてしまった件の時だろう。


あの生徒達二人も、ケヴィンへあっさりと強制転移させられた。


この二つの強制転移は、どちらも『魔力抵抗が行えない状況』と言う条件下に付随する。


精神状態が不安定で降り注いだ魔力に対し抵抗が出来ない。


身体状況が著しくなく、魔力が練り出せない。


そう言った状況では、転移魔法を掛けられた際に拒否する為の魔力抵抗が行えない状況となる。


その為、ほぼ強制的に転移魔法は発動され、行使した者の想いのままの転移をさせられる事がある。


つまり転移魔法の拒否と言う行為は、簡単に言えば魔力抵抗を行っている状況なのだ。


今現在、フィーネはケヴィンから転移魔法を発動させられた。


傍から見れば、それはフィーネが転移を受け入れた状況に見えるだろう。


しかし実際、フィーネは恐らくその行使に対し抵抗していただろう。


戦闘中に相手から意図しない転移魔法を掛けられれば、誰もが受け入れる筈が無い。


だがフィーネは転移してしまった。


その結果自分の放った矢の進行先へ転移させられてしまい、突然の事で判断が間に合わなかったのか、全ての矢が彼女の背中へ直撃した。


鏃が抜かれている為、英雄としての肉体が彼女を守り体へ突き刺さりはしなかった物の、その衝撃はとてつもなく彼女は再びケヴィンの方向へと吹き飛ぶ。


そしてそれを当然予想していたケヴィンは、目前に吹き飛んできたフィーネの腹部へテンペストヴォルテクスをお見舞いし逆方向へと跳ね返した。


転移魔法は魔力抵抗によって拒否出来る。


それが世間の一般的認識である。


当然、英雄が一般人に対して転移魔法を行使しても、結果は同じである。


しかしケヴィンは知っていた。


転移魔法の行使によって、発動した者とそれを受ける者との間に計り知れない程の魔力差が存在すれば、魔力抵抗の壁を崩す事が可能である事を。


つまり、尋常じゃない魔力量と質を兼ね備える者が存在すれば、どんな状況でも対象を強制転移させる事が可能だと言う事なのだ。


ケヴィンはそれをフィーネに行使した。


転移魔法を魔力抵抗によって拒否出来ると言う事実が一般的な世の中で、『英雄相手』に計り知れない程の魔力差を発揮してフィーネを強制的に転移させたのだ。


フィーネが動揺するのも当然の事だろう。


英雄が一般人に対して転移魔法を行使しても当然の如く抵抗されるにも関わらず、『英雄』である筈の自分が転移魔法に抵抗出来なかったのだから。


フィーネは大きく吹き飛ばされたが、先程受けた転移魔法を再現してケヴィンの前へと戻ってきた。


腹部を抑えながら、荒く呼吸をしている。


てっきりテンペストヴォルテクスの方を再現用に『ストック』し、戦闘を有利に運ぶかと思って居たが彼女は転移魔法の方を選んだ様だ。


彼女の異能力である再現は、確かにどんな能力でも魔力が関与している物で有れば全て再現が可能である。


しかし再現する能力や魔法は、一度きりの使い捨てである為一度使った魔法等は再度目にしない限り再び発動する事は出来ない。


更にストック形式では有るのだが、再現すると決めた能力や魔法は一つしかストックが出来ない。


つまりフィーネの異能力は、複数の魔法を一度に目にした時再現する魔法を取捨選択する必要が有った。


先の様に転移魔法を受けた後、転移魔法を再現用にストックしたのであればその後受けたテンペストヴォルテクスを再現する為には転移魔法のストックを破棄する必要が有る。


その前にケヴィンが彼女に差し向けたメテオストリームとダイヤモンドダストの同時行使に対し、彼女がそれぞれに同じ魔法を再現出来たのは、ダイヤモンドダストを再現した後にすぐさまメテオストリームを再現したと言う事なのだ。


この場合はダイヤモンドダストを一度目にした後それを再現、そしてその後まだ消滅せず存在しているメテオストリームを目にし、それを再現する事によって同時行使が可能となっていた。


今回はテンペストヴォルテクスを受けた時には既に転移魔法の発動は完了し、その存在は消滅していた。


その上ケヴィンはテンペストヴォルテクスを彼女にぶつけた瞬間にそれを直ぐに消滅させた為、彼女が転移を再現した際にはテンペストヴォルテクスをストックする暇が無かったのだ。


理不尽な能力ばかりの異能力だが、それぞれの能力には当たり前に一長一短が存在する。


エマの無限魔力や、レオンの自然魔法の異能力は欠点が無い様に見えるがそれはそれで使用者の実力が物を言う仕様にも成っている。


シアンの絶対切断やデュランの魔封斬は欠点が顕著に表れている。


実際先の戦いでデュランは、ケヴィンが発動する魔法に対し殆ど魔封斬を行使出来ていなかったのだから。

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