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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ケヴィン流の戦闘術3

だとすれば一般人枠の、その中でも弱小種族である混血種のケヴィンはどうなるだろう。


今では英雄をも超える実力を持っている彼だが、その実力は数多くの修羅場を潜りぬけて来た結果培われた物だ。


その修羅場の数々は、この歳にして一般人の一生分以上は経験しているだろう。


間違い無く、目の前のアルベルトよりも多くの修羅場を経験してきている。


そんな彼が、アルベルトが培ってきた経験と同等の物を持っていても何の不思議でも無い。


それどころかその無意識の反応でさえコントロールし、完全に自分の支配下に置いてしまっているのだ。


だからこそ、危険が迫った時のアルベルトの行動が手に取る様に分かってしまった。


アルベルトがどんな予想外な行動を取ろうと、ケヴィンにとっては全てが想定の範囲内の出来事となってしまうのだ。


左足がアルベルトを蹴り飛ばし、爆風の勢いで地面に辿り着く直前。


空中に滞在してるケヴィンの元へエドワードがたどり着く。


既に攻撃の体勢に入っており、突き出されたレイピアがケヴィンに向けられる。


その瞬間ケヴィンは再び振り下ろされた左足の踵に、爆発魔法を展開した。


筋力で無理矢理足を引き上げながら、爆風の勢いで再び左足を振り上げられた事でケヴィンは一回転し、前のめりになっているエドワードの胸部を蹴り上げる。


「ぐぅ!!」


肺が圧迫され、一瞬呼吸困難に陥っただろうエドワード。


容赦なくケヴィンはバスケットボール大の氷のつぶてを勢いよくエドワードへとぶつける。


大きく後方へと吹き飛んだエドワード、しかし彼の状況だけを確認する訳には行かない。


後方には既に復帰したアルベルトが攻撃を仕掛けてきている。


ケヴィンに向かい槍を突き出すアルベルト。


ストーンバレットを下部から発動し、アルベルトの槍に直撃させ、それを跳ね上げさせる。


ケヴィンは着地と同時にアルベルトへ一歩踏み込むと、顎に目掛けて掌底を打ち出す。


アルベルトは跳ね上げられた槍の反動を利用し、体を仰け反らせそれを回避した。


同時に彼がもう片方に持つ槍を突き出してきた事でケヴィンは後方へ下がるが、その瞬間にケヴィンは右足を真っすぐアルベルトに向かって突き出す。


その蹴りはリーチから考えて到底届く筈がなかった。


しかしその蹴撃は、アルベルトに直撃する。


右足を突き出す直前に、ケヴィンは岩魔法を構築し足の先端にそれを発動。


足の長さを延長する様に、足先から伸びた岩魔法がアルベルトへと直撃したのだ。


体を仰け反らせていた事もあり、大きく後方へと吹き飛ぶアルベルト。


ケヴィンはアルベルトが接地する箇所を狙い、上空から彼を囲むように落雷を落とす。


着地すると同時に雷に襲われるアルベルトだが、四方に展開された雷の僅かな隙間を潜り、横方向へと跳ね飛んだ。


強引に回避行動を取ったためか、その後着地と共にバランスを崩し地面を転がるアルベルト。


アルベルトに体勢を立て直す時間を与えず、間髪入れずに地面からアースグレイブを発動するケヴィン。


腕の力で地面を強く押し、アルベルトは上空へ回避するが、それを予想していたケヴィンは予め発動していた氷の塊をアルベルトに叩きつけた。


全身に極限まで魔力を降り注いだのか、氷の塊に叩き落とされアースグレイブの先端に突き刺さったかの様に見えたアルベルトだったが、砕けたのはアースグレイブの方であった。


しかし防御は固められたのだとしても、体勢を立て直せて居ない状況は変わらない。


ケヴィンは空かさず雷魔法を展開し、アルベルトに落雷させる。


再び四方向の間から僅かな隙間を抜けて抜け出すアルベルトだったが、その移動後の着地点にケヴィンは既に雷魔法を放っていた。


アルベルトが雷の隙間から抜け出せたのは、何も彼の戦闘能力が優れて居たからだけでは無い。


勿論その恩恵も大いに有るのだが、一番の理由はケヴィンがワザと隙間が空く様に放っているからだ。


一度目を難なく抜け出させた事によって、二度目に訪れた同じ状況に対し、人は疑いもせず同じ行動を取る。


その一瞬の油断を狙ってケヴィンは攻撃を仕掛けた。


だがアルベルトもやはり歴戦の戦士、その事を予想していたか経験による賜物か、足を付けるよりも更に早く地面へ接地する為に手持ちの槍を地面へとむけ、それを軸に再び跳ね除けようとした。


だがケヴィンは『そうすると思って居た』為、アルベルトが槍を付いた地面を水魔法と大地魔法の複合により作り上げた泥魔法で、一瞬の内に泥濘ぬかるみに変えた。


地面に深々と食い込んだ槍に、更に体勢が崩れてしまうアルベルト。


瞬きする間も無く頭上に迫る雷に対し、アルベルトは槍を投げつける。


投げ出される様に地面へと倒れ込むアルベルトだが、彼の放った槍は雷に衝突した事で避雷針の役割を果たし、アルベルトへの直撃を免れた。


「チェックメイトだジジィ」


「む……ぅ……」


しかし無防備にも大の字で地面に激突したアルベルト。


その僅かな接触の内にケヴィンはアルベルトの四肢と首、さらには腰にまで大地魔法を展開し、固く作り上げられた岩の鎖を作り上げる。


鎖は地面と接合し、アルベルトは完全にはりつけ状態と成ってしまった。


アルベルトが雷魔法をギリギリで退ける事さえも予想していたケヴィン、一瞬の遅れも取らず魔法を展開していたのだ。


刹那の後、戦線復帰を果たしたエドワードが地面を抉りながらケヴィンへ突撃してくる。


突き出されたレイピアは、ためらいもなく此方の頭部を捕らえ突き進んでくる。


ケヴィンは刃の先端を見つめ、自分の額に限界まで近づいた所でケヴィンはその攻撃をヒラりと避けた。


ケヴィンのその行動に苦い表情を見せたエドワード、すかさずレイピアをケヴィンが避けた方向へと払う。


頭部を後ろに下げそれを回避するケヴィン。


腕を体の内側へと引いたエドワードは、レイピアの先端を面積の多い胸部に向け強く突き出してくる。


軽く体を横に向け此方が避けるのを察知したであろうエドワードは、すぐさまレイピアを引き更に突き出す。


此方が再び避けると引き、突き出してくれば此方が更に避ける。


高速で突き出される連続の突きを、ケヴィンはただ只管左右に揺れるだけで全てを回避した。


エドワードは巧みに刺突の合間に薙ぎ払いを加えながら、幾度と無くケヴィンへ攻撃を仕掛けてくる。


フェイントもかましながら攻撃の一つ一つに強弱を付け、相手を翻弄する様な剣技を見せつけるエドワード。


ケヴィンはそれをただ黙って只管避けていた。


もう一度エドワードはレイピアを大きく引くと、今までとは比に成らない程の速度で刺突を見せる。


まっすぐ、寸分の狂い無く突き出されたレイピア。


しかしケヴィンはその瞬間に、エドワードの目の前に光魔法の一種である『ライト』を発動した。


これは所謂『生活魔法』と呼ばれる類の下級よりも等級の低い魔法だ。


この魔法の効果は単純に光を発するだけの魔法で、攻撃となりうる威力を発する事は無い。


だが物は使いようとは良く言った物で、対象の目の前で突然強い発光が有れば、失明とまでは行かないものの一時的に相手の視力を失わせる事は可能だ。


ケヴィンがそれを使えば太陽光をも超える光度を発揮出来る事だろう。


案の定、目くらましの直撃を受けてしまったエドワードは、かがみ込む様に反射的に体を丸める。


その瞬間、ケヴィンはエドワードの腹部を蹴りぬく。


「う……ぐ……」


途端に腹部を抑え跪くエドワード。


先の氷のつぶてをぶつけた時よりも、遥かに威力の高い一撃を喰らわせた。


気を失わせるつもりで放った一撃だったにも関らず、エドワードは意識を保っていた。


呼吸困難と成り冷や汗を垂らしているものの、ケヴィンの彼に対する評価は鰻登りだった。


敬意を表し、容赦無くケヴィンは悶えているエドワードの首筋へと、この戦いが始まってから一度も抜かなかった長剣を当てる。


勿論止めを刺すつもり等無い。


最大限の賛辞を表し、剣を抜いたと言う事だ。


それを伝える為の抜剣だった。


「……僕の……負けです」


まだ視力は回復してないだろう。


だが、首筋に伝わる金属の感触で凡そ自分がどの様な状態を強いられているか、エドワードは理解している様だった。

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