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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ケヴィン流の戦闘術

「そうと決まれば話は早いわい。私もお主が相手なら本気を出せると言うものじゃ!」


年甲斐も無くはしゃぐアルベルトを鼻で笑いながら、ケヴィンはエマに語り掛ける。


「エマわりぃ、折角のチーム戦だが、こいつらはどっちも俺が相手させてくれ」


「構わないわよ。この際だから貴方の戦い方、ゆっくり見させて貰うわ」


彼女がCランクの振舞いでこの二人と戦おう物なら、彼女は確実に敗北を喫する事になるだろう。


彼女を守りながらでも勝利を手にする事はケヴィンにとって容易い事だが、それでは今度はエドワードの為にならない。


折角なら力の片鱗を見せてやりたい、それと同時に……と近場に腰かけたエマに視線を向ける。


先日まで自分に向けられる事の無かった彼女からの柔らかい表情に、ケヴィンは感じた事の無かった安堵感を覚え、その感情に疑問を覚えながらも正面を見直す。


エマにとっても、きっとこの後ケヴィンが見せる戦い方に、きっと何かしらの意味を見出してくれる筈だ。


彼女は英雄の中でも最高峰のXランク所持者。


更にはとても強力な異能力を持っている。


しかし……無限の魔力が有っても、ケヴィンに出来てエマに出来ない物は山ほどある筈だ。


だからこそ彼女は此方に対して戦い方をゆっくり見させてもらうと発言したのだから。


「そっちもそれで良いよな? 全力で戦いてぇなら、俺一人を相手にする方が確実だぜ」


エマは実力を出せないしな、と言う思いも含んでの発言だった。


「ふぉっふぉっふぉ、年寄には良いハンデじゃ!」


「園長は僕の父親よりも若く見えますよ!」


言いながら、アルベルトとエドワードは構え始める。


かたや一般人枠での二つ名持ち元Sランカー。


そしてもう片方は将来を有望視されている若き天才。


英雄が居なければ間違いなく最強クラスだったアルベルトと、それに匹敵する才能を持っているエドワードを相手にすれば、普通の学生だったら震えあがっていた事だろう。


しかしケヴィンは当然普通では無い。


ニヤリと笑みを浮かべながら『どう遊んでやろう』程度の思考しか頭に無かった。


ケヴィンは地面を踏み込むと、瞬時にアルベルトへと接近する


彼の腹部へ向け蹴りを突き出すが、寸での所で腕を交差されてそれを防がれる。


しかし威力自体は殺せず、アルベルトが軽く後方へ吹き飛ぶ。


そのまま追撃を掛けると見せかけ、方向転換をしエドワードへと接近する。


エドワードは既に身体強化を施しており、此方の攻撃をカウンターに持ち込もうとしている様子が見える。


しかし、彼が行動を開始する前にケヴィンは彼の頭上へストーンバレット、アイスニードル、ファイヤーボールを出現させ、『わざと』それを感知させた。


瞬間、エドワードの視線は此方から頭上に向けられ、ギリギリの所でそれを回避する。


しかしエドワードが後方へと跳ね飛ぶスピードよりも、ケヴィンが彼に飛び込むスピードの方が断然速かった。


その為、まだ着地もままならない状況でがら空きになった彼の胴体に向け、ケヴィンは拳を突きだした。


だが、ケヴィンの拳はエドワードに届く事は無かった。


「……それがあんたの『牙』か、ジジィ」


「間一髪と言う所じゃったの。ワシらに気を使って手加減なんぞするからじゃ」


早々に復帰したアルベルトによって、防がれたからだ。


ケヴィンの拳に触れている武器は『槍』。


エリルの様な長槍では無く、アルベルトの持つそれは片手に持つタイプの『短槍』と言われる物だった。


『青白い銀色』に輝くそれを、彼は両手に一本ずつ抱えている。


鋭く尖った、まさに『突く』事に特化させた槍。


『ミスリル』と呼ばれる金属から作られたその二本の青白銀色の槍が獅子の持つ牙に見える事から、アルベルトの二つ名に『白牙』が含まれる事となったのだ。


このミスリルと言う金属、ガレオ灰鉄に勝るとも劣らない硬度を誇っているのだが、驚くべきはその金属の重さである。


ガレオ灰鉄に匹敵する硬度を持っているにも拘らず、非常に『軽い』と言った奇跡の金属と言われている。


しかし、ガレオ灰鉄の様に巷にありふれている金属ならまだしも、ミスリルは希少価値が高い為にそう簡単には手に入る物では無い。


大抵の者は剣の一部分や槍の先端など強度を持たせたい、或いは切れ味を増したい場所へと部分的にミスリルを使用する事で済ませている。


アルベルトの様に槍の持ち手から全てミスリルで補おう物なら莫大な費用が掛かる事だろう。


正に強者にしか扱う事が許されない逸品である。


「おいおい、俺ら生徒達は模擬刀使わされてんのに、なんでジジィは自分の専用武器持ち込んでんだよ」


「はんできゃっぷじゃ!!」


「だから自分の立場弁えろっての!!」


「隙ありです!」


アルベルトに地味な嫌味を告げていたケヴィンだったが、その大きすぎる隙を見逃してくれる程エドワードは呑気ではない。


容赦の無い高速の刺突が、ケヴィンへと襲い掛かる。


当然、ケヴィンはすんなり跳ね避けるが、同時に掴んでいたアルベルトの槍を引いた事で、体勢を崩した彼とエドワードの刺突が重なる様に仕向ける。


しかし、アルベルトはその乱れた体勢から、ケヴィンに引かれるまま同時方向に跳ね飛び、エドワードの突きを回避する。


だがそうする事によってケヴィンに対し無防となっているアルベルトへ、ここぞとばかりにケヴィンは蹴りをめり込ませ、彼を上空へと蹴り飛ばした。


腕で蹴りを防がれるが、そのまま彼の体は上空へと浮き上がっていく。


「はぁ!」


続けて攻撃し終えた直後のケヴィンに向かい、エドワードが追撃を図って来る。


ケヴィンは着地と同時に地面へ手を突き、ロックウォールを地面から出現させる。


このロックウォールを展開する際、ケヴィンは普段は行わないエネルギー変換を行った。


地面に含まれる土や石を利用しての魔法の行使だ。


いつもなら全て魔力で作り上げてしまうのだが、この時はエマが見ている事から彼女がイメージし易い様にする為のケヴィンなりのサービスだった。


エドワードのレイピアはケヴィンのロックウォールに突き刺さるが、すぐにそれは引き抜かれる。


しかし、その一瞬の隙を突きケヴィンはエドワードの周囲をぐるりとロックウォールで囲った。


最初に展開したロックウォールから連なる様に、直径一メートル程の筒状のロックウォールをエドワードに向け展開。


つまり、筒状に作り上げられたロックウォールの内側へとエドワードは閉じ込められてしまったのだった。


「上じゃ!!」


未だ無防備に空中に打ち上げられているアルベルトが、エドワードに向かって声を荒げる。


それに反応した様にエドワードが上空を見上げると、ケヴィンが作り上げた大きな岩が存在した。


エドワードが今居るロックウォールの筒にすっぽりと収まるサイズの岩石である。


このままではエドワードは逃げ道を完全に失う事となる。


すぐさまエドワードは飛び上がり、ロックウォールの筒から逃げ出そうとしていたが、彼は見えない天板に激突する。


ケヴィンの性格の悪さが垣間見えるが瞬間だが、わざわざ筒の頂上をロックウォールで覆わず、透明度の高い氷で覆った事で逃げ道はそこだけだと錯覚させた。


そして人は思った通りの結果が得られない場合、誰でも一瞬混乱に陥る事になる。


その一瞬の混乱の結果かエドワードの脱出は間に合わず、ケヴィンの放った岩魔法はエドワード目掛けて筒の中へと沈んでいった。

はんできゃっぷ

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