表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せな夢の中で  作者: 月影朔夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

池の終わり


 「……嘘…だろ?」


 穴の奥底から絶え間なく聞こえていた悲鳴が突如止んだのは、僅か兄が死んでから15分後の事だった。


 ゴボゴボと穴の底から不可思議な水音が響いたかと思うと、突然空っぽだったはずの穴に水が戻ってきたのだ。


 「……どういうことだ…!!!」

 恐る恐る池に近づいてみる。

 のぞき込めば、ずっと下の向こうに二人の人影が見えた。


 推測だが…あれが、姫、なのだと思う。


 「……颯、様」

 後ろから、同じように恐る恐る池を覗き込む水野。

 

 「これは…一体どういうことでしょうか…?」


 「…分からない」


 地獄の底まで透き通る池。

 夢を追いかける不可思議な池。


 今まで信じてきた池は、一体何だったというのか。

 これまで家が管理してきたこれは、一体どういう理屈で動いているのだろうか。


 分からない。

 ただ、分からない。

 これは、一体何なのだ。


 だが、一つだけ、確実に言えることがあった。


 「水野」


 「はい」


 「帰るぞ」



 この池に近づいてはいけない。

 ただ、それだけだった。




 家に帰った後も、家の書庫や倉庫をあさり、今までと似た状況が無かったか調べてみた。

 だが、どこを探しても分権の類は一切出てこない。

 

 長い檜の廊下を歩いていれば、ふと開きっぱなしの兄の私室に目が向いた。

 「……兄さん」


 思い返せばやはり、禄でもない兄ではあった。

 人生の半分は兄に振り回されていたといっても過言ではない。

 

 そのたびにイラついて言い返し、それでもなお笑っている兄に腹を立てて子供のように家でして車で寝泊まりする、なんてことも度々あった。


 兄の机の上に小さな写真が置いてあった。

 それは、春宮櫻、泉美波、そして兄の三人が映った写真だ。

 兄は幼少期から、泉美波の付き人としてさらには、泉美波の願いを叶えるための調査員としてずっと彼女の傍にいた。

 苦痛もあっただろうけれど、写真の兄は、眩しいくらいの笑顔を浮かべている。


 本当は、兄が姫の願いだったのだろうか。

 それとも、兄の方が池に落ちたがっていたのだろうか。


 何度考えてもどれだけ理屈をつけようとも、ただ、手元に残った喪失感は消えそうにない。


 「……池」

 

 池にいけば。

 兄に、会えるだろうか。

 一度しか会わなかった、宮坂桜にも、会えるのだろうか。

 羞花閉月の化身である泉美波にも、会えるだろうか。


 あって、謝罪することはできるのだろうか。


 池に水が戻った今が、チャンスなのではないだろうか。


 自分の足は自然と、車に向かっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ