夢の終わりと
「さくら……」
美波の瞳が涙で潤む。
私は何も言わず黙って背中を撫でた。
もう、何が夢で何が現実か、私にわかる日は来ないだろう。
しかし、これだけは言える。
私の隣は美波だけ。
この子は私のものだ。
誰にも渡さない。
「じゃあ……私と一緒に…ずっと池にいてくれる?」
海の光が強くなる。
私は頷いた。
「もちろん」
「ありがとう……」
美波がゆっくりと立ち上がる。
私の手を引いておもむろに歩き出す。
彼女と私の歩幅はたいして変わらない。
二人で光のさしてきた海の方へと入ってゆく。
「怖くないからね」
「美波と一緒だもん。怖くないよ」
笑いあいながら海をただまっすぐに進む。
海水は冷たくなかった。
むしろ、今の火照った私には丁度いい。
腰の中ほどまでくると、光の裂けめにたどりついた。
「いこ、さくら」
美波が桜が咲いたような、満面の笑顔で言う。
「うん」
私もつられて笑顔を浮かべる。
そして、どちらからともなく光の切れ目に踏み出した。
海から光が消えてゆく。
今にも裂けんとしていた海面は元の濁った暗闇に包まれいった。
怨念を、怨嗟を。
二人は閉じ込めたまま池へと戻る。
それが、吉報となるか、ふ報となるかはそれは誰にも分からない。




