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幸せな夢の中で  作者: 月影朔夜


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知らない話


 「先生、どうかされました?」


 「え?」


 「だって、ほら。すごく不思議な顔されてるから」

 そういって徳田が手鏡を取り出して見せてきた。


 鏡の中の私は、口をしっかり閉じて、でも目だけはぱっちり開けている。

 そのくせ、首を15度くらい捻っているものだから、徳田が不思議な顔、と言うのも確かに納得だ。


 「あぁ、ごめん。少し考え事してた」

 首の角度を戻しつつ、前髪を触る。


 マスターが珈琲をホットケーキを持ってやってきた。

 徳田の前にホットケーキとセットの紅茶が置かれる。

 そして、私の前に珈琲とシュークリームが置かれた。


 「ごゆっくり」

 頼んでいません、そういう前にマスターはカウンターの奥へと引っ込んでいく。


 「え、頼んだ?」

 徳田にそう聞けば彼は首を横に振った。


 「まぁ、いいじゃないですか。マスターのご厚意ですよ。

  だって先生いつも頼んでらっしゃいますし」


 「え?私が…いつも頼んでる…?」

 おかしい。私がこの喫茶店に来たのは初めてだ。

 いや、前に来たことがあったのかもしれないが、まったくもって”記憶”にない。


  はっと、徳田が口に手を当てた。


 「あ、えぇっと。先生!」

 何かを誤魔化すように机の上にあった手紙をこちらに差し出してくる。


 「こちらの手紙にあったように…

  夢を見なくなったと言っていましたが…詳しく聞かせてください!」


 「自分は、先生の担当として精一杯お役に立って見せますから!」

 どん、と胸を張る徳田の仕草に、ふと誰かの面影が見えた。

 髪を揺らして、唇に人差し指を当てる、そんな線の細い女の姿。

 いや、気のせいだろう。

 寝不足からくる幻覚あたりにでもしておくか。


 「あぁ、そのことなんだけどね。

  最近夢を見たからもう大丈夫だよ」

 

 「そうなんですか?」

 張った肩の力がストンと抜ける。

 瞬きを繰り返し、徳田がゆっくりと椅子に座りなおした。


 「うん。昨日夢を見たからね。

  もう、スランプは抜けれたと思う」


 「それはよかったです!

  ちなみに、どんな夢を見たんですか?」


 「そう、だね」

 私は話すか迷ったが、自分の担当であることを信じ口を開いた。


 「海にいたんだ。真っ暗な海でね。

  そこで、私は誰かを…美波って言う昔の想い人を待っていたんだ。

  でも…美波はいなかった。代わりに知らない女がいたんだ」


 「知らない女…というのは?」


 「知らないとしか言いようがないなぁ。

  不気味な女だったよ。

  黒い目が嫌に大きくて……何より気味悪かったのは、ずっと”見つけた”

  といって追いかけてくるんだ」


 「へぇ…!!それは…」

 徳田が目を丸くした。彼の興味をでも引く話だったのだろうか。

 無粋な考えは一旦置き、私は続きを話す。


 「私はずっと逃げていたんだよ。

  で、多分…海の端?かな。にたどり着いてほっと一息ついたところ…」


 「後ろからね…」


 「後ろから…?」


 「みーつけた。って女の声がして、目が覚めた」


 「うわぁ…なんて夢ですか!!」

 徳田は自分の両腕をさすっている。

 少し仰々しい気がした。


 「でも…その夢が来たなら…もう時間ですね」

 徳田の独り言が、私の耳元にはっきりと飛んできた。

 ハッと顔を向ける。

 彼はどうかしました、と言わんばかりに首を傾げた。


 気のせい…だろうか。

 いや、きっと気のせいだろう。


 私達は皿を空にすると、喫茶店を後にすることにした。


 車に乗り込んで、家へと帰る。

 その道中、徳田がいきなりこんなことを言い出した。


 「先生。このまま少しドライブしませんか?」


 「ドライブ?」


 「えぇ。きっと先生のお役に立てると思うんです。」

 片手でハンドルを握り、遠くを見ている徳田。


 私は、さっきの喫茶店のことを思い出し、訝しんだが、気分転換に勝るわけではなかった。


 「じゃあ、お願い」

 

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