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幸せな夢の中で  作者: 月影朔夜


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作品をご覧いただき、誠にありがとうございます。

月影です。

完結までゆっくり更新していきますので、よろしくお願いいたします。

 春宮櫻がそれを見始めたのは、作家としてデビューする一年前からだった。

 夢と笑うには現実味がありすぎる。

 だが、現実だと忘れるには夢のような体験だった。

 

 夢はいつも同じことが多い。

 基本は池の畔に立つ夢だ。

 その池は美しい。

 透き通った水の底に自分の顔が揺らいで見える。だが、自分は池の畔に立っている。

 だが、池の真ん中に自分の顔を見ている。

 それは決まって夢の始まりに過ぎない。

 

 夢は進むと、池から次第に川に繋がって最後には海に着ている。

 海はいつも暗い。鉛色の雲が空を覆い、水面は銀の絵の具を溶かしたように濁っている。

 自分は波打ち際で、名前も知らない女を待っている。

 だが、女は一向に来ない。

 どうして待っているのかはわからない。

 ただ、待っている。



 「先生、何を考えてるんです?」


 心配そうな声に櫻が顔を上げると、担当編集の秋葉がちょうど首をかしげるとこだった。


 「いや…何か考えていたわけじゃないけど」


 「その割にはずっと黙っていましたし…何より珈琲が進んでません」


 秋葉は自分の手元にあるカップを指した。並々注がれたそれの湯気は既に消え失せてている。


 「それにお茶菓子も進んでないじゃないですか。先生はシュークリーム、お好きでしょう?」


 カップの隣には小さな皿に拳ほどの大きさのシュークリームが確かに並んでいる。


 「こんなのあったっけ?」


 「注文したじゃないですかぁ~」


 秋葉のため息が、小さな喫茶店に響き渡る。

 マスターがこちらに目線をくれたが、何も言わずカウンターの奥へと入っていった。


 「ところで秋葉」


 「はい?」


 「なんで敬語なの?」


 「はい?」


 「だから。敬語。止めてよ。よそよそしいじゃん」


 「そうはいっても…職業柄というか…仕事病というか…」


 「けち。昔はずけずけと呼び捨てにしてきたくせに」


 「それは…!さくらが仕事相手になるなんて思ってなかったし!」


 ハッとして秋葉は口を抑えたが、観念したのか首を振った。


 「あーもう。じゃあいいや。シュークリーム食べないなら貰っていい?」


 「どうぞ」


 「ありがとう」


 秋葉はあっという間に二つのシュークリームを平らげると、傍にあった櫻の珈琲まで飲みつくす。

 やはり、秋葉は昔から何も変わっていない。

 彼は小学校からの同級生だ。

 昔は、美波という名の通り美しい女の子と私、秋葉の三人でよく遊んだものだ。


 「それで秋葉はなんで私をここによんだんだっけ?」

 

「そこから忘れたの?」


 呆れたように秋葉は口を開く。長い溜息のあと彼は話し出した。


 「次の原稿。そろそろ締め切りだから貰いに来た。というかそれよりさくらが最近夢を見ないとかいうから俺がここまで出向いたの」

 

 言われてみると、確かにそんなことを手紙に書いた気がする。

 私はそんなことすら忘れてしまったのだろうか。ため息が出る。

 

 「いやいや、ため息つきたいのはこっちもだからね?

  ほんとそろそろ携帯くらい持ってくれよ。便利だよ?」

 

 「いや、私はいいよ」

 私は静かに首を振った。

 

 「持っていたところで使いこなせなければ意味がない。それに持つことによって私の生活が大きく変わってしましそうだからね」

 

 「ま、純文学作家のさくらはそういうとは思ってたけどね。それより、夢を見ないってどういうこと?さくらの作品はその夢が元になってたって、前に言ってたけど…

 あ、もしかして、スランプだな?」


 「……」


 「沈黙は正解と捉えるぞ」


 軽く笑った秋葉は、結露で濡れたグラスに口をつける。


 「編集としてじゃなくて、幼馴染として言わせてもらうけど、この際、その夢が何なのか全部教えてよ。もしかしたら、スランプ脱出に協力できるかもしれないからさ」

 

コトン、と机にグラスが置かれて、私は秋葉を見つめた。

 真剣なその瞳に


 「分かった」


 私は事情を事細かに、秋葉に語ることにした。



 

 


ご覧いただきありがとうございました。

この作品はその昔コンテストに応募した作品のリメイクとなっております。

ネットへの投稿は初めてなので、連載という形で物語を進めていこうと思います。

もしよろしければコメント等に感想をくださいますと、今後の励みになります。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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