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学生編2 どうしてそういうこと生徒に言っちゃうの?
彼は本当にモテなかった。
どれくらいモテなかったかと言うと、それを語るにふさわしいエピソードがある。
彼は中学生時代、野球部であった。その野球部では毎日最初にバッティング練習をするため、野球部員は必ず授業が終わるとマシンや柵などを設置しなければならなかった。
しかし、それをしばらくしなくて良い日がある。それが2月14日。
そう、バレンタインデーである。
その日だけ、彼らはグラウンド整備をサボってよかった。もちろんチョコを食べている間だけである。
野球部はやはり、女子人気の高い部活であった。
大体の部員がチョコを貰えるため、基本的に20分ほどの休息が与えられている。
この辺りで察しのいい人は気づいたであろう。
私と彼が2年生であったその日、私が帰りの準備を済ませ駐輪場へと向かうと1人、Aだけがグラウンド整備をしているのを見つけた。
何をしている?
そう聞くと、彼はこう言った。
「…後輩含めて全員がチョコを貰っていた。」
私はその時ほどAの悲しげな顔を見たことがない。あまり他者評価を気にしない彼だが、モテないことだけはやはり気になるのだろうか?
いや、そうではないのかもしれない。
「「A先生のバレンタインデーの話って本当なんですかー?」」
生徒が私に聞いてきた。




