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友人A へ  作者: sino
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社会人編1 もうちょっと他人を妬んだらどう?

ここちょっと趣旨が違うので、飛ばしてもらっても大丈夫です。

Aは他人を妬まない。

私がそう感じたのはある会社に入ってしばらくしてからのことだ。その会社は塾で、業務内容としては授業を教えたり、プリント印刷などの事務作業をしたりなどだ。


ある日、同僚の1人が教室長に任命された。教室長とは地域に点在している各教室の長を務める人で、三者面談や生徒登録、座席の作成などその教室における全ての権限を握る役職である。

教師として入ったからにはそこが一つのゴールだ。

私はとても悔しんだ。しばらくの間、少し彼女に対して冷たく接していたと振り返ってみて思う。


だが、Aは違った。彼は普通に彼女と接し、あまつさえ教室長になると、どうなるのか積極的に聞いていたのだ。彼女が忙しくなると彼は率先して手伝い、授業のサポートもしていた。


Aの立場がその頃どういうものだったかと言うと、それはもう散々なものだった。毎日のように上司に叱られ、周りからは使えない奴扱いされ、同僚の間では完全に1番下だと見られていた。


しかし、彼はそんなことを全く気にしていないようにのほほんとしているのである。彼がさまざまな業務をサポートし、ゴミ捨てなど雑用をし、生徒の人気が高かったのを私は知っている。

どんなに頑張っても評価されない。Aはそのことを毛ほども気にしていなかった。そして、同期の立場がキツくなっていた彼女を積極的に励ましフォローしているのである。


なぜ、お前はそこまで出来るんだ?


そう聞くと彼はすらっと答えた。

「俺がこの会社で最も優秀であるからだ。」



その瞬間、疑問符が際限なく湧き上がり私の思考を数秒間止めた。

何を言っているのだ、お前は。同期の彼女は明らかにお前より立場が上ではないか。

「だが、私は彼女より授業が上手い。」

何を根拠に?

「根拠などない。ただ、私の授業で生徒は常に笑っている。私以上に生徒を沸かせられる者はこの会社に存在しないと自負している。」


一切の曇りなくそう言い切る彼に、私は唖然としていた。

少し間をおいてまた切り出した。

だが、立場は彼女の方が高いではないか。

そう聞くと彼はこう聞いてきた。


「では、チーターはサルより優れているのか。」


この話に私はハッとした。以前彼と話し合ったことだからだ。

どういう意味かは以下の通りである。


チーターはサルよりも足が速い。

では、チーターはサルよりも優れているのか。

否、サルはチーターよりも手先が器用である。

同様にサルがチーターより優れているわけでもない。

事務面で負けていても授業力で勝てばいい。

それが彼の主張であった。


私はまたしばらく黙り込んだ。

そしてまた口を開いた。

少し話を戻すが、なぜ君は彼女より授業が上手いと思う?

そう聞くと、彼は少し申し訳なさそうに言葉を切り出した。

「すまない。言い方を間違えた。授業の面白さという面で私は彼女より優れているのだ。」

なぜ?

「彼女のスタイルは授業の分かりやすさに重点が置かれている。スタイルが違う。」

では授業の良さでは優劣がつけられないではないか?

「そうだ。だから言い直した。俺は面白さの点で彼女に優っている。」


その時、私は思い知った。

Aを支えているのは圧倒的な自己評価なのだと。

彼はニーチェの言うところの「超人」に近い存在なのだと。


自己評価が高いから、Aは他人の評価を気にしない。

その自己評価も全くの見当違いではないのだろう。上司に彼が積極的に質問し、常に面白い導入やクイズを考えていることを私は知っている。

高い生徒人気もそれを裏付けているのだろう。


「お前も彼女から教室長について学ぶと良い。色々と役に立つぞ。」

そう言って彼は去った。


彼は他人(たにん)を見下さない。

なぜなら様々な面から他人を見つめ、自分よりも優れているところを認識しているからだ。

彼は他人(ひと)を妬まない。

その様々な面の中から自分の優れている部分を認識し、誇っているからだ。


彼はどんな愚者からも学び、どんな賢者をも絶対視しない。


私は彼のそんな姿勢について学びとらねばならぬのかもしれない。



…だが、



「おい、A!!棚から出した参考書は棚に仕舞え!!!」

「あ!申し訳ありません!!」


Aはもう少し自分の愚かさを省みるべきでは無かろうか?


ニーチェについてもっと知りたい人はこのyoutubeを参考にしてください。Aのお気に入りでした。

https://youtube.com/watch?v=wjYqRCLCM2c&feature=shares


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