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4.虹の本来の形

(って、ええっ!!この娘も出せるの!?でも何で……()()()()()()!?)


 そう、彼女の出した虹は大きさといい、色合いといい、俺の発生させる虹にそっくりだが、何故かアーチの頂点が下になってる上下逆の形で出現したのだ。

 その後、彼女の出現させた虹が消えるとほぼ同時に俺と彼女は互いに相手に向かってゆっくりと歩き出した。


 彼女が何を考えているかは分からない。だが、俺が彼女に向かって歩を進めたのは、虹についてのある豆知識を思い出したからだ。

 虹というのは本来、同心円を重ねたような円環形をしており、地上からは下半分が見えないため、アーチ状に見えるのだという。

 なので、運が良ければ上空を飛ぶ飛行機からは丸い円環形の虹が見えるのだとか。

 俺は最初に虹を出したとき、普通に虹として目にするアーチ状だったので、その形を疑問に思うことも無かった。

 でも虹の本来の形が円環形だとしたら、俺の出す虹はその上半分でしかない。


 そうだとするなら……


 互いにあと一歩踏み込めば触れ合ってしまう程の距離で向かい合って立ち止まった。


 俺と彼女は右手の人差し指を立てて相手に向けて腕を伸ばす。


 指先が触れ合うと同時に互いの国の言葉で「虹」と唱えた。


 触れ合った指先を中心にいつもとは比べ物にならない程の鮮やかさと輝きを放つ円環状の虹が出現し、やがて消える。


 虹が消えるまでを見届けた俺は何かをやり遂げたような気分でホッと息を吐いた。


(……で、それはいいんだけど、この後どうすりゃいいんだ?さっきからこの娘も俺も指先触れたまま固まって動かないでいるけど。

 このままだったら怒られない?でも俺から指離しちゃっていいの?あ、まずこの娘に聞いてからにしようか?つか、日本語通じるの?でもとにかく俺から話し掛けないと。)


 なんとか決心を固めて話しかける。


「あ、あの、ちょっと、えー、今の『虹』の件で俺とお話って、あれ?『虹』で通じるかな?さっき何て唱えてましたっけ?あ、ま、いいや、その、ちょっとお話しませんか?、え、あくまで『虹』の話で、あの、変な勧誘とかではないです。あ、そのエコバッグの中、要冷凍食品とかあります?だったら、帰って冷凍庫に仕舞ってからでも、ああっ、俺の名前言ってませんでしたね、俺は」


「そうですね、良ければそちらの東屋でお話しましょう。要冷凍の買い物はありませんので時間はありますよ」


 あまりに女性慣れしていない俺の態度が逆に緊張を解いたのか、柔らかな笑みを浮かべて彼女は答えてくれた。

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