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今は遠い星の夢  作者: たまねぎ堂
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はじまり

夕陽の赤い日差しが、都会から少し離れた丘の教会に差し込んでいた。

教会ではシスター服を着た少女が1人、礼拝堂の掃除をしている。

この教会はこじんまりとしていて静かだが、この教会が建てられた由縁である天使が描かれたステンドグラスの細工が美しく凝っている事も有り、週末には結婚式や、写真を撮りに来る人でにぎわう事も有る。

この静かで、美しく穏やかな一時は平日の夕方ならではのものだ。


チャプチャプという水の音が響く。

そして水をたっぷりと含んだモップで、スーっと床を清めていく。

シスター服の少女はこの静かで、穏やかな時間が何よりも好きだった。


緩やかな時間が流れていたその時、水で艶を帯びた木製の床に突如人形の影が大きく伸びた。

シスターが、驚き振り向き目に入った十字架から、そろそろと視線を上げていくと、そこに羽の生えた人が中に浮いていた。

(天使…?)

ありえない、分かっているけれども目の前の相手を表現する言葉は他に見つからない。

戸惑うシスターを横目に天使は地へ降り立った。

「こんにちは、私はアストラと言います」

開口一番挨拶と自己紹介という、なんとも普通の人の様な行動。

顔には、人の好さそうな笑顔が張り付いている。

見た目はアジア人の様に見受けられ、言葉も現代の日本語。

というかアストラ…?そんな名前の天使聞いた事が無い。

夢でも見ているのだろかと、シスターは無意識に頬へ手を伸ばしていた。

「ここは協会ですよね。」

アストラと名乗る天使の様な人?は静かに話し出した。

「そうですけど。あなたは天使様なのですか?」

困惑と疑問でいっぱいの心情でこわばった顔で何とか解消したい疑問の一つを口にする。

「天使に見えますよね・・・」

気まずそうな笑顔でそう答えた。

「・・・それは違うという事で良いんですか?」

(天使じゃなかったら何なの?)

そう叫ぶ事もできず。

気まずい沈黙が流れ、状況は混迷を極めた。


(え、なんか羽が生えた人が重力を無視して天井から降りてきた。)

数秒の沈黙の間にシスターは、急速に冷静さを取り戻していく。

(そういえば天井って、屋根は?というかどうやってここに入ってきたの!?)

ほほに添えていた手を捻り、痛みという刺激を感じながらこの混乱した状況を整理しようと試みるも、謎が多すぎて次に発する言葉も思い浮かばない。


「混乱しているところ申し訳ないんですけど、ここってどこですか?こっちも状況がよく分かって無くて・・・」

首をなでながら心細そうに周囲を見回している。

「ここは日本という国の都心から少し離れたところです・・・と言って分かりますか?」

かわいそうに思えてきたが、こちらもどうして良いのか分からない。

「分かります」

「分かるんですね・・・」

(まあ、流暢な極東の島国でしか使われいない日本語話している時点でそうでしょうね、じゃあこれは何かの手品でこの羽はコスプレ的な何かなんだろうか、目的が全く分からなくて怖い)

シスターは更に混乱した。


「知ってたら教えてほしいんですけど、この羽ってどうやったら仕舞えるんでしょう」

(知るか!)

そう叫びたい気持ちをぐっとこらえて「知りませんが、どうやって生やしたんですか?生やし方を思い出したら、仕舞えるかもしれませんよ」

「なるほど!」

そういうと羽を動かしたり触ったりし始めた自称天使じゃない鳥人間。

(というか、それコスプレじゃないの?そういえばさっき微妙に動いてたし何なのそれ)

「あの、私からも聞いていいですか?」

「はい、なんでしょう」

なんだか嬉しそうな表情を浮かべている

「どこから来たんですか?」

「多分、そらから」

「飛べるんですか?その羽で」

シスターは怪訝な表情をした

「まさか羽なくても飛べますよ」

ほら、と言って羽を動かさずに宙を舞って見せた。

「え、じゃあその羽は何の為についてるんですか?」

ますます訳が分からないという表情のシスターに対し

「これは、説明するのに時間が掛かるから・・・」

そういい淀む

「では、これからどうするんですか?何か目的があるんですか?」

「目的はあるんですけど」

そういって悩むしぐさをする鳥人間さん(仮)

「けど?」

そういって顔を覗き込むシスター

「ここまでの経緯をお話しても良いですか?」

そう居直って話し出すアストラと名乗った鳥人間

「はい、ぜひお聞かせ下さい。もうホント気になるので」

その返事を聞いてほっとした表情を浮かべ、アストラは周囲を見回し、教会の端にある小部屋を指差した。

「あの部屋を使っても良いでしょうか?」

「懺悔室ですね、確かにアストラさんのビジュアルは非常に目立ちますし、見つかって説明するのも面倒ですので丁度良いですね」

それを聞いて、なぜか憂う表情をするアストラ。

シスターがその意味を知るのは半時程先の話である。

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