6. 処分
「――では、ミス・エミリーと面識はないと?」
「そうなんです! ターシャと私は仲が悪くて――というより、あっちが一方的に私のイメージを悪くしようとするんです。だから全部アイツの嘘で――」
「言葉に気をつけなさい、ミス・ガートルード。今回の件がどんなものであれ、ハーリフォードの中にいる以上は高貴な言葉遣いをするように」
「……全部ターシャの嘘なんです。それどころか、彼女が庶民出身の女の子をいじめているところを見ました。あのタイミングで嘘をばら撒いたのはその口封じのためでもあるのかも」
私は険しい顔の講師に呼び出され、個室で事情聴取されていた。
この人専用らしい机の上には『イヴェット』と彫られた木の板がある。おそらくこの人の名前だろう。私たちはその正面に向かい合うように置かれたソファで話し合っているところだ。
「まだあなたに対する評価を決めつけることはできません。それは良い方も悪い方も、です。ですがもし悪い方に傾けば、その時はここを出て行ってもらうことになるでしょう」
「わかっています……。でも、本当に私は何もやっていなくて――」
「時にミス・アンナ」
鋭い眼光は私からアンナへと移った。鋭い眼光――とは言ったが、この険しい顔はつくっているわけで生まれつきこうなのだろう。あくまでも私たちを悪いと決めつけているわけではないようだ。
「先ほど、ひどく自分のことを責めたてていましたが、あれはどうしてですか」
「どうしてと仰られても……。あ、あれが正しいと思ったので……」
「質問を変えます。あれはミス・ガートルードを庇ったのですか」
「庇ったわけでは……。というのも、ガートルード様は何ひとつとして悪事を働いておりませんので、つまり庇いようがないと言いますか……」
「もしもあなたがミス・ガートルードに暴力を受けているのならば、今こそが打開のチャンスです。どうか怯えず、正直に答えなさい」
「そんなことありません! ガートルード様はわたくしの願い事を聞いてくれるお優しい人です!」
イヴェットさんはふん、と息をついた。
真っ直ぐ伸びた背筋と淡々とした話し方のせいで機械なんじゃないかと思うほどだった。
「はっきり言って、まだ何もわかりません。誰が嘘をついているのか、あなたがどうなるのか――。残念ですが、それがはっきりするまではあなたを自由にするわけにはいきません。当分は自室で待機するように」
つまり、疑いが晴れるまでは指導が受けられないということだ。私はここを1日も早く抜け出して結婚したいのに、冗談じゃない。一体、どれほど足止めされるのか。
「……ここでの話は以上です。二人とも、何か聞きたいことは?」
私もアンナも何も言わなかった。今ある疑問なんかよりも、これから先のことに圧倒されて口を開く気にならなかったのだ。それに、どうせここで何かを言ったところで私の無実を受け入れられるわけがなかった。アンナもきっと同じことを考えて黙っていたのだろう。
「ふむ、それでは退室していただいて結構。また何かあれば直にあなたへ知らせます。あなたも何か言いたいことがあれば私に伝えなさい。この問題は私が責任を持って受け持ちますので」
「はい……」
「では、くれぐれも部屋から出ないように。いいですね?」
私たちは従うしかなかった。大人しく従っていれば信用を取り戻せるという確証もなく、ただ不安にかられながら。そして、あの人と結ばれる希望が遠のくまま。