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第三話(c)「VSドーピング神官とその後始末」

 後方へと弾き飛ばされたローパーと一緒に筋肉で肥大化した神官は建物を幾つも破壊しながらの殴り合いを繰り返している。

 「おらぁ!」

 「おおおおぉおお!!」

 拳がぶつかり合うたびに神官の拳が皮ごとめくれ上がるが瞬時に新たな筋肉の繊維が編み込まれ厚みを増していく。瓦礫を握り潰し、神官が力一杯にローパーへと投げ付ける。咄嗟に両腕で身体をカバーし、幾つかの破片が身体に突き刺さり血飛沫を上げる。その隙を見逃さずに神官が詰め寄り、アッパーで両腕の間をかちあげる。ガードが解かれたローパーの横顔へ左ストレートをかます。が、ローパーは機転を利かせ、顔を後方へ少しずらし、鼻の先端が切れる程度で済んだ。空かしたようになった神官の左腕の関節を思い切り殴り飛ばした。ミシミシと骨が軋み、幾重にも編まれた筋肉が引き千切れる音がする。嬌声を上げる神官だが、半狂乱と化している為か応えるような素振りはせずにすぐさま右腕を振りかざす。当然その攻撃を視認したローパーは神官の身体の流れを利用して一本背負いをし地面に叩きつける。軽くクレーターが出来た。

 「がぁああ!」

 「ふっ!」

 神官を起き上がらせずに両脚で神官の首を締め上げる。息が苦しくなってきた神官はローパーを届く範囲で殴り付けるが、徐々に絞め上げながら腕でガードしていくローパーにダメージが通っているとは思えない。暫くして両腕がダランと地面に倒れ、白目を剥いて泡を出して気を失ってしまった。気絶したことを確認して絞めた脚を開放し、衣服を整えて一息吐き、アレソンとローゼンの元へ歩き始める。

 「ふぅ……しっ、加勢しに行きますか。」

 仕切り直したローパーであったが、ミスを犯してしまった。突然、後方から頭を鷲掴みにされた。

 「がっ!?」

 咄嗟に締め付けた何かを引き剥がそうとするが、加護を得た力でも剥がせない程の力を込められているのか、頭にめり込み始めている。グルんと視点を切り替えられる。神官が泡を吹いて倒れている筈だったが、そこには更に筋肉で肥大化した塊が在り、最早原型をとどめていない。

 「マジでマッドサイエンティストってのが似合う実験結果だなあこりゃあ!」

 腕だった何かが巨大な拳をローパーに向けて迫ってくる。流石のローパーも諦めの境地であったが、一閃が目の前に走る。すると、肉塊の腕だったものが両断され、頭の締め付けからも解放された。痛みに堪えながら頭を支えるローパーの前に青年が顕れた。

 ローパーの前に割り込んだのは執事服を身に纏い、指に嵌めた指輪を光らせた煉であった。

 「ローパーさん、頭大丈夫そうですか?」

 「あぁ、助かった!」

 「しかし、こいつ何ですか。もう、人じゃないですよね。」

 「筋肉に偏り過ぎた奴の末路ってやつだ。」

 「なるほど、ローパーさんも気を付けてくださいってやつですね。空隙連打!」

 言霊を込めた煉の拳の衝撃波が空間に固定され、一定に達すると同時に肉塊へとめり込まれていく。指輪が瞬き、紅い色に染まる、と同時に衝撃波が赤くなり肉が焼ける音が響く。

 「焼撃!」

 肉塊に火の手が上がり、くぐもった嬌声が鳴く。

 「流石にこの肉は喰えんの。」

 少女の声が頭上から聴こえ、ローパーは見上げる。そこには煉の傍らで偉そうな態度をしていた弄が紅い髪を拡げながら宙を舞い、歪な魔法陣を展開していた所であった。魔法陣からは巨大な獣の骨の前足らしきものが4本出ていた。その指先は鋭い爪が揃えられており、肉塊の前で素早く交差した。刹那の時、肉塊は瞬時に血の塊となり、地面に大きく染み渡った。魔法陣から出た前足は攻撃が終わると魔法陣の中へと沈み込んでいき、展開された魔法陣も空間へと消えていった。弄も地面へと静かに着く。

 「ははっ……規格外ってのはこういう事を言うんだな。笑うしかねぇよ。」

 うすら笑いを浮かべたローパーを見ながら弄はアレソン達がいる広場へと目を向ける。

 「主より、この地を任され、殺めるのはある程度にしろと言われたのじゃが、あやつはどうすればいいのか聞いておらなんだな。」

 「正気に戻すだけで十分なような気がします。リンさんが言っていた言動に似ておりますから。」

 「どういうことだ?」

 ローパーに煉が紅い狂気の事を説明する。

 「ふぅん?その澱みってのがエレボス側でひと騒動を起こしてた訳であいつもそうなってるってことか。」

 「じゃが、わしは加減が出来ぬ。故に手を出さぬ。分かるな、下僕。」

 「承知致しました。そちらで指を噛みながら見ていて下さい。」

 弄の尻尾が煉の足を掴み、地面に思い切り叩き付けた。叩き付けられた方も苦悶の声を漏らすが、いつもの事の様に立ち上がり、執事服の埃を払い、歩き出す。異様な光景にローパーも固まったままであった。


 「ははは!いいですよアレソン!その人間らしい不屈の精神!科学の技術で奮い立たせている所が更にいい!」

 既にアレソンの両脚には力が入っておらず、ブスブスと煙を立てた機械だけが彼を立たせている。エルフ特有のつり上がった耳も片方が無くなり、目も虚ろになり肩で息をしている。対するローゼンは身体がボロボロであるが、損傷箇所を労わることなく狂気に満ちた目つきでアレソンを見ている。

 「はぁぁ……はぁぁ……。」

 「ここまで私に付き合った事を感謝し、結果を証明しましょうか。私の実験が素晴らしかったという事を!」

 至る所から不気味な液体を垂れ流した両腕をグリっと回転させ、アレソンの距離を詰める。が、すぐさま後方へと吹き飛ばされてしまった。一瞬、何が起こったのか不思議そうに見つめるローゼンであったが、アレソンの前に立ちはだかる青年を見付ける。

 「おやぁ?君はぁ……。実験材料モルモット君かな!」

 青年に近寄り、有り得ない方向に周り出す両腕を振りかざすが、何かに遮られて近づけさせる事が出来ないでいた。すると、青年が両腕を拡げて、ローゼンの前で掌を強く叩く。

 「掌握空隙……波動!」

 青年の指輪が黄色く光り、ローゼンの両腕が空間に固定された。か、と思った瞬間にローゼンの両腕は身体から切り離され、遠くの方へと飛ばされていた。

 「???」

 「空隙掌底。」

 掌底をローゼンの丹田へと捻じ込むように打ち込む。魔鋼合繊維を貫通し、ローゼンの内部へと響き渡る衝撃に思わずローゼンも肺に溜まった息を吐き出し、後ろへとよろめく。

 「ごぉ?!う、おぼぉえええ!」

 吐き気を催したのか、両腕でマスクをずらすことが出来ないので地面にマスクをこすり付け、僅かな隙間から体液を零す。それと同時に紅い煙が洩れ始めている。

 「ふぅ……これで後はヨウ達に任せて休ませてもらうか。」

 指輪を外してローゼンに投げつけると指輪が宙に浮かび、ローゼンの周りを覆う様に白い結界が展開された。

 焦点の合わないアレソンを抱き上げ、煉はその場を後にした。


 第三話これにて終了です。読んで下さり、ありがとうございます。作者のKANです。

 いやぁ、時が流れるのはあっという間といいますか(3か月)

 失踪するとしたら半年は過ぎているやもしれませんが、何とか終わらせれるように努めていきます。あと、語彙力が失踪しておりますので文章が杜撰になっているかもしれませんが、ご了承していただけたら幸いです。では、次のお話の後書きでお会いしましょう。

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