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第二話「ノーグ始動」

魔鋼石中継が始まる前の夢幻の塔にて、ジェン・ヨウは手筈通りに集落の偵察部隊「蜻蛉」に魔鋼石の運搬をするように頼み込んでいた。皆が集まる会議室を綺麗にするためにヨウとテスティアは清掃をしており、時折テスティアはふぅと一息吐く。

 「疲れたかい?」

 「いえ!これぐらいではへこたれないですよ!」

 小さな身体で大きな長机をうんしょうんしょと運ぶ姿を見て、微笑ましさと逞しさを感じるが、小さな身体であってもこの大陸の全能を司る神であることに変わりはない。神が疲労しているということは信仰に影響しているといっても過言ではない。

 「そういえばなんだけど、ティアを信仰しているような教会は二国に建っているのかな?」

 「そうですねぇ……。国教の教会とまではいきませんがそれなりに大陸中にはありますね。でも、二神を信仰することで私にも神力が注がれてますから。あ、魔法の詠唱にも私が携わっていますからそこからも信仰はされてますよ。」

 「なるほど……じゃあ、ティアを担ぎ上げて侵略を目論む輩とかってあり得るかな。」

 「ふぅむ……、その可能性はありますね。ましてや、これから二国が戦争を始めようとするのであれば、狙ってくるやもしれません。」

 戦争という単語を言うとテスティアの表情は曇る。ポンポンと頭を軽く叩いてヨウは告げる。

 「ティアを担いで信者と騙る奴がいたとしても、それもまとめて叩けばいい。抑止力というのはそうやって使うものさ。弄!煉!」

 大きな声で二人の名前を呼ぶ。すると、呼応するように会議室の出入り口の魔法陣から呼ばれた者達が顔を出す。艶やかに梳かれた深紅の髪を腰まで垂らし、紅い瞳は会議室の明かりで綺麗に光る。貴族のドレスとまではいかずとも華奢なドレスを着た神弄の魔女、弄がドレスのつま先をクイッと上げて…麗にお辞儀をする。次いで、後ろからスーツを着込んで手にはフィットするような手袋を嵌めながらゴツゴツとした指輪を何個か嵌めた黒髪の青年、煉が胸に手を置いてお辞儀をする。

 「君達にはゲン・ガンに行ってもらい、二国と異教徒への抑止力となってもらう。」

 「拝…しかと承ったのじゃ。」

 「承知致しました。」

 「それにしても大分姿勢が綺麗になったね、弄。貴族としてのマナーとかを煉から教えられたのかい?」

 「あぁいや、お嬢様がヨウの前でもシャキッと出来ないかと縋って来たので少し教えただけぐぇ!?」

 煉が説明している途中で弄の尻尾が煉の頭をくるんでは地面に叩きのめした。

 「出しゃばりおって……主よ。今のは聞かなかったことにしておくれ……。」

 「ははっ、そうしておくよ。じゃあいってらっしゃい。」

 「うむ!ほれ、いつまで地面にめり込んでおるのじゃ、行くぞ。」

 「くっ……。今から行くってのに障らなければいいが。」

 首の骨を幾つか鳴らして魔法陣へと消えていった弄の後を追う煉にヨウが一言告げる。」

 「ゲン・ガンに行ったら本当のお嬢様……にも会ってくるといい。」

 「……あぁ。」

 そう言って煉も魔法陣へと消えた。と、すれ違いに魔法陣からどんどんと人が入ってくる。開口一番に黒い鬼の終鬼が呟く。

 「んぉ?煉達は出ないのか?」

 と。ん、別件があってね。さて、ティアは父さんと一緒に見ててね。」


  「やぁ、二国の王。それに大陸の皆、僕はジェン・ヨウ。この大陸を淘汰すべく選ばれた者だ。」

 「「(ジェン・ヨウ!!)」」

 両者陣営がざわつく中、二人の王は顔をしかめる。カイルは考えを忍ばせ、ヤマルは確信めいた口調で話す。

 「この時を待ってたのか、選定者。」

 「……どういうことだ、ヤマル。」

 「分からないか、カイル。二国の宣戦布告と臨戦態勢であることを確信した上で、この選定者は我が国しか知らないの周波数を傍受して第三の勢力としての宣戦布告を言いに来たんだ。」

 「僕は戦争を起こして欲しくない主神の命に則って君達を抑える役割を担ったんだ。決して侵略してやろうとは考えていないよ?」

 「(随分と余裕そうに嘯くが我々を簡単に殺せる力があるからはったりじゃないのは分かる)」

 と、カイル陣営の方から紫の雷が一閃迸る。すると、魔鋼石を通じてヨウの元へと紫電が走ったたように見える。が、ヨウは幼子が手を上げた位の朗らかな表情で紫電から避けようとしない。技を繰り出した者は眉根を顰めるがそれは技が届いていない事を理解した。

 「ここまで技を届かせようとしたのは称賛するよ、紫閃の剣姫。でも、辿り着いたとしても僕には届かないよ。何故なら……。」

 魔鋼石からの映像が二国同様にズームアウトする。二国の陣営のざわつきは更にひどくなる。

 「僕ら『ノーグ』は君達を見下ろす所に在り続けるからだ。」

 ジェン・ヨウを先頭に獣人のライ、黒い鬼の終鬼、雪女のフロン、妖精樹林の魔女リン、バスティーユの監獄長シド、銀木犀のハイプラントイルド、冥神の巫、幻覚で生み出された神狼の魔女とスーツ姿の煉が扇状に映し出された。数えるだけの人数であるが、内に潜んだ脅威を感じた者達は身構える。

 「僕らは君達を不必要と感じれば、徹底的に淘汰し、アーク大陸の調停を図るだろう。抗う力があれば僕たちに抵抗する力を合わせるといい、ふふっ」

 不遜に笑みを零しながらヨウは一方的に通信を遮断し、二国の映像へと戻る。それぞれの陣営で不穏な空気が流れる。二国の王は不安そうな気持を表情に出さずに、先のヨウの言葉を反芻する。

 「(見下ろす位置ということは夢幻山脈にいることになる。つまり、ジェン・ヨウが率いるノーグという集団は山脈から二国へと兵かあの内の誰かを出すということか……。まさか、あの色欲のアシッドを仲間内にしているとは思わなかった)」

 「(アレポトリパで見た彼等も相当だったが、あの巫すらも引き込んだか。これは気を引き締めて行かないといけない)」

 「(兵を無駄に浪費したくないのは向こうもだろう。であれば、この状況を打破するのなら)」

 「(誰が此方に迫ってくるかは分からない。が、先行して叩くのであればこれしかない)」

 「「(ジェン・ヨウを討ち取るしかない!!)」」

 「ゲラルド!士気の持ち直し及び四方騎士を用いて夢幻山脈方向に陣を展開!国内への侵入を防ぐ為にゲン・ガン方向も注視せよ!」

 「はっ!」

 「リベリア、夢幻山脈方向に軍事科の兵士を配備、魔導機械科はゲン・ガン方向に展開。植物科はシワの森を警戒。魔鋼製造科と魔導技術科は国内の防衛強化に当たってくれ。」

 「御意!」

 「カイル王、ここは一先ず停戦といこう。これでは国民に被害が出てしまう。」

 「同意しようヤマル王。」

 既に宣戦布告をしていたが、隙あらば牽制するぞと声音で薄々感じながらも停戦を改めて宣言した。


 「おいおい、二国間に挟まれるこっちの気持ちになって欲しいもんだ。」

 「ひっひっひ、全くそうじゃな。」

 ゲン・ガンのギルドにて、バーテンダー兼ギルドマスターのローパーと土魔術師の黒鵜でぶつくさと喋りながら小さな魔鋼石の映像を見ていた。既に魔鋼石の映像を映し出す技術はエレボスより輸入されており、ゲン・ガンの富裕層等には先の映像が見られていた。無論、ギルドも例外ではないが、広場に設置された魔鋼石程の大きさをギルド内に設置することは難しいので解像度の高い小さな魔鋼石をギルド内の天井付近の隅に設置していた。

 と、カウンターテーブルをナプキンで綺麗に拭いているメイドが呟く。

 「ローパーさん、手が止まってますよ?」

 「ぅお、すまねぇなサーシャちゃん。しかし、結構板に付いたなその制服。」

 「えへへ、そうですか?私、こう見えて館で教わってましたからね。」

 「サーシャちゃーん、こっちにエールちょうだーい。」

 「はーい、ただいまー!」

 ナプキンを綺麗に折り畳み、パタパタとエールを注いで運んでいくサーシャ。それを横目に微笑む黒鵜とローパー。と、ギルドの門扉が開く音を知らせる鈴が鳴り響く。ローパーが扉の方を見やる。そこに立っていたのは。

 「お、煉じゃねぇか!随分と逞しくなったもんだな!」

 「ふぅむ、あの時の少女も一緒じゃな。ゲン・ガンに送り込んだということかのぅ?あのジェン・ヨウも悪知恵が働くようじゃ。」

 「そう警戒すんなって、黒鵜さん。おい、サーシャちゃん!煉が帰って来たぞ!」

 煉という単語にサーシャはピクりと動き、ローパーを見て、指された方を見つめる。そこには穏やかな笑みを浮かべて少し背丈が伸びた彼の姿が在った。居ても立っても居られずに走り出して、煉へと駆け寄って抱き着いた。

第二話読んで下さりありがとうございます。作者のKANです。初めましての方は初めまして。

 ふはは、またひと月跨ぐ所でしたが、なんとか仕上げましたよ、ええ(自画自賛)

 と冗談はこの辺で。リアルでの事情が重なり執筆する時間がなかなかとれなかったのが本音です。スランプはどぶに投げ捨てたいです。

 次回の更新はどうなるかはわかりませんが、12月中にはある程度の話数を投稿したい所存です(切実)

 では、次回の後書きでお会いしましょう。ではノシ

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