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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

守人《まもりびと》

作者: 能代 多摩

注;この作品はフィクションです、実際の人物、

団体、歴史などとは一切関係ありません。

「くそっ、こんなところで死ねるかっ」

唸るエンジンの音、飛び交う機関銃弾の硝煙の匂い。そう、ここは戦場だった。

愛機の一式戦で哨戒に出ていたところを敵の空母機動部隊の哨戒機に捕捉されてしまったのだ。

「飛行場、応答求む、繰り返す、応答求む」

『ガー、』

「くそっ、このオンボロ通信機め!」

普段から雑音の多い通信機は大事なときに完全に雑音のだけになってしまった。

「誰か、離脱し......」

「少尉さん、敵機後方、回避運動を!」

「なっ」

急いで操縦桿を手前に引く、だがその行動は敵機から見て被弾面積を増やすだけのものだった。

上に見えている敵機の翼の一部が白とも赤とも取れる色に光る。飛んできた真鍮色の物体が硝子(ガラス)に当たる

防弾硝子ではないその透明な板は簡単に穴が開き自分の体の中心に吸い込まれていく。

「だ...誰か...き...ちへ......」










1942年某月某日午後3時30分太平洋南部

「なあ、お前聞いたか?」

「何を」

「その様子じゃあ知らないな、なんでも今朝哨戒に出た奴らがまだ帰ってきてないらしい」

「なんっ」

「噂じゃあもうすぐ定期便が復活するって話だ」

「それは本当か?」

「あぁ、なんでも上層部じゃもう対策を検討中らしいぞ」

「おおーい、早く行くぞー」

哨戒に出る小隊のやつが叫んでいる。

「おっと、じゃあ話の続きは帰ってきたらだな」

「あぁ、わかった」










その後俺は現地の人たちが作った村へ来ていた。

「おう、いらっしゃい」

現地の人々が作った村といっても規模はそこそこ大きな村で、基地の下士官などが持ち寄った酒などを扱う飲み屋もある。

「いつものを頼む」

「ああ、ウイスキー12年だな」

コップに薄いオレンジみのかかった液体が注がれて出てくる。此処は海軍の連中も来る場所だから陸海どちらの酒も揃ってる。たまに来ると陸軍のと海軍の垣根を越えて仲良くしている光景が見られる珍しい場所だ。

「なあ、さっき昭三(しょうぞう)のやつが来てこいつを置いていったぞ。同じ陸軍のやつが来たら渡してくれって、俺には何に使うのかさっぱりだがな」

「昭三が?、昭三は確か今日未帰還だったぞ」

「残骸から歩いてきたんじゃないか、あの体力馬鹿だったらやりかねんぞ」

「はっはっはっ、違いない」

渡されたのは楕円形の金属の板、板には[(あずま)昭三]の文字。

この板の文字は......。

「これは...っ、あいつは今どこに!」

「お、おう。あいつならこれを置いたら浜は行くっつって行っちまったぜ」

「なんっ、あの馬鹿野郎!」

思わず勢いよくドアを蹴り開けて走り出す、確か奴が浜と言ったら基地の近くあそこしか無い、奴はよくそこの夜景を見ながら酒を飲んで故郷の話をしていた。

「冗談にしても趣味が悪いぞ、クソがっ」










たしかに昭三の奴はそこにいた、いつものように浜で夜景を見ていた。たが、そこにはいつものような元気さは無かった

「よう、元気だったか?」

奴は飄々(ひょうひょう)とした笑顔でそう言った。

「あぁ、元気だよ。お前はどうだ?やけに元気がないじゃないか」

「はっはっは、確かにそうかもなぁ。」

「で?いきなりどうしたんだよ、店主のおっちゃんにあんなモン渡して、悪戯(いたずら)にしても度が過ぎてるぜ」

「それなんだがな、コイツを見てくれ」

そう言って奴が渡してきたのは一枚の絵葉書、そこに書かれているのは長閑(のどか)な田園風景。

「その絵は俺の妹が描いてくれたんだ、アイツは昔から絵がうまくて別嬪(べっぴん)でなぁ、そんな奴だから今度嫁に行くことになったらしいんだ。」

「あ、あぁ」

「だから俺はあいつのいるお国を守り抜いてあいつに幸せな夫婦生活を送って欲しいんだだけどもうその夢もかなわないかもしんねぇ」

「?」

「だから、だからせめて俺はこの場所を守り切ってみせるよ」

「おい、それはどういう事だ、叶わないって......」

「俺はもう、いかなきゃな...」

そう言って奴は振り返るとどこへでもなく

歩き出した。

「お、おい、待てよ......」

そこで俺の視界は暗転した。










「はっ」

起きるとそこはいつもの兵舎だった

「夢、か?」

「朝っぱらから何言ってんだ?早くいかないと朝飯に遅れちまうぜ」

「あ、あぁ」

夢にしてはあまりにも鮮明だ、だが現実にしてもあの後ここまで帰ってきた記憶がない。

「なぁ、俺は昨日どうやって帰ってきた?」

「はぁ、お前さては昨日飲みすぎたな?お前なら昨日青ざめた顔して帰ってきたから心配してたが、ただの飲み過ぎなら心配するまでもなったか」

「あ、あぁ、ありがどう」

では昨日のあれはなんだ、まさか本当に夢だったとでも言うのだろうか。見れば昨日渡されたままのはずの写真も手元にはない。

だか、俺の思考はいきなり遮られた。

『ウー』

『空襲警報発令、航空隊は直ちに出撃、迎撃を開始せよ』

「クソッ、今日から空襲再開かよ!」

「いいから早く、迎撃に上がるぞ」










迎撃に上がるともう空戦が始まっているようだった、

「?、誰が上がったんだ、俺たちが最初のはずだが、まぁいい、数が多いに越したことはない、小隊各機続け!」

戦闘を開始してしばらく経つと直ぐに違和感に気づいた、敵の数が減るのが早すぎる、しかもその落ちて

いく敵の大半は自分たちではなく、最初からいる連中にやられている。

「どういう事だ?」

そう呟いた時、僚機(りょうき)からの声が聞こえた。

『おい、あれを見ろ!、あの連中の尾翼...』

「?」

言われるままに元からいる連中の隊長機の尾翼を

見る、そこに書かれているのは機体番号、だがその番号は今は欠番のはずだ、だが肝心な搭乗者の顔はここからでは見えない。










空戦が終わった、見ればこちらの機で落ちた者はいないようだった、基地の滑走路も無事なようだ。

そこで俺は部活には先に降りていろと言い、奴の元へ近づいて行った。昨日撃墜され今は欠番のはずの

機体、東昭三のはずの機体の元へ。風防(ふうぼう)を開けて声を掛けようとする。だが奴は返事をせず、

また表情も逆光のせいでよく見えない。

「あ、おい」

そのまま奴は降下して着陸体制に入った、話は地上で、とでもいうのだろうか。

だがその時不思議なことが起こった、奴の機体が地面に触れたと思った途端に消えてしまったのだ、俺は

一瞬また夢を見ているのかと思った、だがそうではないようだ、着陸を待っていた地上要員たちもが驚いて固まってしまっている。奴に続いた僚機たちもどんどん消えてゆく。

“ 俺はこの場所を守り切ってみせるよ”

俺には確かに奴の声が聞こえた気がした。










「この基地は終戦までこの英霊たちに守られていたおかげで敵の手には落ちなかったそうじゃ」

「おじいちゃん、続きは続きは?この生き残った人はどうなったの?」

「はっはっは、その人は戦争をなんとか生き延びて今では孫たちに囲まれて幸せにしておるよ。さて、これで話はおしまい、他の話はまた明日じゃ」

「うん、また戦争のお話聞かせてね」

「あぁ、もちろんじゃよ」

そう、私はこの話を語り継がなければならない、あの戦争で散った多くの命のためにも、この先の未来のためにも。

この話は7年ほど前にネットで見た太平洋戦争の

伝説を参考に書いた作品です。7年も経つと記憶が結構曖昧なのでほとんど自分の創作だったりしますが、大筋は同じはずです。

久しぶりに描いので誤字などが多々あると思いますが感想と一緒にどんどん報告してくれると嬉しいです。

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