↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれてすぐ捨てられた王子の僕ですが、水神様に拾われたので結果的に幸せです。  作者: 日之影ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/25

25.誓い

 水も集まり凝縮すれば岩をも砕く。

 研ぎ澄ませば鋼鉄をも貫くことができる。

 水は流れ変化するもの。

 一つの形に留まらず、幾重にも姿形を変え性質を変える。

 そして水は重い。

 濡れれば濡れる程に身体は重くなり、冷たさで体温を奪っていく。


「僕の戦いは水そのものなんだ。人と戦っているつもりなら考えを改めた方が良い」

「っ……」


 吹き飛ばされたシャドウが片膝をついていた。

 口からは血を流し、睨むように僕を見る。


 驚いたな。

 気絶させるつもりで殴ったのに。


「そうか。身体に影を纏わせて衝撃を抑えたんだね」

「その通りです。ただ完全には防ぎきれませんでしたね……お陰でこの様だよ」


 シャドウが抑えている腹は、纏っていた影が剥がれ落ちていた。

 殴った感覚からして、内臓の一部が傷ついただろう。

 肋骨も何本か折れる音がした。


「勝負はついた。僕の勝ちだよ」

「ええ、私の敗北です」


 そう呟いた彼から敵意が消失している。

 敗北を認める程には潔いみたいだが、不敵な笑みを武器君感じた僕は、未だに警戒を解くことが出来ない。


「そう警戒しなくとも、私に戦う力は残っていませんよ。戦いは私の負けです」

「……なら」

「今回はね?」


 シャドウの背後の空間に亀裂が走る。

 鏡が割れるような音が響き、亀裂が開いて空間に漆黒の穴が空く。


「何だ……あれは」

「私の術式ではありませんよ。これは我々が持つ加護です」

「加護?」


 開いた黒い穴から感じ取れるのは魔力ではない。

 シャドウもわずかに宿している神力と同じ力を、あの穴から感じる。

 彼らの後ろにいる神の加護ということか。

 不敵な笑みの理由が分かった。


「いずれまたお会いしましょう。貴方はこちら側に来るべきだ」

「待て!」


 僕の声は届かず、シャドウは漆黒の穴に呑み込まれて消える。

 追いかけようとした僕は、その不気味さに一歩が出遅れた。

 気付けば空間は元通りになり、シャドウの気配も消えてしまう。

 呆然と立ち尽くしていた僕はミラのことを思い出し、急いで彼女の元へとかける。


「ミラ!」

「大丈夫よ。傷は治癒したわ」


 母さんにそう言われてホッとする。

 ミラは母さんの膝枕でスヤスヤと寝息をたて眠っていた。

 穏やかな寝息を聞いて、彼女の無事を実感する。


「良かった」


 もしも彼女に何かあっていたら、僕の人生は後悔に染まっていただろう。

 そしてあの男を酷く憎んだのだろう。


「ありがとう母さん」

「ううん。あの人は行ってしまったのね」

「うん。ねぇ母さん、母さんは知っていたの?」

「いいえ。私の眼にも映らなかったわ」


 母さんはそう言って首を振る。

 水神である母さんは、水のある場所であれば世界中どこでも見渡すことが出来る。

 それに移らないということは、水が全くない場所にいたのか。

 あるいは母さんと同じ神の力を持っていたのか。

 今回の場合、おそらく後者だろう。


「神の代行者……僕たちの見えない所で、良くないことが起こっているのかな」

「そうかもしれないわね」


 戦いは終わり、僕も二人無事だ。

 勝者となったのは僕なのに、漠然とした不安のほうが強い。

 

  ◇◇◇


 ベッドで眠っていたミラが、扉を開ける音に反応した。

 ゆっくりと目を開け、部屋の明かりと外の暗さを交互に見ている。


「ここ……」

「気が付いた?」

「アクト?」


 扉を開けた僕と目が合う。

 あれから半日が経過して、ついさっき夕日が落ちたばかり。

 そろそろ目が覚めるんじゃないかと思って、母さんに頼んで食事を用意してもらった所だ。


「食べる? 食欲ないなら無理しなくて良いけど」

「ううん、何かお腹空いてるみたい」

「そっか」


 彼女はベッドに腰掛けたまま、母さんが用意したおかゆを口に運ぶ。

 身体の調子は良いらしい。

 怪我も完治していて、痛みもないという。


「あいつは?」

「君を刺した男なら追い払った。というより逃げられたよ」

「そっか。みんな無事なら別にいいよ」


 一番痛い思いをしたのは彼女なのに、他人の無事を喜べることを尊敬する。

 ただそれ以上に、申し訳ない気持ちが溢れてくる。


「本当にごめん。僕が間に合っていれば君が痛い思いをしなくてすんだのに」

「ちょっ、謝んなって! 私が勝手にやったことだしさ」

「それでも君が守ってくれなければ、母さんが死んでいたかもしれない。君は母さんの命の恩人で、それは僕にとって自分の命の恩人に等しい」


 だから僕は決めていた。

 彼女が目覚めたらこう伝えようと。

 まずは感謝を。


「ありがとうミラ。僕の大切な人を守ってくれて」

「うん」


 続けて彼女の手に触れ、誓いを。


「あ、アクト?」

「君にはもう、痛い思いなんてさせない。たとえこの先何があろうとも、僕が君を守ると誓うよ」

「な、なっ……」


 ミラは過去最高の赤面を見せてくれた。

 それを見た僕も恥ずかしくなる。

 自分の言葉がプロポーズじみていたことに、後になって気が付く。


「い、今のはその……他意はないから」

「わ、わかってるって! ありがとな、アクト」

「うん」


 彼女は笑顔を見せる。

 性格も容姿にも、何もかも違う。

 だけどこの笑顔だけは、母さんの笑顔とよく似ていた。

 他意はない……そう、他意はない。


 今はまだ。

 

連載候補短編を投稿しています!

本日投稿はこちら!


『攻撃は効かない……霧だから! ~強くなった俺たちに逃げる専用の【霧隠れ】なんて不要とパーティーを解雇された私ですが、二年間の修行で体を霧に変化できるようになったので実質無敵です~』


ページ下部にリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載候補短編を投稿します!
(6/24)攻撃は効かない……霧だから! ~強くなった俺たちに逃げる専用の【霧隠れ】なんて不要とパーティーを解雇された私ですが、二年間の修行で体を霧に変化できるようになったので実質無敵です~

(6/25)神様に愛されなかった少年は地獄の悪魔たちと相性抜群だったようです ~才能ゼロで仲間に裏切られ地獄に堕ちた僕は、ユニークスキル『憑依』で悪魔の力を借りて無双する~

(6/26)悪い子たちのダンジョン略奪記 ―報酬を独り占めしようとする国より先に、ダンジョンを攻略して世界最強を目指せ!―

(6/27)転校したくない幼馴染に結婚を迫られたので、一先ず同棲から始めることにしました

(6/28)僕のデバフでステータス99%カットしてたんですよ? ~立っているだけで何もしてない役立たずは不要とSランクパーティーを追放されましたが、楽勝な理由は僕がデバフで弱体化させたお陰と気付いたってもう遅い~

最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

アース・スターノベルにて一巻(5/15)発売!
6x5a0f6eb3ndd9a6vererpjhthd_1ba8_ww_1as_

BKブックスより5/1発売!
6cag3px4jd6ohhw77s7b4yyv8f8h_1dqc_160_1p

月刊少年ガンガン五月号(4/12)にて特別読切掲載!
html>

カドカワブックスより第一巻好評発売中!
322009000223.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。