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生まれてすぐ捨てられた王子の僕ですが、水神様に拾われたので結果的に幸せです。  作者: 日之影ソラ


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15/25

15.ミラの故郷へ

 二次試験は無事に、とは言い難いけど一先ず終了した。

 あれから僕は六人、彼女も四人のバッチを破壊している。

 彼女への手助けは負った傷の回復だけで、四人は自分の力で倒した。

 魔力に優れた貴族との戦いも、横やりがなければミラが勝っていたし、彼女の強さは本物だ。

 きっと試験のために努力したんだんだと……彼女の戦いを見てよくわかった。


 それから夕方まで時間が経過し、僕たちは王都の商店街にあるちょっと古めな食事処に足を運んだ。

 さすがに疲れたのと、落ち着いた場所で話がしたかったから。

 試験が終わったからなのか、ここまで節約して使っていたお金を一気に使い、豪勢に飲み食いする。

 僕は母さんの食事のほうが美味しくて乗り切れなかったけど、ミラは僕が見ているも気にせず食べまくっていたよ。


「ぷっはー……もうお腹いっぱいだ」

「すごい勢いて食べてたね。そんなにお腹減ってったの?」

「まぁな。お前と別れてから何も食べてなかったし」

「あの日から!?」


 あれから二日以上経っているけど?

 

「それは……お腹も減るね」

「うん。でもお腹減ったのはお前と話してからだ。それまでずっとお腹なんて減らなくてさ」

「ミラ……」


 それほど俺に言ったことを気にしていたのか。

 やっぱり彼女は優しい。


「じゃあお腹も膨れたことだし、君の話を聞いても良い?」

「私って言うかお母さんのことだろ?」

「うん。その後でミラのことも話してほしいな」

「……私のことなんて話すことないぞ」


 とか言いながら彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 話せることだけで良いと僕が言ったら――


「おかしな奴だな」

 

 彼女は優しく笑う。

 その笑顔は少しだけ、母さんの笑顔に似ている気がして、何だかホッとした。

 それからミラは、自身の母親について語り出す。


  ◇◇◇


 私の家は裕福なほうじゃなかった。

 お父さんは私が五歳の時、どこかへ行ってしまった。

 弟は一歳で、妹はまだ生まれたばかり。

 残された私たちを守るために、お母さんは毎日働いていた。


 お母さんには日課があった。

 それは朝起きてすぐ、家の外に出て手を組み祈りを捧げること。

 ある日お母さんに、何をしているのかと聞いたことがある。


「神様にお祈りをしているのよ」

「神様? どこにいるの?」

「普通は見えないの。でもどこかにいて、私たちを見守ってくれているの」

「本当? じゃあ私もお祈りする!」


 一緒に手を合わせても、神様の存在なんて感じない。

 だけど幼い私はあ母さんが言うなら、神様もいると思っていた。

 祈り続ければ、正しく生きていれば幸福になれる。

 そう信じて、私たちのために頑張るお母さんのお手伝いをしていた。


 でも……


 お母さんは突然倒れた。

 無理をし過ぎたんだ。

 村にはお医者さんもいないから、離れた街まで行ってみてもらった。

 そこでお医者さんが厳しい顔で言った。


「この病は原因がわかりません。治すことは……難しいでしょう」


 私は絶望した。

 言葉の意味が解らない弟たちも、お医者さんの雰囲気を怖がって泣いた。

 それなのにお母さんは優しく笑っていた。


「大丈夫よ。ちゃんとしていれば、神様がきっと助けてくれるわ」


 そんなの嘘だと、私は言いたかった。

 今まで祈りを捧げても、一度だって神様は現れない。

 お母さんは神様を信じて、毎日直向きに生きてきたはずだ。

 どうして神様は助けてくれなかったの?

 そんなの決まってる。

 神様なんて本当はいなくて、祈った所で掬いなんてないから。


 だったら私が助けてみせる。

 魔術を学んだのも、最初はお母さんを助けたかったから。

 でも私には回復魔術の才能はなかった。

 次に考えたのは、お金をかけて最先端の治療を受けることだ。

 お医者さんはわからないといったけど、もっと細かく調べたり、最新の技術があれば治せるかもしれない。

 王立魔法学園の存在を知ったのはこの時だった。

 

  ◇◇◇


「学園に入学したら魔術師として依頼が受けられるからな。そのお金で良いお医者さんを雇いたかったんだ。それに他の魔術師なら助けられるかもしれないって」

「それで試験を受けに来たのか」

「うん。お母さんには……本当のことを言ってない。言ったら止められると思ったし」

「優しいお母さんなら心配するだろうね」


 僕の母さんだって、いつも僕の心配ばかりしていた。

 きっと彼女のお母さんも同じなんだ。

 そんな優しい母親だからこそ、僕たちは無理をしてでも助けたいと思える。


「病っていうのはどういう症状なの?」

「えっと、風邪みたいに高熱が出て、身体に赤い痣が出来てる」

「赤い痣か」

「お医者さんも見たことないって言ってた。新種の病気かもしれないって」


 病についてはあまり詳しくない。

 母さんのお陰が、家にいることは病気も怪我もしなかったし。

 

「どういう病気かわからなくても、病気なら何とかなると思う」

「ほ、本当か!?」

「うん」


 僕ではなく母さんの力なら、どんな病気でも治すことが出来る。

 とは言えまず、彼女のお母さんの状態を確認しないと始まらない。


「一度お母さんに合わせてもらえないかな? 出来ればすぐに」

「う、うん! じゃあ今から行こう!」

「今からって、夜だけど寝なくて平気?」

「大丈夫! 今の話聞いたら眠くなんてならないって!」


 元気になったミラはそそくさと立ち上がる。

 お題はすでに払ってあるから、そのままお店の出口へ向かう。


「おい早く! アクト」

「――ああ」


 僕も立ち上がる。

 ようやく名前を呼んでくれたことが嬉しくて、小さく微笑む。

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