闇の御子
身の内から溢れた闇がルイの服を黒く、そして高貴に塗り替えていく。 空の黒雲が渦巻き、周囲の地面が、影を伸ばすように色を失っていく。
石畳が灰色を失い白く、地面に落ちた赤い果実が灰色に死んでいく。 地面に横たわるマブタの服と血が、黒くなった。
侵食は更に広がり煉瓦を灰色に、赤い屋根を黒へ。
「な、なにが起きてる……!?」
ショウドウが狼狽える。 まるでモノクロの世界だ。
ルイが身の内の力に悶え、絶叫を上げる。 金色の御髪が銀色に染まり、吠えただけの衝撃でマブタやショウドウたちは容易く身を空中に投げ出された。
露店に突っ込みながら、マブタはルイの青の瞳がオレンジ色に変色するのを見た。
(殺す、殺す。 今日こそ、全員、殺す!!!!)
左目のすぐ下に一筋の切れ込みが現れ、開く。 目だ……漆黒の。
黒い目の中に、オレンジ色の球体がぎょろぎょろと動いて辺りを見渡していた。 あまりに不気味で、あまりに神聖すぎる力。 存在するだけで彼女は世界の色を殺していく。
今一度、至高神の一部は空に向かって吠える。 手の中に闇を現し、振り回す。
「殺してやるッ!!」
「逃げてッ!!!!」
闇は鞭の如く細長く引き伸ばされて、一直線に広場の外へ。
マブタの忠告が間に合うはずもなく、漆黒の鞭は屋根の上にいるラフィアナの腰に巻きついた。
ルイは力任せに鞭を振りかぶって叩きつける。 鞭の先端に括りつけられたラフィアナの身体は上空に放り投げ出され、その後建物をぶち破って地面に墜落した。
悲鳴が崩落の音に掻き消されるが、ルイは止まらない。
「ラフィアナッ!!」
鞭は真横に振り回され、ラフィアナの身体を以って周囲の建物を破壊していく。
「ルイ!!!!」
「私の復讐の邪魔をするな!!!!」
ルイは再び鞭を振り上げ、叩きつける。 弱りきったラフィアナが噴水の柱を砕き、ようやく鞭の拘束は剥がれた。 ラフィアナは噴水の縁に捕まって何とか立ち上がろうとするが、最早戦える状態ではない。
「テメェ!!!! ラフィアナに、何してる!!!」
「ルイ!! やめるんだ!!」
「黙ってなさい!!!!」
ショウドウとマブタの怒号が、憎しみの波動に打ち消され、鞭がしなる。 先端がショウドウの体に弾けると、鎧が容易く砕け散り、残った金属はそこから白く変色する。 鞭が立ち上がりかけたマブタや呪文を詠唱しようとしたカナタを打ち据えた。
肌があえなく削げ落ちる。
その威力のまま蛇のようにうねりラフィアナを何度も叩き伏せる。
神装で強化されているとはいえ、最早生物に耐えきれる攻勢ではない。 それでも弓を構えようとしたラフィアナの腕に鞭が巻きつき、
「やめろッ!!!!」
マブタの叫びを無視して、ラフィアナの腕がへし折れる音と絶叫の後、ラフィアナは地面に倒れ込む。 鞭が消え去るが、拳を固めたルイはラフィアナへと距離を詰める。
「テッッッッッッメェ!!!! 絶対許さないッ!!! 『雷光よ、打ち砕け』!!」
カナタの周囲に顕現した赤い稲妻がルイを穿つ。 命中し、ルイは動きを止める。
「……ほざけ、虫けらども」
カナタの攻撃が効いたからではない。 ルイがただ標的を変えるために立ち止まっただけだ。 左目の下にある目玉がカナタを見つける。
「それは私の言葉だッ!!!」
ルイが方向を変え、唸りながらカナタへ疾走する。 足が地面に触れる度に石畳が粉砕する。 赤い雷を絶え間なく二度三度と重ねていくが、ルイはそのまま走り続ける。
高貴なままに、獰猛なままに。 血を流すことなく。
「下がってろッ!」
カナタの目に恐怖が浮かぶ瞬間、ショウドウが間に割って入る。 だが、ルイが横薙ぎに払った拳が、ショウドウの巨体を容易く吹き飛ばした。
「ルイ!!!! 止まれッ!!!!」
「ひっ」
カナタが小さな悲鳴を上げたと同時、ルイの手がカナタの胸倉を掴んだ。 ローブを白く染めながら、ルイはカナタを地面に叩きつけた。
地面が円形に抉れ、中心部のカナタの口から赤黒い血が飛び出した。 多少の身体強化魔法しか付与出来ない後衛に向けるにはあまりに破壊的な力だった。
『女王様があれだけ御腹を痛めて生まれたのがあの出来損ないか』
過去の記憶がルイの怒りをさらに焚きつける。 ルイの脳裏に過る悪意たちがマブタの頭をも掻き回して頭痛を起こし、あまりの痛みにマブタは起こしかけた体を再び転ばして頭を押さえた。
ルイは何度もカナタの腹を踏みつける。 恐怖の悲鳴は徐々に小さくなっていき、喉を嗄らすほどやめろと叫ぶマブタの声をルイは無視し続ける。
『闇の女だ、近づくと闇が移る』
「死ね……死ね!!」
『へへ、世間知らずの小娘なんて、コロッと騙されやがる』
「くたばれ、このォ!!」
「もうやめろ!! 頼む!!」
ルイは虫の息のカナタに馬乗りになる。 拳を顔面に打ち込む。 カナタは本能で拳を腕で庇うが、腕の骨が砕け、か弱い声を上げた。 ルイはなおも拳を振り上げる。
「このォ、化け物がッ!!!!!!」
高速で肉薄を終えたショウドウが、背後から炎を纏った斧を振り下ろしていた。 あっと声が出るが、妙な音とともに、ショウドウの刃はルイの首元で止まる。
『化け物だ』『王家の裏切り者』『化け物』『言葉なきものの仲間だ』
「化け物ですって…………?」
ルイは防御も何もしていない。 ただ、刃がルイの肌を斬れなかった、それだけ。
『化け物』『怪物!』『飼い慣らしたゴブリンで夜を慰めてるらしい』『化け物』
『…………私はあなたのことを、愛していますよ』
「化け物はお前たちの方だッ!!」
ルイの怒りに身を内側から引き裂かれるような痛みに苛まれ、マブタは叫ぶ。 同時、ルイが斧の刃を掴むと、刃が砕け散った。 立ち上がり、ショウドウの腹目掛けて叩き込まれた憎悪の拳は、空気を振動させるほどの威力で大男を一撃で沈める。
そのまま衝撃に運ばれることを許さない。 ショウドウが後方に揺らめいた瞬間、ルイは距離を詰め大男の腕を片手で掴む。 その剛腕を引き寄せ、膝を腹部に突き刺した。
マブタの側に吹き飛ばされてきたショウドウは、呻き声を上げてルイに復讐しようとするが、体の内側を破壊されて立ち上がることが出来ない。
露店の木材を押しのけながら地面を這うマブタ。 ルイの雄叫びが街を覆い尽くし、ショウドウとの間に割って入ったマブタを踏みつぶす勢いで地面を駆ける。
しかし、その足が、不意に止まった。 マブタもその聖なる気を感じ、広場の入り口を見やる。 一人の少女が、目を見開いてルイを睨んでいた。
妙な制服に身を包み、ウサギ耳のようなリボンを頭につけた少女……ナナセ。
両目から大粒の涙が流れ続けている。 ……ルイは、突如現れ、何も知らぬままに偽りの光の中で笑顔を浮かべるナナセのことが嫌いだった。
そんな彼女は、仲間たちの惨状を見て肩を震わせ、叫んだ。
「私の仲間に…………何をしているんですかッ!!!!」
俄かに黒雲が割れ、青い空が姿を現す。 生きた色を、久しぶりに見た気がした。
雲の割れ目から差す暖かい光が、ナナセの服装を作り替える。
白く、より清らかに。 突然流星に乗ってやってきた救世主。 そんな彼女に与えられたのは、マブタと同じ、与えられることのない光の神装。
その聖なる姿は、返って対峙する獣の闇を強める。 ルイは湧き上がる力の奔流に平静を欠き、反響する悪意たちに身を詰られながら獣と同じ声を上げ、ナナセへと肉薄する。
ナナセは手に顕現した獲物をルイに向けた。 見慣れない白銀色の武具だ。 形状としては城の防衛に使われる大砲を、限界まで小さく手に持ちやすい形に改良したものだろうか。 小さく口を開けた砲門が、ルイを正確に捉えている。
ナナセは持ち手に付いた引き金を迷いなく押し込んだ。 耳をつんざく轟音。 鉛の代わりに放たれた光の粒が、一直線にルイの肩を撃った。
着弾した弾丸は体を貫くことなくその場で霧散、ルイはわずかに怯みながら距離を詰める。 続く弾丸の数々も命中するが、怒りに狂う獣は怯みながらも決して止まらない。
ルイが距離を詰め切り、拳を乱暴に殴りつける。 ナナセは空いた手で拳をいなし、続く攻撃も体を畳んでやり過ごす。 ルイの攻勢は止まらない。 呼吸する暇もない。
ただ破壊衝動に身を任せ、怒りを相手に叩きつける。 何度も、何度でも、相手が壊れるまで。 対するナナセの心は弱かった。 戦闘の圧に心が軋み、目からは涙が落ちる。
しかし、大切な仲間を傷つけた敵を前に、壮絶な気合を見せつけた。
ナナセは太腿に巻きつけた空の入れ物に獲物をしまいこみ、近距離の攻防に強く出る。 ショウドウの鎧を一撃で砕いた拳を何度も凌ぐ。
『神が遣わした聖女だ!』『必ずや世界を救ってくださる』『それに比べて……』
ルイはそんなナナセを前に攻勢を崩さない。 防御を考えていないが故に逆に隙間を縫った反撃を許さず、暴力に暴力を重ねて、ただ相手を潰すために拳を振るう。
ナナセが体勢を崩しながら振るった拳がルイの腹を捉える。 ルイが後ずさり、ナナセはその機会を突き詰める。 ルイの側頭部目掛けて足をしなやかに蹴り上げるが、ルイは即座に立て直して腕で健脚を防いだ。 一瞬の揺らぎから、ナナセも攻めの姿勢に転ずる。
二人の闘気と闘気が幾度となくぶつかり、ルイの拳を受けても、ナナセは歯を食いしばって隙を覆い、獣に拳を振るった。 再度の激突で、二人は真反対に弾き飛ばされる。
ルイはその足で持ちこたえ、ナナセは尻餅をつきながらもすぐに起き上がった。
「……ッ、『神装を、この手に』!!」
ルイが獰猛に吠えて距離を詰める間に、ナナセは天上の加護を仰いだ。
……すでに、光の神装を纏っているにも関わらず、だ。
ナナセの姿が突如現れた闇の中に紛れて掻き消える。 間髪入れずにルイの背後に収斂した闇の中から、ナナセが姿を現した。 轟音の後、ルイの背中で弾丸が黒く爆ぜる。
ルイは一歩だけ足をよろめかせ、苛立ちの声を上げながら振り返った。 ナナセが纏う漆黒の装衣は、まさに闇の神装そのもの。 人間が授かる奇跡は、たった一つのはずなのに。
そんな常識を嘲笑うように、今度は可視の風が吹き、ナナセの装束を露出のある緑の装衣へと塗り替えた。 砲門から風の一閃が弾け、放たれた緑の弾丸は周囲の空気を巻き込んで巨大化する。
ルイは吠え、腕を交差させながら駆け出す。 巨大な風の奔流と激突し、わずかに体が後方に反れるが、一秒程度の拮抗の末、ルイが腕を振り払うと弾丸が消えてなくなった。 拳銃をしまい、ナナセは再び別の神への祝詞を唱えた。
周囲の抉れた地面から露出した土がナナセの体に集まって覆い、瞬時に砕け散る。
形成された黄土色の鎧を以って、ナナセはルイを迎え撃つ。
今度は土の神装か。
「…………く」
マブタの口から悔恨の空気が漏れる。 体は重く、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
ルイの叫びが頭の中と外で何度も浮かんでは消える。 銀色の髪を振り乱し、怒りのままに荒れる少女。 闇が彼女の憎しみに共鳴し、蝕みながら怒りを爆発させていく。
その憎しみから生まれた暴力こそが、彼女の望みだった。 だが、到底看過できない。
「ルイ」
マブタは彼女の名前を呼ぶ。 看過できるわけがないのだ。 彼女が今、己の望みを実行し、憎しみを解き放ち――そして、幸せそうな顔をしていなかったから。
このままにしておけない。 これ以上ルイの憎しみを募らせることも、世界にルイを憎ませることも許しておけるか。 それがエセリアとの約束――いや、それ以上に、マブタの想いだった。
ルイが絶叫し、目の前の怨敵を潰すために内側からさらなる闇の力が沸き上がる。
ギリギリで食らいついていたナナセだが、もはやこれ以上の均衡はない。
ルイの闇の力はこの世界の目線で語るなら無尽蔵に近い。 ナナセがいくら規格外に様々な神装を使い回そうと、ルイは無限に膨れ上がる力故に一貫した暴力でいずれナナセを潰す。
短い悲鳴の後、ナナセが倒れ込んだ。 ルイは容赦なく足の裏でナナセの神装を砕き、粗雑に蹴り飛ばす。 マブタは声を荒げて己を叱咤し、拳を地面に押し付けて体を支えた。
「やめなさい……!!」
腹を押さえて悶えるナナセの側に這いより、腕が折れてもなお庇うラフィアナ。 その目に宿る感情は敵意よりも、恐怖が勝っていた。 ルイの耳には聞こえていない。
聞こえたとて、憎しみを増やすだけ。
憎悪がルイの喉を震わせる。 マブタは同じくらい喉を振り絞って吠えながら、前のめりに身体を起き上がらせた。
「お願いします……ぼくに力を!!」
マブタの声を、至高神は聞き届ける。 雲が再び割れ、そこから差し込んだ光がマブタの体を軽くする。 ルイがナナセ目掛けて走り、マブタがルイ目掛けて走る。
ショウドウが背後で息を吞む音がした。 ルイが拳を振り上げる。 マブタの纏った服が白く書き換わる。 そして。
「うぅあッ!!!!」
真横から間合いに飛び込んだマブタは、勢いのままルイをその場から攫った。 倒れ込みながら体を捩じり、ルイを投げ飛ばす。 ルイは地面を転ぶが、両手をついてすぐに起き上がり、自分を吹き飛ばしたのがマブタだと知ると強く怒りの声を放った。
「マブタぁぁ!!」
左目の下の目玉がマブタを睨みつける。
「光の、神装……? そんな、バカなことが……」
カナタが潰れた地面から這い出て、驚嘆の声を上げる。 自分が散々醜いと思ってきた青年がそんなものを纏えば驚くのも無理はない。
だが、そんな視線に構っている場合ではなかった。 視界に迫る銀色の影。 防ごうと構えた腕が、拳に弾かれた。
腹を抉る痛みに襲われたと思ったら、顔面が殴りつけられていた。 歪む視界を安定させながら四度目の拳を避け、手首を掴んで動きを止める。
「姉さんの戯言を妄信するのも、いい加減にしろ……!!」
「ルイ、あなたは何も分かってない……!」
「分かってないのはアンタのほうよ!! この世界に光も、愛も、ない!!」
振り払い、突き飛ばす。 ルイがナナセたちに向き直り、唸る。
「こんな奴らを守る、アンタも、姉さんも、イカれてる!! 殺して、何が悪いのよ!!」
闇がさらに増し、ルイは歯ぎしりしてからナナセたちへ憎しみのまま駆ける。 覆い被さるように、マブタは後ろから追いついてルイにしがみついた。
マブタを振り払おうとする力はとても人間のものとは思えない。 体から漏れ出す瘴気は、光の神装で中和されなかったらすぐに昏倒するだろう。
もみ合い、もがき、それでも離さない。 肘が何度も腹を刺した。 口から苦い液体が零れる。 もみ合いながら、二人の位置が入れ替わったとき、マブタの拘束が剥がされた。
離れざまに肘がマブタの顎を打つ。
ふらつきながらも、ナナセたちの前でルイを迎え撃つ。 ルイが怒りの叫びを上げる。
拳を固く握りしめる。 こんなことは、絶対にしたくなかったが。
「分かっていない。 愛は、ずっとあなたの側にあったのに」
ルイの拳が眼前にある。 マブタは体を折り、拳を避けながら、返す一撃をルイの腹に突き刺した。 光が迸り、ルイは自分が行こうとした方向とは真逆に吹き飛ばされる。
地面を転がった後、ルイは血走った眼で石畳を握り潰しながらマブタを睨み付けた。
「愛ですって。 私を化け物の道に留めておくことが、愛だとでも……!?」
「周りを見てください!! 化け物は!! ……化け物は……あなたです」
崩落し、死んだ色の街。 そこら中にある破壊の痕跡。 負傷した冒険者たち。
ルイの目から、一瞬だけ毒気が抜けたような気がした。 黒の目玉だけが、ぎょろぎょろと世界を睥睨している。 だが、ルイはすぐに瞳に憎しみを蘇らせ、歯を軋ませた。
「この世界を壊せるなら、化け物でもいい。 悪しき化け物を殺すのに、聖人でいる必要なんてない!! 」
「あなたは正しくない! 全てを消し去ったあとに愛に気付いたって、遅いんですよ!」
「だから!! そんなものはないって言っているでしょ!!!」
ルイは拳を地面に叩きつけ、砕け散る石の雨の中で立ち上がった。 闇が膨れ上がり、虫のように虚空を泳ぐ。
「いいや、この世界にはある。 この世界にたった一人取り残されてから、気付いてほしくないんだ。 ……自分が潰してきたものの、尊さを」
「あるもんか!! 私は、誰からも愛されてなんかいない!!」
何故か。 初めて目を閉じたときに見えた満天の星空が、脳裏に浮かんだ。 穏やかで、どことなく切ない、静かな夜の世界。
愛などないと彼女は言うが、笑わせる。
あれだけの愛が隣にあったのに、気付かないとは言わせない。
「ぼくはあなたのことが、大好きですよ」
「そんな薄っぺらい言葉は聞き飽きたわ!!」
ルイが地面を蹴る。 風が蠢き、足が地面を踏み砕く。 マブタは、動くことなくルイを正面から見据えた。
「見せてあげます。 この世界の愛を。 姉の、愛を」
握り締めた手のひらを開く。 ルイは弓弦の如く拳を引き絞った。
迷いなく打ち込まれる拳。 マブタは開いた大きな手のひらで、ルイの拳を受け止めた。
半端でない衝撃が体を揺さぶり、口元から血が漏れる。 それでも、しっかりと、ルイの拳を握り締めた。 ルイが瞠目する。 二人の意識が、溶けあって一つに混じる。
心の声が聞こえるなら、語り掛けることもできる。 そんな思惑のまま、二人は意識の底で出会った。