学食の隣の席
「⋯あっ!」
「?」
朝の支度を終え、あと10分で出発というときに、私はあることを思い出した。
(お弁当⋯!)
「あのさぁ⋯今日お弁当ないんだけど⋯いい?」
とりあえずダメ元で交渉する。
「別にいいよ」
思いの外あっさりと受け入れられたことに驚いていると、海翔は「学食あるし」と言った。
そっか、その手があったかー!⋯って。
(どうしよう一緒に行ける友達いないんだけど)
「あ、ごめん凛は一緒に食べる人いないか⋯」
思ってもないくせにあわれみの表情しているところが余計に腹立つ!
本当、頭はいいくせに何で人の気持ち分かんないんだろ。いや、むしろ分かっててわざとやってるとか?
⋯いや、まぁそれは置いといて、ご飯どうしようか考えないと。
今からお弁当作れるもんなら作りたいけど、残念ながらご飯は冷凍しかない。
さすがにもうそんな余裕はないし、白米だけ入ったお弁当を持ってくのも⋯かっこ悪い。
この期に及んで恥とか言ってる場合ではないのだろうけれど、私は人一倍人の目を気にする人なんだから、しょうがない。どうせ私の弁当なんか誰も興味ないんだけどさ。
うーん⋯こうなったら、仕方ない!
*
(うわぁ間違えたーーーーー)
学食の校舎に行くと、既に人で溢れていた。
(人が少ない時間を狙って早めにきたのに!)
後で海翔に聞いたところによると、「人気メニューが売り切れないようにみんな早く来てる」らしい。もっと早く知りたかった⋯
何で私が人に会いたくないかと言うと⋯まあ、私に友だちがいないことから察してほしい。
気まずいけど、ここで引き下がるのもアレなので、仕方なく学食を食べることにする。運良く隅の席が空いていたので、そこに腰を下ろす。
(早く食べ終わらなきゃ⋯)
カレーを早食いし始めたとき、隣に人が座る気配がした。何となくそちらを向くと。
(!)
松谷くんだった。
向こうも私に気づいたようで、一瞬目が合う。でもすぐに、松谷くんは気まずそうに目をそらした。
(自分のせいなのに⋯こういうの見るとやっぱり何かヘコむな⋯)
(私のこと嫌いになっちゃったかな)
でも松谷くんはクラスの人気者で、私はただのぼっちで。仲良くなんかなれるわけない、なっちゃいけないんだもん。だから、距離置いて正解なんだよ。そう、正解。
⋯なのに。
どうしてこんなにモヤモヤするんだろう。
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