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距離感

 ホームルームが終わり、帰ろうとすると松浦さんと目が合った。



(チャンスかも!)



 じゃあね、と手を振ろうとしたその瞬間。


「エリっ、今日寄り道して帰ろ!」


 渡辺さんが松浦さんに声をかけたのを見て、結局何も言うことができなかった。

 微妙に上げてしまった手のやり場に困り、私はそっと髪を耳にかける。



(ダメだなぁ私⋯)



「さすが西澤」


 声のした方を向くと、松谷くんが含み笑いをしながら立っていた。


「⋯まぁしょうがないです、そういうこともあるので」


「そんなこと言って、逃げてるだけだろ。てか敬語やめる話どーなったんだよ」


 図星なだけに、余計腹が立つ。

何か言い返そうとして、あ、と気づく。



(距離を保つようにするんだった)



 周りを見渡したが、今のところ誰も不審に思っている様子はない。


「⋯もうすぐテストなので、帰ります。では」


「『もうすぐテストだから帰るね。じゃ』」



(?)



あ、言えってこと!?


「⋯⋯⋯もうすぐテストだから帰るね。じゃ」


「てかテストまだじゃね?あと1ヶ月くらいあるじゃん」


「あと1ヶ月しかない、でしょ。じゃあ帰るね」


 松谷くんの返事を聞く前にぱっと身を翻し、私は昇降口に向かった。



          *



「西澤ぁ、遅くね?」


 私が学校につくと、松谷くんが昇降口のところに立っていた。


「⋯何でそこにいるの?」


「特に理由はないけど?あっもしかして好かれてるんじゃないかとか思ってんの?ざんねーん、違いまーす」


「誰かさんじゃあるまいし、そんなこと思わないよ」


 ていうか、早くどいてほしい。


 距離保とうとしてるのにこれじゃ台無しだ。


「え、それまさか俺のこと?ひでぇ、てか思ったりしねーよ」


「⋯それと早く行った方がいいんじゃないの?結構時間遅いけど」


「1人で行けって言いたいの?目的地一緒なのに?」


 それを言われるとどうしようもない。

けれど今後もこんな風に待たれたりしたら困るし⋯



(ていうか、何で松谷くんはこんなに私に絡んでくるんだろう)



 自意識過剰だったりするのかな。実は私が見てないだけでクラスメートみんなに結構絡んでて、私もその内の1人、みたいな。



───でも、自惚れってわけじゃないけど私に絡む頻度多すぎる気がするんだけどなぁ⋯



 そのときふと視界にクラスの男子が移った。



(やばい、見られたらやばい!)



「は!?おい⋯」


 松谷くんの驚く声を背中で受けながら、私はダッシュで教室に向かった。



(私みたいな陰キャが松谷くんみたいな陽キャと関わっても、何もいいことないもん)



 委員会以外では話さないようにしよう。


山本さんみたいな人が他にもいるかもしれない、というかいるだろうし。

認めたくはないけど松谷くんはイケメンだから(性格のぞく)。



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