周りからの目
「よっ」
朝学校に着くと、松谷くんが昇降口のところに立っていた。
「⋯」
おはようと言おうかどうしようか迷って、結局会釈だけ返した。
「練習の成果発揮しないとじゃね?」
(まだそれ言う?)
「⋯おはようございます」
無表情にそう言うと、松谷くんは吹き出した。
⋯え、今吹き出す要素あった?
「てか前から思ってたんだけどさ、何で敬語なの?俺ら同級生じゃん、俺留年とかしてねーよ」
「いや⋯初対面の人には反射的に」
「初対面って⋯もう結構たったくね?」
「そうかもね」
私だって好き好んで敬語を使ってるわけじゃ
ない。そう思って敬語をやめてみたものの。
「あっははは、突然のタメとかマジやめて、しかも真顔で言わないで!」
⋯よく分かんないけど何というか、笑いのツボの浅い人だなぁ⋯
「とりあえず早くホール行きませんか」
「え、敬語やめるんじゃないの?てか西澤ってめっちゃ真面目だね、挨拶の練習するだけのことあるわ」
(本当嫌みばっかり⋯!)
「ありがとうございます」
腹が立ったが言い返すのもおかしいので、とりあえずそう言うことにする。
すると松谷くんは何がおかしいのか、また笑いだした。
(⋯変なひと)
*
「ねぇ、西山さんって蒼くんと仲良いの?」
そう私に話しかけてきたのはクラスでも目立つ派手なグループの山本さんで、しかも内容が内容なので、私は二重にびっくりした。
「まさか全然そんなわけないです、委員が一緒なだけで⋯それと西澤です」
「そ?今日一緒に登校してなかったっけ?」
一緒に登校?
少し考えて、はっとする。昇降口で話しているところを見られていたのかもしれない。
「いやいや、あれは朝委員会があったので、たまたま」
仲良くもないのに勝手な想像をされ、非難されるのはお断りだ。それに、
(山本さんは松谷くんのことが好きなんだろうし)
「あー、委員会かぁ!そっかそっか、ありがとう!」
笑顔で去っていく山本さんを見て、私はとりあえずほっと胸を撫で下ろした。
本当に、ああいう人と関わっているとろくなことがない。
なるべく距離を保つようにしよう、と私はひそかに気持ちを固めた。