王様ゲーム3
「藤井が買い物行ってる間もう1回やろーぜ」
というわけで、5番のくじを抜いてもう1回くじを引いた。
「あ、王様私だー」
もしかして王様だったりしないかな、とメモを見る一瞬前にすずちゃんが嬉しそうな声をあげた。
あー⋯私は2番かぁ⋯
「じゃあ命令はねー、3番が2番に壁ドン!」
思わずもう1度メモを見てしまった。2度見たからと言って数字が変わる───なんてことはあるはずもなく。
「3番はー?」
「あー、俺。けど相手次第で降りるわ」
「ちょっと、降りるなんてルールないんですけど!?」
──────3番が松谷くん⋯!?
「2番はー⋯」
すずちゃんと目が合う。向こうも私の表情で私が2番だと察したらしく、意味深な笑みを返してきた。
「えーっと⋯私、です」
「凛かよ⋯あー、ならまぁ…いっか?」
え⋯私ならいいってどういう⋯!?
(そんなこと言われたら、期待したくなっちゃうよ)
いや、でも?友だちだから気を遣わなくていい的なアレかもしれないし?それか相手が男じゃなくてよかったって意味かもだし?松谷くんのことだから、ただ気が向いただけかもしれないし?⋯うん、そう、だよ。
「凛ちゃーん、さあさあ壁へどうぞー」
語尾に♡がつくような喋り方ですずちゃんが私を誘導する。
嬉しいことには嬉しいんだけど、恥ずかしさの方が大きい気がする⋯
「何か、そんな身構えられるとこっちがためらうんですけど」
「みっ、みみみ身構えてないし!」
「つか壁ドンって何が良いのか分からないんだけど。普通に怖くね?」
「松谷、時間稼ぎは良いからやったら?」
そっと見上げた私と松谷くんの視線がぶつかった。うわ、何これ恥ずかしい⋯
───ドン。
松谷くんの顔が15センチくらいまで近づいた。洗剤のような清潔な匂いが、微かに鼻をくすぐる。
「はい任務完了ね」
(心臓止まるかと思った⋯)
初めて松谷くんのことをあんなに間近で見た。改めて見てみるとやっぱりイケメンだなぁと思った。何だか、好きになる前よりもかっこよく見えちゃうのは気のせいなのかな。
「ただいまー⋯って言おうと思ったんだけど何かごめんね、お取り込み中⋯だった?」
いつのまにか後ろにいた藤井さんが恐る恐る私たちに声をかける。
「いや、あの⋯」「ちげーよ」
「「王様ゲームだから」」




