松谷くんからのライン
「ただいまー⋯」
「おかえり」
家に帰ると、海翔がリビングで勉強していた。
「帰ってたんだ」
「まぁ、1ヶ月後テストあるし。凛もそろそろやらないとやばいんじゃない?」
「勉強するのはいいけど、やるなら部屋でやってよ」
ついつい当たってしまいたくなる。海翔に勉強のことは言われたくない。
一応言っておくが、海翔は私の双子の兄である。
みんなからもよく言われるけれど、私たちの外見はあまり似ていない。二卵性双生児だからだと思う。
(まぁ地味系って意味では似てるのかな)
「ねぇ、今日ご飯担当海翔でしょ?」
「⋯」
「あっ!作る気なかったんでしょ!?」
こういう適当な性格は、私とは違うと思う。というかそう思いたい。
「そういえば凛、学級委員なったんだな」
「え、知ってるの?」
だってクラス違うのに。
すると海翔ははぁーっとため息をついた。
「俺も学級委員だからね?」
(!?)
何で海翔も!
「どっちかって言うと凛の方が意外なんだけど。友だちとかいなさそうじゃん」
⋯よくもまあこの人は真顔で堂々と地雷を踏むよなぁ⋯
「いなくはないから」
「あ、それとご飯よろしく」
しれっと言いやがって!
いいもん、どうせ海翔のご飯なんておいしくないし!
取りかかろうと腕をまくっていると、
「ケータイ鳴ってるよ」
(えっ)
誰とも連絡先なんて交換してないと思うんだけど⋯
ケータイを見ると、「Sou」という人からラインが来ていた。
「⋯これって」
松谷くんに違いない。でもどうして?
【先生から伝言】
【明日の朝一階ホール集合】
ブロックしようか、と一瞬考えたけど、そんなことをしたら明日から合わす顔がない。
【分かりました】
何で私のライン知ってるんだろう、と気にはなったけど、会話を続ける理由もないので、放っておく。
【聞かないんだ?何で追加できたのか】
【何でですか?】
【今、海翔家にいんの?】
海翔?何で⋯?
ちらっと海翔の方を見ると、意味深な笑顔をしながらこっちを見ていた。
もしかして、海翔が教えたの!?
『余計なことしてくれてありがとう』
目で訴えかけると、海翔はごめんごめん、と全く悪びれずに謝ってきた。
(ていうか用事なら海翔に伝言すればいいのに)
【海翔に聞いたんですね?】
【せいかーい】
【言っとくけど西澤とラインしたかったわけじゃねーからな?連絡用でさ】
そんなことわざわざいう必要ある!?
【朝一階ホールでしたよね。分かりました】
私は無理に話を打ち切ると、スマホの電源をおとした。