王様ゲーム
「くじはメモ帳でいいかなぁ?みんな、ルール分かる?」
「え、えーと」
え、やるの?本当にやるの?
「あ、キスとかそういう無茶な命令はなしにするからその辺は大丈夫だよ~」
(何も大丈夫じゃないんだけど⋯!?)
「あー、えっと私は⋯」
遠慮しとくよ、と言いかけたのに気づいたのか、すずちゃんと絵梨香ちゃんが私に小声で呼びかける。
「凛ちゃん凛ちゃん」
「チャンスだから絶対した方がいいって!」
「⋯はい⋯?」
「だってあわよくばほらっ、あの人と手とか繋げるかもじゃん!!」
松谷くんと、手を繋ぐ⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
(うわぁっっっっっっっっっ!!!!)
ダメだダメだ想像するだけでもう精一杯⋯やけどしそうなくらい顔があつい。もしも仮にそんなことになったら、顔から本当に火が出ちゃいそう。
何とか顔を冷ましてぱっと顔をあげると海翔と目があった。
(⋯あ、いたんだった)
シンプルに存在を忘れてたけど、考えてみればこれ、海翔も参加するの?え、え、
──────きょうだいでとか、気まずすぎるよそれは⋯
「いいー?引くよぉ~」
とりあえず、なるようになれという気持ちで私はくじを引いた。
「あ、私王様だ」
最初の王様は絵梨香ちゃんらしい。何となく安心して、私はほっと胸を撫で下ろす。絵梨香ちゃんならきっと変な命令はしないだろう、と思って。
その考えがいかに甘かったかということを10秒後に私は思い知らされることになる。
「はい、命令は何にしますか!」
「じゃあ、1番が5番の好きなところを耳元でささやく、で」
──────何その微妙に気持ち悪い命令!?
と、思ったのは私だけじゃないらしかった。みんなが「え、1番自分じゃないよね」みたいな顔をしてメモを見始めた。
(私は⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?)
思わず2度見する。そこには女の子らしい細くて小さい字で、「1」と書いてあった。
「1番誰ー?」
「⋯⋯⋯はい」
絵梨香ちゃんはチラッとこっちを向くと、くすっと笑った。えぇ⋯
「5番は?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「誰?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯俺」
(海翔⋯⋯!?)
みんなは一瞬無言で顔を見合わせると、1拍遅れて笑いだした。
「きょうだいで好きなところとか⋯っや、ヤバくね!?」
「ごめ、ごめん凛⋯まあ、しょうがないね?」
(え、やるの?嘘でしょ!?松谷くんにするより恥ずかしいんだけど⋯!?)




