勉強会にいたるまで
「松谷も誘ったらいいじゃん」
「えぇっ不自然じゃない?しかも松谷くん勉強得意らしいし1人でいいとか言いそうじゃない?」
そりゃ、一緒に勉強会したくないって言えば嘘になるけど⋯
「だったら尚更いいじゃん、あ、そうだ。すずー!こっちきてー」
「はーい、なになに~?」
絵梨香ちゃんが「凛の家で勉強会するんだけど一緒にどう?」と聞くと、すずちゃんは即答で「行く!」と言った。
「勉強会、いいねー!私数学苦手なんだよね!教えてね凛ちゃん先生!」
すずちゃんが嬉しそうにそう言ってくれる。嬉しそうにしてくれるのは私まで嬉しいし、教えるのは結構楽しい。一石二鳥ってやつ。
「凛たち、勉強会すんの?」
いつの間にか松谷くんが後ろにいた。
「じゃあ俺も参加で」
「え⋯!う、うん分かった!」
どうしよう、誘う前からOKされちゃった!
絵梨香ちゃんの方を見ると、絵梨香ちゃんはニコッと笑ってすずちゃんを指差し、「役に立つでしょ」と言った。
「あはっ、ありがとう、2人とも」
すずちゃんはわけが分からないという顔をしていたけど、その顔がまた面白くて笑ってしまった。
これで誘いたい人はみんな誘えた───と安心したのもつかの間。
「凛ちゃんの家で勉強会するの?いいなーっ!ね、私も混ぜて!」
藤井さんがそう言ってきた。あまりびっくりした顔をするのは失礼だとは思うものの、驚きのあまり言葉が出てこない。
(え⋯何で!?)
すずちゃん絵梨香ちゃんとも特に仲良い様子もないし、私だってまともに喋ったことないのに⋯
そこまで考え、私はあ、と気づいた。
(もしかして、松谷くんのこと)
2人が並ぶ姿を想像してみると、お似合いすぎて、悲しくなった。
かっこいい松谷くんとかわいい藤井さん。
誰がどう見てもお似合いの美男美女カップルで、私なんかじゃ張り合うことすらできない。
「⋯うん、分かった」
絵梨香ちゃんは苦笑いしていたが、仕方ない。クラスでも目立つグループにいる藤井さんのお願いを断れるような意思の強さも権力も、私は持ち合わせていないのだから。
「凛ちゃんの家、家族とか大丈夫なの?」
「お母さんと海翔はいると思うけど⋯2人ともそういうの気にしないし、それぞれのことしてると思うよ」
「あ、凛って兄弟いるんだね。何歳?」
「えーっと、双子なんだけど⋯この高校にいるよ?」
「「えぇ~!」」
すずちゃんと絵梨香ちゃんがハモる。まぁそれは驚くよね、そんなに似てないし、私も海翔も目立つ方じゃないし。
「私知ってるよ、1ーAにいるよね!」
そして何で藤井さんは知ってるの!?
恐るべし人脈⋯。
「あ、知ってる?そっか⋯」
「うん、すごいよね2人そろって頭いいなんてさ~!あ、蒼も合わせたら学年トップがそろっちゃうね!」
───下の名前で呼んでるんだ。
不意に胸をつかれた。
そうだよね、藤井さんは男子からも人気あるし⋯全然おかしくない⋯のに。
「?凛ちゃん?」
私はモヤっとした気持ちに見てみぬフリをして、「そんな⋯あ、ありがとう」と笑顔を作った。
「海翔くんも、よければ誘っといてよ」
最後に藤井さんは完璧な笑顔でそう告げた。
「え⋯!?」
(ちなみに海翔はメンバーを告げると意外にもあっさり「暇だしいいよ」と了承してくれた(私としては断ってくれてよかったんだけど)。)




