勉強会の約束
「凛、朝は本当すずがごめんね?」
絵梨香ちゃんがホームルーム前、(なぜか)私に謝ってきた。
絵梨香ちゃんとは席が前後なので、小さい声でも話ができる。
「えっ、何が?」
⋯とは言いつつ、絵梨香ちゃんが言いたいことは何となく分かる。
「いや、2人いい感じだったから声かけない方がいいと思ったんだけどさ⋯」
「ううん、全然!普通にテストの話してただけだし⋯」
私の言葉に、絵梨香ちゃんはなぜかショックを受けたような顔をして固まった。
「?」
「テスト⋯!忘れてた⋯」
(えぇ!)
しっかりしてそうなのに、何か意外。でもちょっと新鮮で、親近感はあるかも。
「どうしよう、化学苦手だから復習しようと思ってたのに⋯」
「⋯あの⋯よ、よかったら私の家で一緒に勉強とか⋯しない?」
(不自然になったかも⋯!)
普段人を誘うこともなく、自分の意見も言えない私にしては頑張ったと思いたい。
みんなからしたら大したことじゃないけど⋯もし断られたらどうしようとか、もし断りづらくて無理にOKしてくれたらどうしようとか、考え出したらキリがないくらい考えてしまうところが私にはある。
「え、マジ!?やったー!教えてほしいとこあったんだよね!」
絵梨香ちゃんの反応に、私はほっと息を撫で下ろした。
家に人を呼ぶなんて、いつぶりかな。楽しみだな⋯
「あ!⋯⋯⋯ね、凛」
「ん?」
「いいこと考えちゃった、あのさ─────」
*
(それがどうしてこうなったの⋯!?)
私はリビングにクラスメートが座っているというシュールな光景を見ながら、とりあえず頭を整理する。
すずちゃん、絵梨香ちゃん、まではいいとして⋯
「あ、凛これ。お菓子くらいあった方がいいかなーと思ってさ」
「私もあるよ~!あ、よかった被ってないね!私もそれと迷ったんだぁ」
「とりあえずジュースでも出しなよ、ほらあのこないだ爆買いしてたやつ」
何で松谷くんと藤井さん、よりによって海翔も⋯!
理由は、昨日の朝に遡る──────