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上書き

(笑顔、笑顔⋯!)



 私は絵梨香ちゃんのアドバイス通り、松谷くんに自分から挨拶しようとしているところである。


『とりあえずさ、自分から笑顔で挨拶とかしたら!凛、顔ひきつってること多いしさ』


 それにしても、私ってそんな顔ひきつってるかなぁ。緊張してるのはあるけど⋯自分ではよく分かんない。


 松谷くんの背中を見ながら、私は意を決して声をかけた。


「⋯松谷くん、おはようっ」


「あ、おはよう⋯」



(ひきつったかも~~~!)


 私的には頑張って笑顔を作ったりつもりだったんだけど、松谷くんの微妙な反応を見るに、きっと変だったんだろな⋯


「そ、そういえばもうすぐテストだね」


「何か凛、かたくね?」


「そんなこと⋯ない、よ?」


「まぁいいや、つかもうすぐテストって前からずっと言ってね?」


「⋯そうかなー」


 まぁ1ヶ月前から意識はしているのだけれど、さすがにあと一週間まできたら気合いの入れようも違ってくる。


「凛、勉強好きだったよな」


「え、好きじゃないよ!?」


 松谷くんが目を丸くする。


 えぇっ何その反応!?私本気で勉強好きだと思われてたの!?


「へぇ、好きじゃないんだ意外」


「⋯⋯松谷くんは勉強、得意?」


 私の質問に、なぜか松谷くんは吹き出した。⋯いや、本当に笑うツボおかしくない?


「俺、好きかって聞いたのに。質問すりかわってんじゃん⋯!」


「そんな細かいこと言われても⋯じゃあ好きなの?勉強」


「んー、好きだよ」


 『好き』という言葉に、不意に鼓動が跳ねる。全然違うのに、こっちを見て真顔でそんなこと言われるとさすがに心臓が持たない。これでは何だか、告白されてるみたいで⋯



(ん?)



「⋯え、勉強好きなの?」


「まぁ、好きとまでは言わないけど。みんな結構勉強嫌いって言うよな」


「松谷くんって、勉強得意なの?」


「凛⋯ひどくね?俺、入学後テスト二位だったのに」



(え⋯?!)



 入学後テストって、私が三位だったやつじゃん!


「そうだったんだ!?⋯⋯⋯意外」


 つい本音をもらすと、松谷くんは「何だよ」と怒ったみたいに私の肩を軽く押した。



(触れちゃった⋯!)



「意外って⋯マジ失礼だな」


 まだ感覚の残る肩に意識をとられつつ、顔が見られないようにそっとうつむいた。

松谷くんのことだから深い意味はないんだろうけど⋯



(⋯嬉しい、な)



「りーんちゃんっ」


 突然の後ろから肩を叩かれ、振り向くと立っているのはやっぱり2人だった。


「あぁぁぁぁぁ嬉しいけど⋯何で今なのーーーー!?上書きされちゃったじゃんーーー!!」




 ⋯なーんて、もちろん言うわけもなく。




「わ、おはよう!」


 絵梨香ちゃんは何かを察したらしく、困ったような、申し訳なさそうな表情で私を見た。

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