近くにいても知らないこと
「凛ちゃんやるじゃん!一緒に登校なんて!」
「うんうん、すごいと思うよ!後ろから見ててもいい感じだったし」
「ねーっ、もう告白しちゃいなよー」
「そうだよ、松谷人気あるし早い方がいいよ」
「⋯凛ちゃーん、どうかした?」
(私、友だちと一緒にお弁当食べてる⋯!)
中学で、部活での友だちはいたけれど、遊びに行くほど仲の良い子はいなかったから。
(嬉しい⋯)
「あ⋯ごめん何の話だっけ?」
いけないいけない、せっかくの時間なんだからちゃんと聞かなきゃ!
「凛ちゃんと松谷くんがいい感じだねって話」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯うん、聞かなくてよかったかな。
「いや、いい感じなんかじゃないよ」
「でも松谷ああ見えて仲良い女子少ないんだよ。凛は特別って感じだよね」
自惚れかも、と思いつつ消せなかった私の気持ちを言い当てられ、ドキッとした。
「そ⋯そうであってほしいとは思うけど⋯」
でも松谷くんに仲良い特定の女子が少ないって言うのは事実だと思う。
理由はよく分からない⋯そもそも、理由があるのかさえ分からない。
絶対聞かないけど仮に聞いたとして、「んー何となく?」と返されるのが目に見えている。
「松谷くんって中学どこなの?」
「あっ何か前、噂で聞いたことあるよ!県外から来てるとか」
県外!?
白浜高校はこの辺では割と有名な進学校ではあるものの、わざわざ県外からくるほどではないと思うんだけど⋯
(何か理由とかあったのかな)
「そうなんだ⋯」
(近くにいても、意外と知らないことってあるんだな)
「ま、すずの情報なんてアテにならないけどねー、どうせ橋本の受け売りじゃん」
「ひどっ!エリの方が友だち少ないくせに!」
「深く狭くタイプなんですー」
息ぴったりな2人の会話に、つい吹き出してしまいそうになる。
(何か、2人ってコントしてるみたい⋯)
「あーっ、凛ちゃん今笑ったな~?!」
声に出さないようにしたつもりが、どうやら出てたらしい。
「いや、コントみたいだなって思って」
「あははっそれ言われたことある!」
「ね、そんなことよりさ!」
「「?」」
絵梨香ちゃんの言葉に私は首をかしげた。
絵梨香ちゃんはニヤニヤと笑ってて─────
───これ、嫌な予感しかしない⋯!
「松谷のことどうやって振り向かす~?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯はい?
「振り向かす⋯べき?」
「「えぇぇぇ!?」」
私の言葉に、今度は2人が驚いた表情をした。
何か、これデジャヴ感。