好きだからこその気持ち
「凛ちゃーん!おはようっ」
「凛、おはよー」
笑顔で私に話しかけてくれる2人の姿に、胸がふわっと暖かくなる。
こうやって、当たり前のように挨拶し合えるような友だちを、私がどんなに欲しかったことか⋯。
「⋯おはよう!」
「あ、凛あの2人と仲良くなったんだ?へぇ、やるじゃん?」
「⋯だから誰目線なの、それ」
「さぁ?」
相変わらず上から目線で腹立つ。でも、それでも嬉しいとか思っちゃうなんて、私、変なのかもしれない。
「そういえば凛は何部入んの?」
「あ、部活⋯!」
(考えてなかった)
「えーどうしよう⋯ま⋯マツタに、くんは?」
「ちょ、そこ噛むとこ⋯!?wあ俺はバスケ入るよ、中学からやってるし」
(どうしよう⋯名前呼ぶのすら意識しちゃうんだけど⋯!)
「バスケか⋯似合うかもね」
松谷くんは身長が結構高い(たぶん180ちょっとないくらい)し、ちょっと焼けた肌も相まって、運動が得意そうに見える。⋯というか実際、得意なんだろうし。
「かもってなんだよ、似合うねでよくね?あ、凛は?何部だったの」
「卓球だよ」
「あー、似合うかもね」
「⋯言っとくけど、卓球意外と難しいんだよ?温泉卓球じゃないんだからね?」
運動部の中の文化部、だなんて不名誉な名前がついてたりするのは心外だ。まぁ外の部活に比べたら体力はいらないかもしれないけど⋯
「いや別にそういうつもりで言ったんじゃねーよ?⋯昔同じこと言ってるやついたし。試合見たりもしたからさ⋯知ってる、うん」
そのとき松谷くんが、一瞬目に見えない何かに対して切なげな表情を向けたのを、私は微かだけど確かに感じ取った。
(⋯⋯⋯女の子、なのかな)
けれどただの友だちの私がそれを聞くのは場違いなような気がして、聞くことはできなかった。
(元カノとかだったりするのかな)
松谷くんはモテるのに、あんまり女子と仲良くない。特別嫌いとか、避けてる風はないけれど、目に見えない「境界線」を引いている気がした。
過去を詮索するようなことをして雰囲気を壊すのも違うかな、と思って、私は「分かるんならいいけど」とだけ返した。