恋バナ
「えっ!な⋯何で」
───分かるの?とはさすがに続けられずに、私は2人の顔を見つめ返す。
「え、だって凛が仲良い男子って松谷だけじゃん」
「そーそー、逆に松谷くんじゃなかったら誰?って思うよ!」
(えぇ⋯!?)
私、そんな分かりやすいのかな。⋯このままじゃ、松谷くんにもバレるかもしれない。
「⋯松谷くんも、気づいちゃったりするかな」
「それはどうかなー、凛ちゃんあんま顔に出ないし、松谷のことだから分かんないんじゃん?」
「そっか、ならいいんだけど」
本心から言ったつもりだったけれど、絵梨香ちゃんは疑い深い目で私を見た。
「え、いいの?半分バレたくらいでちょうどいいと思うけど」
⋯半分もバレたら、ほぼバレてるも同然じゃん!バレたら友だちでいられなくなるのに、そんなの絶対嫌だよ!
「そういうもんなの⋯?」
私には、まだよく分からない。付き合うとか恋愛とか、そういうことは。
⋯けど。
友だちとしての『好き』ではない気持ちが、確かにあって。
───もしかしたら、これは恋の前兆的なものなのかもしれない、と私は思った。
*
「!」
駅に松谷くんとばったり会ってしまった。
私と松谷くんは違う方面だけど、電車の時間が近いのかもしれない。
前に昇降口で鉢合わせたこともあったし。絶対そうだ。
───嬉しい、すごく嬉しいのに。
何となく昨日の今日だから、意識しちゃうっていうかなんと言うか⋯
「凛か、何気に駅で会うの初めてじゃね?」
松谷くんは(もちろん)そんな私の心境を知る由もないのだから、仕方ない、のだけれど。
「え、あ⋯うん、だね」
(あぁ───私コミュ力なさすぎる⋯!!!!)
松谷くんは私の隣にくると、涼しい顔して歩き始めた。何か、何というか⋯!
(悔しい⋯!)
私がこんなに悩んでるんだから、松谷くんもちょっとは私のことで悩んでほしい───なんて自分勝手で理不尽なことを考えてしまうくらいに、そして何よりそうやって振り回されてる自分が、悔しい。
でも松谷くんの隣を自然と歩けるのは嬉しくて、みんなに見せつけたいような、そんな気持ちがした。




