恋の定義
「⋯?」
「や、何でもない!そっか、違いか⋯んーと」
「そんなの本能的に分かるでしょ!」
松浦さん───絵梨香ちゃんが言いかけるのを遮ってすずちゃんがそう言う。
(本能⋯ね)
「分かるんならすずも分かってるはずじゃん」
「ちょっ⋯何のこと!?」
「あ、それで違い、だよね。まぁ本能ってのもあるけど⋯凛は、その、迷ってる人がいるってこと?」
私はためらいつつ、小さく頷いた。
「それ恋で合ってるよ、たぶん」
───え!?
私、松谷くんに対してのコメント何も言ってないのに。どうして?
「だって考えてみて?例えば竹田先生のこと、好き?」
「え⋯別に普通にいい先生だと思うけど」
「じゃあ竹田先生に恋してたりする?」
竹田先生に、恋?それは、
「絶対ない」
「でしょ、そう思うでしょ?気になってもない相手のこと、そんな目で見ることないからね。だからねー、迷ってる時点でもう恋しちゃってるって言っていいと思うな」
───私が、松谷くんに恋してる⋯
「そ⋯そうなのかな。私間違ってないかな」
「間違ってなんかないよ。⋯だって、初恋なんでしょ?」
「でも⋯きっかけとかないよ?」
私がこれまでに読んだ漫画も、見たドラマも、きっかけというか、『恋に落ちる瞬間』があった気がする。
「きっかけなんてなくてもよくない?今の気持ちが嘘じゃないんなら、それだけでいいじゃん」
───そっか。
聞く前から本当はきっと分かってた、これが恋だって。それこそ、本能的に。
でも、認められない自分もいた。認めたくないって心のどこかで思っていた。だって、松谷くんは友だちなのに。それなのに好きだなんて、何か反則みたいで。
「さすが、経験者は語るなぁ」
「ちょ、すず何言ってんの!?」
「もしかして、絵梨香ちゃん、付き合ってる人いるの?」
「んー、いやぁ⋯前にね」
言われてみればそんな感じもする。
小柄でおっとりしてて、女子の私から見ても守ってあげたくなるような感じ。男子なら余計にそう思うだろう。
「そっかぁ、元彼か⋯」
「「ね、ところでさ」」
2人がたくらんでるみたいな明らかにニヤついた顔で私を見た。
え、な、何!?
「凛ちゃんの好きな人って───」
「松谷でしょ?」




