蒼の真意
「竹田先生!」
「⋯うん?」
「あの、昨日はすみませんでした。勝手に帰ってしまって⋯松谷くんに聞きました、先生が手伝ってくれたって」
朝イチで先生のところまで行くと、私は先生にそう言った。こういうのは早い方がいいから。
「あー、クラスの人とカラオケ行ってたんだって?松谷から聞いたぞ」
(松谷くん⋯そんなこと言っちゃったのか!)
いやまぁ、その通りなんだけど⋯さすがに先生の前で会わせる顔はないというか⋯
「たまにはそういう時間も大事だよな、ごめんなー俺が委員に仕事押し付けすぎたせいで⋯」
「えっ⋯怒ってないんですか」
思っていたことがそのまま口に出る。私が先生の立場だったら、きっと怒っているだろうと思って。
松谷くんに続いて先生もこんなんじゃ、拍子抜けどころの話じゃない。むしろ逆に、騙されてるみたいだ。
「⋯⋯昨日松谷に言われたんだよ、仕事やらせすぎるせいで西澤がクラスに馴染めなくなるとかってさ」
(松谷くん⋯そんなこと言ってくれたんだ)
───あれ、ちょっと待って。
先生、昨日って言った⋯よね?でも私が遊んでたって松谷くんが知ったのは今朝のはず⋯
それとも今朝、「遊んでた」ってことを先生に報告してたとか?そんなことするとは思えないけど⋯あ、でもそれはありえないか、だって私朝イチできてるもん。
頭の中に次々とはてなマークが浮かぶ。
「あの、先生⋯松谷くん昨日、私が帰った理由なんて言ってましたか?」
「うん?だから、クラスの人とカラオケ⋯」
「それ、昨日作業してるときに言ってたんですか?」
「うん、俺が手伝いに呼び出されたときだったかなー。理由聞いたらカラオケ行ったって言うからさすがに最初はビビったよな」
───状況を整理するに、
松谷くんは私が遊ぶって言うのをそもそも知っていたっていうこと?
それでもって、それを勧めてくれてたってこと?
でもそんな話してないし、第一決まったのはあの後だと言うのに。
混乱する頭を抱えつつ、私は松谷くんのところまで急いで向かった。
「⋯⋯⋯松谷くん!」
「どしたの、そんな走って」
「松谷くん、知ってたの?私がカラオケ行ったって⋯」
「は?いや、凛が言ってたじゃん」
「⋯⋯っそうじゃなくて!」
松谷くんの本心は分かんないし、私の勘違いかもしれないけど、分かった気がした。
松谷くんの行動の意味が。
「松谷くん、私が遊びに行けるように、仕事抜けさせてくれてたり⋯した?」