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心の葛藤、仲直り

 (今日は、疲れたけど楽しかったな⋯)



 まだ入ったばかりのクラスメートの連絡先をそっと指でなぞる。


 ずっと家族以外には松谷くんの連絡先しかなかった(中学生ではスマホ持ってなかった)から、何だか変な感じだ。



(松谷くん、仕事ちゃんと終わったかな⋯)



 教室で1人作業する松谷くんの姿を想像すると、胸が痛む。⋯自分のせいなのに。



(さすがにひどかったよね⋯)



 今、松谷くんが私に対して何を思ってるのかが怖くて、知りたくなくて、でも知りたくて。


 けど、ラインで「ごめん」なんて言っても軽すぎるし、会って言うべきだと私は思う。


 明日、どんな顔して会えばいいんだろう⋯



         *


「よっ」


 後ろからかかった声に、思わず耳を疑った。


 あれほど緊張しながら、声のかけ方を考えながら待ちわびていた───



「ま⋯松谷くん」


「あ、昨日はごめんなー?ま、俺あの作業残った分ちゃんとやったんだし、お互い様ってことでさぁ」



(そ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯)



 そんな感じでいいの──────!?



 あまりの自然さに度肝を抜かれ、考えてたことが全部吹っ飛んでいく。


「あれ、もしかして謝る練習でもしてた?じゃあどうぞ、本番」


 びっくりしすぎて言葉が出てこない。ていうか、松谷くん怒ってないの⋯!?


「え、えっと⋯ごめんなさい、仕事投げて帰っちゃって」


「うん、まぁそれは否定しねーわ」


「それと⋯⋯⋯⋯あの後、本当は⋯クラスの子とカラオケに行ったの」


 言う必要はないかもしれない。知らなきゃ知らないで松谷くんも嫌な思いをすることはない。けど、隠しておくのは何だか卑怯だ。


「おー、そーなんだ。友だちできた?」



⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯



「⋯え、そこ?!」



 怒られないにしろ、何かしら文句を言われると思っていた私はまたしても拍子抜けした。


「あーあれか、俺に仕事やらせといて遊ぶなんて罪悪感~的な?それなら大丈夫だよ、竹田先生手伝ってくれたしさぁ」


「⋯⋯でも、本当に申し訳ないっていうか」


「申し訳ないって思うんならさ、おごってよ、スタバ。俺金欠なんだよねー」


 軽い口調で言ってるのは私の罪悪感を軽くするためなのかもしれない。


 それに気づくと、途端に色んな感情が溢れてくる。思わず出そうになった涙は、何とか理性でとどめる。


「うん⋯分かった!⋯それとごめんね、ありがとう」


「マジしつこいなー、友だちなんだしそういうのキモいからやめろって」



───私は、松谷くんのこういうとこが好きなんだ。



 いつも和ませてくれて、笑わせてくれて、そしてあったかい気持ちにさせてくれる。そういうところがすごく好きで───、



──────あれ、すき⋯?



 好きって何だっけ⋯?友だちだから好き?それとも尊敬できるから好き?



──────分からない。



(違和感っていうか⋯何か違う気がするのに)



 言葉で表せるような確かなものじゃなかったけど、それでも何となく芽生えた違和感の正体に、このときの私はまだ気づくことができなかった。

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