クラスメートとの交流
感情のままにそう言い、荷物を持って下足箱まで向かう。
さすがにやりすぎたかな、でも言ったのは松谷くんだし。ちょっと八つ当たりだったかな…いや、でも松谷くんも悪かったよね。
自問自答していると、下足箱のところに人がたまってるのが見えた。
クラスの女子たちだ。
「あれっ西澤さんじゃん!どこ行ってたの?」
(渡辺さん)
思いがけず声をかけられたことに動揺しつつも、動揺した頭で一瞬考える。
事実を言うなら、「委員会の仕事をしてたけど松谷くんと言い争って出てきた」だけれど、さすがにそれを言うのもアレだし⋯
「えっと⋯ちょっと先生につかまっちゃって」
色々省いたけど、これも間違ってはない。すこし罪悪感はあったけど…気にしないでおくことにする。
「そっかー!⋯⋯⋯⋯あっ」
「?」
「ちょうどよかったじゃん!西澤さんこれから暇?今クラスの女子でカラオケ行こってなってるんだけど」
(カラオケ⋯!みんなで⋯!)
でも、委員の仕事を投げてきてる手前、頷くのに躊躇してしまう。
(行きたい、すごく行きたい⋯けど)
『まぁ確かに凛と仲良くなりたいって思う人はあんまいなさそーだよね』
『分かっちゃう?昨日さぁ、向井たちとカラオケ行って歌いすぎたんだよなー』
『つか、1人でやった方が早いし絶対。凛はもう帰れよ』
松谷くんの言葉が脳裏によみがえる。
───行っちゃえ。
私の中の悪魔がそうささやいた。
普段の私ならそんな不誠実なことはしないはずだけど、今日くらいいいよね。
だってどうせ松谷くん私のこと必要としてないんだし、追い出したのは松谷くんだもん。それに私は今機嫌悪いんだし。
「⋯行きたい!」
「ほんとー?ね、西澤さんも来るってー!」
渡辺さんの明るい声に、ちょっと気持ちが晴れる。高校生になって初めてのカラオケ、初めての寄り道なんだし、楽しまなきゃだよね!
昇降口を出る前にそっと教室の方を向いた。
明日から気まずくなるかもしれない、とか、仲直りできなかったらどうしよう、なんてそんなことを考える心の余裕ができる。
これまで友だちと喧嘩なんてしたことなかったのに───許し方も、仲直りの仕方も何も知らない私は、ただ途方にくれるしかなかった。